2025年の日本代表ラストマッチとなったボリビア代表戦。采配100試合目となった森保一監督は14日のガーナ代表戦とは異なるシャドーの組み合わせで行くのではないかという見方もあったが、蓋を開けてみると、南野拓実・久保建英コンビが継続となった。指揮官としては主軸2人を中心に攻撃のクオリティを突き詰めたいと思っていたのだろう。
森保監督の思惑を早速体現したのが、開始4分のシーンだ。右ウイングバックに入った菅原由勢が相手に激しく寄せ、遠藤航がボールを奪取。そこから右サイドの久保にパスが通り、大外から一気にドリブルで持ち込んで、しっかり中を見ながらクロスを上げた。次の瞬間、ボランチの位置から鎌田大地が飛び込んできた。鎌田は巧みな胸トラップから左足を一閃。幸先の良い先制点が生まれたのである。
「珍しく余裕があったので、スピードを上げすぎずに。鎌田選手が入ってきたのが見えたので、ボールが思ったよりデカくはなったんですけど、あんまり速いボールだとダイレクトは無理だと思った。トラップが締まるようなボールを蹴る形になりました。彼が素晴らしかったですね」と久保は仲の良い鎌田を絶賛した。
これでガーナ戦の堂安律の2点目に続く2戦連続アシストとなったが、本人にしてみれば「ごく当たり前の仕事」という感覚だったのではないか。今の久保は肩に力が入っておらず、自然体でやっている印象が強い。それを感じさせたのが、後半22分にベンチに下がった後。1−0の状態で久保は外から戦況を見守ることになったのだが、町野修斗と中村敬斗の新たなシャドーコンビの一挙手一投足を興味深く注視。2人によって生まれた2点目、そしてU-15日本代表時代からの盟友・中村が個人技でもぎ取った3点目を心から称賛したのだ。
「2点目(の町野の動き)なんかはポジションに囚われず、ストライカーの動きでしたし、ああいった押し込んだところはすごく勉強になる。中村選手のクロスも素晴らしかったですけど、シャドーでもあそこまで入っていかなきゃいけないんだというのは勉強になりました」と本人も前向きに語っていた。第1次森保ジャパンの頃だったら「自分が点を取りたかったのに……」という悔しさが先に立っていただろう。堂安も「自分のパフォーマンスがどうであれ、W杯で勝ちたいという思いはあります。それが自分の理想としている姿じゃなくても、泥臭くてチームに貢献したいというのは全選手が思っていること」と語気を強めていたが、久保もそういうマインドに変化したことが色濃く窺えるのだ。
2026年北中米W杯切符獲得が決まった直後のアジア最終予選・サウジアラビア戦以来の先発となった菅原由勢を生かそうとしていたのも、久保の成長の証ではないか。ご存じの通り、菅原は第2次森保ジャパン発足後は不動の右サイドバックだったが、3バック移行後は序列が低下。今回は生き残りをかけた一戦だった。久保自身もU-15代表時代の親友と一緒にW杯に行きたいという思いは非常に強いはず。だからこそ、イエローカードをもらって前半だけで交代を余儀なくされた仲間のことを慮ったことだろう。
「菅原選手は良かったと思いますよ。イエローがなかったらもっとやっていた。しっかりいい仕事をしたと思います。僕は一番得点につながりやすい選手にプレー選択をしますけど、2人が同じ位置にいたら、菅原選手に出しますね」とも発言。仲間を後押ししつつ、みんなで成長しながら、強い日本代表を作りたいという強い意欲をにじませたのだ。
その姿はまさに“若きリーダー”そのもの。そう指摘されて「まあ、そう思ってもらえているのなら有難いですね」と本人はテレ臭そうに話したが、カタールW杯で一番年下だった頃の久保とは明らかに周りに対する目線が違っている。今回の11月シリーズは19歳の佐藤龍之介、20歳の後藤啓介、21歳の北野颯太といった若手も入ってきており、より自覚が強まったのかもしれない。
それは森保監督も嬉しく感じている部分だろう。指揮官は選手たちに「個人のギラギラ」と「チームのために」の両方を持ち合わせるように仕向けているが、そのバランスが崩れることは許さない。久保もこの約7年間にはどうしてもエゴが前面に出てしまう時期もあった。その都度、指揮官やコーチングスタッフと対話を重ね、代表での実績を積み上げ、ここまで来たわけだが、W杯イヤーの久保はもっともっとリーダーシップを発揮できる人間になっているはず。それが日本の大躍進の重要ポイントと言っても過言ではないだろう。
「ここからはカップ戦とリーグ戦が被る時以外は週1で試合があるので、コンディションに気を付けて、数字とか内容を求めていきたいですね。移籍? 冬はないですね。いらないリスクがあるんじゃないですか、さすがに」とも語り、レアル・ソシエダで腰を据えて大舞台でベストパフォーマンスを出せる状態を作り上げていく構えだ。カタールW杯では得点に関与できず、決勝トーナメント1回戦のクロアチア戦は発熱で欠場した。そのリベンジを果たすべく、7カ月を大事にしていくべき。心身両面で円熟味を増した久保建英の一挙手一投足が楽しみだ。
取材・文=元川悦子
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