【モデルプレス=2025/11/07】映画『トリツカレ男』(11月7日公開)で主人公・ジュゼッペの声を担当したAぇ! groupの佐野晶哉(さの・まさや/23)にモデルプレスがインタビュー。前編では、2度目の声優挑戦に込めた思いや、徹底した役づくりの裏側、そして声優の魅力などについてたっぷりと語ってくれた。【前編】
【写真】佐野晶哉、肉体美披露
◆映画『トリツカレ男』
原作は、作家・いしいしんじ氏の同名小説『トリツカレ男』(2001年刊行/2006年文庫化)。主人公の青年・ジュゼッペ(声:佐野)は「何かに夢中になると他のことが目に入らなくなる」ほど没頭してしまう性格で、街の人々から“トリツカレ男”と呼ばれている。
ある日、ジュゼッペは風船売りの女の子・ペチカ(声:上白石萌歌)に一目惚れ。彼女は心に深い悲しみを抱えており、ジュゼッペはその悲しみを知ると、ハツカネズミの相棒・シエロ(声:柿澤勇人)とともに、これまで没頭してきた様々な“技”や“知識”を駆使して、ペチカの抱える心配事を解決しようと奮闘する。
◆佐野晶哉、2度目の声優挑戦とジュゼッペへの想い
― 2度目の声優挑戦でしたが、オファーを受けたときのお気持ちを教えてください。
佐野:率直に「よっしゃ!」と思いました(笑)。前回『ヨウゼン』で吹き替えに挑戦したときがすごく楽しくて、「まだ終わらないでほしい」と思うくらい名残惜しかったんです。それでマネージャーさんにも「年に1本は声の仕事がしたいです!」と話していたのですが、まさかその願いが叶い、『ヨウゼン』に続いて今年2本目の声のお仕事をいただけるなんて思ってもいませんでした。しかも今回は、小さい頃から観て憧れていたミュージカルアニメーションの作品で、本当に嬉しかったです。
─ ジュゼッペというキャラクターについて、どのような印象を持ちましたか?
佐野:ジュゼッペは“トリツカレ男”と呼ばれ、街の人たちには少し煙たがられている存在ですが、「いろんなことにトリツカレる」という特徴の前に、根っこに優しさがあります。だからこそ、さまざまなことに興味を持てたり、視野を広げられたり、何かを好きになれたりする。とても素敵なキャラクターだと思いました。僕自身も、こんなふうに人や物事をまっすぐに好きになれる人でありたいなと思わせてくれるくらい、魅力的な存在です。
─ “トリツカレるくらい夢中になる”という点で意識したことはありますか?
佐野:自分の普段の声より少し高めで、もっとハッピーで陽気な雰囲気を意識して、張りのある声を出すようにしました。最初にキャラクターの絵を見たときから、ジュゼッペは“明るくて前向き”なイメージがありました。
◆佐野晶哉、徹底した役づくりと収録の裏側
─ 前回の経験を経て、今回はどのような準備をしましたか?
佐野:有り得ないくらい準備しました(笑)。iPadで映像を流しながら、スマホで自分の声を録音して、映像とリンクしたときにどう見えるのかを何度も確認しました。さらに、台本を読みながら、セリフを言う時間をすべてメモして、「このセリフは何秒で話しているのか」まで細かくチェックしました。そのおかげで、現場では予定になかったアドリブのような自然な動きも生まれ、「よっこいしょ」といった小さな声まで使ってもらえたのが嬉しかったです。
― 『ヨウゼン』のときはほとんど1人でアフレコしたそうですが、今回はいかがでしたか?
佐野:今回も最初はほぼ1人で進めましたが、上白石さん、柿澤さん、森川さん(タタン役:森川智之)とはそれぞれのシーンで一緒にアフレコすることができました。1人で時間をかけてシーンを入れたあとに、他の方と一緒にやると自然な掛け合いや呼吸が生まれるんだなと感じました。
もともとシエロの仮アフレコでは女性の声が入っていたので、柿澤さんが演じることになったときは想像つかない部分もありました。でも実際に会話してみると男同士の“悪巧み感”や相棒感が出て、一番やりやすかったです。
森川さんとのシーンは本当に緊張しました(苦笑)。森川さんは4ページ分くらいのセリフがあり、僕はその合間に一言入れる感じ。少しでもタイミングを間違えると流れが崩れるので、絶対に邪魔できないというプレッシャーがありました。でも、同じブースでプロの技術を間近に見られたのは、本当に貴重な経験でした。
上白石さんもすごくやりやすかったです。初めましての日にジュゼッペとペチカの初対面シーンを収録できたのも大きかったですね。1人でやったときと比べると、2人でやることで芝居の印象がまったく変わりました。
― 声をあてる前に、歌を先に収録したとのことですが、監督は「これはジュゼッペのイメージじゃない」とこだわって録り直したそうですね。
佐野:そうなんです。自分で聴いてみても、監督が「違う」と言ったテイクは“歌が上手すぎた”んですよ。音程もリズムもぴったりで、いわば悪い意味で上手かった。最終的に監督がOKを出してくれたテイクは、確かに「これがジュゼッペやな」と思える歌い方になっていました。
─ 佐野さんのお気に入りのシーンを教えてください。
佐野:ブレーキの壊れたペチカの自転車を、ジュゼッペと2人で押しながら坂を下るシーンです。ペチカが「ブレーキの取れた自転車ってなんだか好きなの」「ばかみたいに聞こえるでしょう」と寂しそうに話すと、ジュゼッペが「そうだな」と返し、続けて「たださ、そこがいいんじゃないかな」と言うセリフに、ジュゼッペの優しさが詰まっていると思います。ここは一番テイクを重ねたシーンでもあります。
─ 心に残ったセリフはありますか?
佐野:最後のほうの「やるべきことがわかっているうちは、手を抜かずに、そいつをやり通さなくちゃ」というセリフは、好きを原動力に動いているジュゼッペが言うからこそすごく響きました。そのシーンにもこだわって、何度かテイクを重ねました。
◆佐野晶哉「繊細な表現が求められる」声優に感じた魅力
─ 佐野さんが2度目の声優を経て、声優の仕事に感じた魅力はどんなところですか?
佐野:声優の魅力で一番感じたのは「間の難しさと面白さ」です。口の動きに合わせて必ずセリフを話さないといけなかったり、口が閉じたらその時点でセリフを終わらせないといけなかったりします。これは舞台やドラマ、映画では絶対にない制約です。逆に、口が勝手に動いてくれることもあり、普段は絶対に喋らないテンポや言い回しを経験できる楽しさもあります。声優はマイクの感度が非常に高いので、心臓の音や鼻のちょっとしたすすりまで聞こえるくらい、繊細な表現が求められます。その繊細さこそ、声優ならではの強みだと思います。
★インタビュー後編では、ジュゼッペの姿に共感した恋愛観や、最近“トリツカレている”趣味、そして夢を叶える秘訣などについて語ってくれた。
(modelpress編集部)
◆佐野晶哉(さの・まさや)プロフィール
2002年3月13日生まれ、兵庫県出身。2016年8月に事務所に入所。2019年2月、Aぇ! groupのメンバーに選ばれ、2024年5月15日に「《A》BEGINNING」でCDデビュー。グループ内では、複数曲の作詞・作曲も担当している。近年の主な出演作は、ドラマ「離婚後夜」(ABC・テレビ朝日系、2024年)、ドラマ「Dr.アシュラ」(フジテレビ系、2025年)、映画『か「」く「」し「」ご「」と 「 』(2025年)など。2026年度前期のNHK連続テレビ小説「風、薫る」への出演が決定している。
【Not Sponsored 記事】
関連リンク
