不動産業界が分譲マンションの高騰対策に乗り出した。業界団体の不動産協会(東京)は25日、物件引き渡し前の転売禁止や購入戸数の制限を各社に呼び掛けたと発表。一部の大手業者は先取りして取り組みを始めた。東京都心の新築物件は平均価格が1億円を大きく上回り、外国人を含めた投資目的の短期売買が価格をつり上げていると指摘されていた。
同協会は、転売活動の禁止条項を売買契約書や重要事項説明書などに新設するよう要請。戸数制限のほか、購入目的の確認や申し込んだ名義での契約・登記を徹底することも求めた。一般公募する物件が対象で、応じるかどうかは各社が判断する。
既に三菱地所や住友不動産など8社は短期売買対策の導入を決めた。このうち、三井不動産レジデンシャル(同)は11月発売の「セントラルガーデン月島 ザ タワー」(東京都中央区)で引き渡し前の転売活動を禁止。発覚した場合は、一般的に価格の1割程度とされる手付金を没収し、売買契約を原則解除する。
マンション高騰により、中間所得層を中心に都市部で住まいを確保するのが難しくなっている。東京都千代田区は7月、引き渡しから5年間の転売を禁止するよう不動産協会に要請。これに対し、同協会は引き渡し後の転売対策について「事業者にできることには限界がある」と否定的な考えを示した。
不動産市場に詳しいSOMPOインスティチュート・プラスの宮本万理子主任研究員は業界の対応について「特定の物件に限られ、網羅性がなく、対症療法にならざるを得ない」と指摘。その上で、「国が公共政策として住宅問題に取り組む必要がある」と訴えた。
〔写真説明〕東京都中央区の勝ちどき地区や晴海地区に建つ高層ビルとタワーマンション群=8月20日、東京都港区から撮影

