後半ATに絶体絶命の大ピンチ…味方DFも「これはヤバいな」 立ちはだかった長崎の守護神・後藤雅明「最後はGKとしての本能」

 最終節まで大混戦状態が続いた2025年のJ2リーグ。第37節 水戸ホーリーホックとの頂上決戦を制したV・ファーレン長崎は、引き分け以上で8年ぶりのJ1昇格を手にできる好条件の中、最終節はアウェイでの徳島ヴォルティス戦に挑んだ。

 4000〜5000人とも言われる大サポーターの熱狂的な声援を受け、大一番に向かった長崎だったが「負けなければOK」という意識が強くなりすぎたのか、徳島の圧を受けて非常に守備的な入りを余儀なくされた。そして前半41分には絶好調の渡大生の一撃を喰らい、1点のビハインドを背負った状態で折り返した。

 その時点では3位のジェフユナイテッド千葉がリード。2位水戸が大分トリニータにスコアレスで、長崎は辛くも2位を死守していたが、一足早く後半に入った水戸がいきなり先制。長崎が後半をスタートさせた時点では、一時的に3位に転落した状態だった。

 選手たちはその情報を知らなかったそうだが、負ければJ1自動昇格を逃すことは自覚していたはず。高木琢也監督もギアを上げるべく、後半頭から2枚替え。さらに中村慶太、笠柳翼を投入する。その笠柳が後半23分に左サイドをドリブルで切り裂く大仕事をし、右から飛び込んだ翁長聖が同点弾をゲット。最悪のシナリオは逃れたかと思われた。

 しかし、試合はタイムアップの笛が鳴るまで何が起きるか分からない。それを痛感させたのが、後半アディショナルタイム7分の徳島の決定機だ。左からローレンス・デイビッドがドリブルで持ち上がり、折り返したところでフリーになっていたのがトニー・アンデルソン。そこに立ちはだかったのが、長崎の守護神・後藤雅明だった。決められたら終わりの場面で、191センチのGKは強烈シュートを顔面でブロック。絶体絶命のピンチを救ったのだ。

「中に相手が2人いるのは見えていました。最後はGKとしての本能というか、そういうところは出せたかなと思います」と本人は涼しい顔。最終ラインを統率する新井一耀は「クロスを上げられて振り返った時に『もうこれはヤバいな』と思った」と動揺したことを打ち明け「ごっちゃんがすごいスピードで詰めていたので、さすがだと思いました」と心から感謝していた。後藤の鋭い反応と強心臓ぶりにチーム全員が同じリスペクトの念を抱いたことだろう。

「最後の最後でみんな疲れがあっただろうし、みんなの頑張りがあって防げたのだと思います。1対1の局面で相手に優位にさせないところは、常に求められていと思います。僕は今年長崎に来ましたけど、一つの目標であったJ1昇格を実現できたのは本当に嬉しい。個人的にも(モンテディオ山形で)3年連続でプレーオフで敗退して、長崎でJ1に上がることだけを求めてやってきたので、そこを達成できて嬉しいです」と後藤は安堵感を吐露。国内最高峰リーグへの切符を手にした喜びを静かに噛みしめていた。

 紆余曲折のキャリアに少し触れたい。2017年にスタートしたプロサッカー人生は回り道の連続だった。最初のクラブは当時J2だった湘南ベルマーレ。当時は秋元陽太の控えに甘んじ、2019年に期限付き移籍で当時J2のツエーゲン金沢へ。そこでも白井裕人というベテランがいて、定位置獲得は叶わなかった。翌2020年は湘南に復帰したが、今度は谷晃生が期限付き移籍で加入し、またも出番を得ることはできなかった。

 そして2021年には古巣・金沢へ完全移籍。退路を断って新たなチャレンジに踏み切ったことで新たな道が開け、ようやくコンスタントに試合に出られるようになる。続く2022年は山形へ赴き、3シーズンフル稼働した。しかしながら、後藤自身が語った通り、3年連続J1昇格プレーオフで敗退。「J1に上がりたいと思うなら、絶対に自動昇格しかない」と実感したはずだ。

「昔は昔というか、自分たちは最終節が始まる前まで首位でしたし、自分たち次第でJ2優勝を掴み取れるゲームだったので、プレーオフのことはあまり気にしてはいなかったです」と冷静さを保ってはいたが、さすがに渡の先制点を決められた時には多少なりとも危機感を抱いたのではないか。そういった苦境をチームメートとともに跳ね除け、最後の最後に大仕事をしたのだから、その貢献度は絶大。2026年はかつて活躍が叶わなかったJ1リーグに再挑戦することになる。長い時を経て、後藤は大舞台で躍動することになるのだ。

「J1ではチームに安定感をもたらしたり、本当にここぞというセーブで試合の流れを変えられるGKになっていかないといけないと思います」という後藤の言葉には重みがある。今季の京都サンガF.C.で異彩を放った太田岳志、セレッソ大阪でキム・ジンヒョンから正守護神の座を奪ったの福井光輝のように、長い下積みを経て最高峰リーグで才能を開花させるGKも少なくない。

 後藤も30代になった今、大輪の花を咲かせられる可能性がある。そのためにも、長崎を強く逞しく勝てる集団へと引き上げていくことが肝要だ。絶対的キャプテン・山口蛍らとともに英知を結集し、最後尾からチームを盛り上げていくことが、百戦錬磨の男に託された使命。2026年は後藤雅明の注目度が一段とアップするシーズンになれば理想的である。

取材・文=元川悦子

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