燃料税の暫定税率廃止が決まりガソリン価格も下がりつつありますが、自動車関連の税金にはまだ多くの矛盾があります。JAFなどが訴える、クルマがもう1台買えてしまうほどの重い税負担と、その問題点について解説します。
13年で190万円! クルマがもう1台買えるほどの税負担
2025年11月14日の朝、東京都港区のJR田町駅前では、『クルマの税金 抜本的に見直すべき!』と書かれたのぼり旗を持った約45人の関係者が、通勤を急ぐ歩行者に自動車関係諸税の解説ビラを手渡していました。この活動は、自動車ユーザーの団体である「JAF(日本自動車連盟)」と、日本自動車工業会など製造・販売・輸送関連の21団体が参加する「自動車税制改革フォーラム」が主催したものです。
自動車税制の抜本的な見直しは、2026年度に予定されています。その税制改正案が決まる2025年末を控え、自動車税制の課題解決を訴える活動が47都道府県で始まっているのです。
JAFと自動車税制改正フォーラムの試算によると、ユーザーが負担する税金は13年間で190万円にものぼります。この13年というのは日本の平均的な乗用車保有年数で、308万円の新車を購入した場合の試算です。つまり、新たにクルマがもう1台買えてしまうほどの税金を支払っていることになります。
この負担額は、関連諸税の低いアメリカと比較すると約23.4倍、自動車税の割合が高いイギリスと比較しても1.4倍にもなります。
JAFの調査では、ほぼすべての回答者(98.8%)が自動車に係る税金を負担に感じているという結果も出ています。
ガソリンだけじゃない「暫定税率」と「二重課税」という矛盾
自動車関連諸税の見直しが必要な理由は、ほかにもあります。ガソリン税などの燃料課税にかかる暫定税率は、2025年末までに廃止されることが決まっていますが、自動車重量税などの暫定税率(=当分の間税率)は、いまだ何も決まっていません。
自動車重量税の暫定税率は1974年度から2010年度まで約40年間続きました。導入時には、必要がなくなった時点で税率を廃止する見直し規定が設置されていましたが、当時の民主党政権下で「当分の間税率」と名称が変更されました。さらに、見直し規程は廃止され、税金の使い道を何にでも使える一般財源化して、行政の運営に組み込まれています。
当初は道路インフラの整備などに限られた目的のために、その恩恵を受ける自動車ユーザーが税金を負担すべきとされてきました。しかし、公債の借換え(借金の返済)や職員の人件費といった一般財源を自動車ユーザーが負担することは、すでに課税の根拠を失っている、という見方が強くなっています。
それでも見直しが進まないのは、9種類で9兆円におよぶ複雑な自動車税制が、日本の税収の約10%を支えているからです。巨額過ぎて、簡単に代替財源が探せない。そんな中で暫定的な税率が続けられてきました。
なんなんだよ“税込み込み価格”って!?
税金に消費税がかかる「二重課税」問題も解決策が提示されていません。例えば、1リットル160円のガソリンがあった場合、その価格の中には燃料税が加算されています。ところが、利用者が支払う時には、この税込みガソリン価格に、さらに消費税が課税されます。一般的な“税込み価格”は消費税を含んだ額を指しますが、自動車税制では“税込み込み価格”とでも呼ぶべき状態になっているのです。
自動車税制の改正議論では、こうした矛盾の解決を図ることが先送りにされ、代替財源を探す話になり、50年間も先送りにされてきました。JAFの野津真生専務理事は、こうした状況を今こそ変えるべきだと訴えます。
「自動車税制は大きな課題がいくつも残されています。(仕組みが)ややこしいので、シンプルにすることがまず重要です」
また、利用者の重い負担は、可処分所得の低い若年層を中心に、移動の手段を自力で持つことができないという深刻な問題を引き起こしています。
「いろいろな課題がありますが、環境性能割のような需要の喚起策になるところを進めていただきたい」(野津専務理事)
自動車関連税制は、2025年に抜本的な見直しで結論を得ることを自民党と公明党の与党が合意しています。公明党が連立を離脱した2025年、新たな税制改正プロセスは自動車ユーザーの不満を解消する方向に動くのでしょうか。年末に向けて、注目が高まります。
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