<マオタイ シンガポールオープン 2日目◇7日◇ザ・シンガポールアイランドCC(シンガポール)◇7295ヤード・パー72>
アジアンツアーの最終予選会を突破し、今シーズンを戦う村上拓海。日本とアジア、両ツアーを経験する一人として、アジアンツアーの魅力、そして難しさを語ってくれた。
26歳の村上は、千葉学芸高3年の2017年に「全国高校選手権」で優勝。翌年に日大へ進学するも2年で中退し、21年9月のプロテストではトップ合格を果たした。
22年は日本のレギュラーツアーに10試合出場し、「ミズノオープン」で自己最高の10位を記録。24年はレギュラーツアー13試合に参戦し、さらに下部ツアーでは出場10試合すべてで予選を通過している。
その傍ら昨年12月、アジアンツアーの最終予選会をトップで通過。念願の海外ツアー挑戦が始まった。もともと米国男子ツアーやDPワールド(欧州)ツアーの動画を好んで観ていたという村上にとって、海外でプレーしたい気持ちが芽生えるのも自然な流れだった。「日本人選手が多く挑戦している」という点も、アジアンツアー挑戦の背中を押した要因のひとつだった。
過去にもアジアンツアーのQTを受けたが、当時は突破ならず。その後はコロナ禍もあり国内に専念していたが、「26歳になったので、もう一度海外に挑戦したい」と再び門を叩き、出場権を得ることができた。
今シーズンはここまで12試合に出場し、世界各地を転戦。拠点は日本に置きながらも、遠征に備えて成田空港近くに引っ越した。「選手がすごくフレンドリーで居心地もいい。モロッコなど旅行では行けない国に行けるのも楽しい」と話すように、各地での経験が刺激になっている。
日本とアジア、両方を知る村上が感じるアジアンツアーの難しさは、「日本ツアーでは考えられないピンポジションに切ってくる」という点だ。「ショットの精度がより求められる」と言う。
日本ツアーではグリーンを速く、ラフを長くする傾向があるが、アジアンツアーではラフが長くはないものの、初日から難しい位置にピンを切ることが多い。そうしたコースセッティングが、両ツアーの大きな違いだと捉えている。
また、今大会はインターナショナルシリーズの一戦で、賞金総額は200万ドル(約3億740万円)。優勝者には36万ドル(約5500万円)が与えられる。こうした高額大会が組み込まれているのも同ツアーの特徴だ。
さらに、インターナショナルシリーズのポイントランキング上位2名(有資格者を除く)には翌年のLIVゴルフ出場権が付与される。アジアンツアーが“世界への登竜門”として注目されるゆえんである。
村上もそのチャンスに強く惹かれている。「LIVに繋がるステージなので、挑戦したい。日本人選手もこれから増えていくと思うし、僕もそのなかで結果を出したい」と意欲を見せる。
ただ、今季は12試合で決勝進出が3試合にとどまるなど、苦戦も続く。「ショットがまとまらない」と試行錯誤を重ねている。
現在ポイントランキングは151位。シード権獲得は厳しい位置に立たされているが「今年もQTに挑戦するつもり」と明言する。来季以降もアジアンツアーを主戦場とする覚悟は揺るがない。
「LIVに行けるなら行きたいし、アジアンツアーで頑張りたい」。日本ツアーのレベルの高さは十分に理解しているが、世界の舞台に立ちたいという思いが村上を突き動かす。26歳は、アジアンツアーでキャリアを築きながら、確実に世界への階段を登ろうとしている。(文・齊藤啓介)
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