高市早苗首相の台湾有事に関する国会答弁を受け、中国が日本非難の「宣伝戦」を活発化させる中、日本政府が国際世論に日本の立場を訴える発信に力を入れている。虚実ない交ぜの中国側の説明を放置すれば、日本に不利な国際環境を醸成されかねないとの危機感からだ。
「事実に反する中国側の主張は受け入れられず、しっかり反論・発信していく必要がある」。木原稔官房長官は25日の記者会見でこう語った。
台湾有事は自衛隊による集団的自衛権行使につながり得るとした7日の首相の答弁後、日本政府は事態沈静化を中国に呼び掛けてきた。しかし、中国は聞き入れず、訪日自粛呼び掛けなどの対抗措置を取ると同時に、対日批判を強めている。
中国の傅聡国連大使は18日の国連総会で「日本に安全保障理事会常任理事国入りを求める資格はない」と表明。21日にはグテレス国連事務総長宛てに、高市氏の発言撤回を求める書簡を送った。
SNSや国営メディアを通じた宣伝も強化しており、在日中国大使館は21日、国連憲章の「旧敵国条項」にX(旧ツイッター)で言及。「日本などのファシズム・軍国主義国家」に対し「中国など国連創設国は安保理の許可を要することなく直接軍事行動を取る権利を有する」と主張した。
これに対し、日本政府はその都度反論を展開している。政府関係者は18日の国連総会で、傅氏の発言を「根拠がない」と批判。山崎和之国連大使は24日、「武力攻撃が発生していないにもかかわらず日本が自衛権を行使するかのごとき中国の主張は誤りだ」とした書簡をグテレス氏に送った。
「旧敵国条項」投稿には「あり得ない」(政府関係者)と猛反発しており、外務省は23日、Xで「死文化した規定がいまだ有効であるかのような発信」と中国の対応を厳しく批判した。
中国人に対する犯罪が日本で多発しているとの中国の「悪宣伝」を踏まえ、外務省は中国国籍保持者が被害者となった凶悪犯罪の認知件数もXで公表している。日本政府高官は「中国の発信はひどい」と語り、偽・誤情報に事実で対抗していく考えを強調した。
〔写真説明〕記者会見する木原稔官房長官=25日午後、首相官邸

