「数センチ」でここまで違うとは! 日本唯一の「寝台高速バス」新型初公開 寝てみて分かった改良点

2025年10月31日に開催された「バステクin首都圏」で、高知駅前観光がフルフラットシート「ソメイユ・プロフォン」の新型を初公開しました。大幅に改良された新型座席の寝心地を紹介します。

「たかが4cm、されど4cm」

 日本国内で唯一「フルフラット」になる夜行高速バスの座席ユニット「ソメイユ・プロフォン」の新型が、2025年10月31日に初公開されました。

「ソメイユ・プロフォン」を開発したのは、夜行高速バスを運行する高知駅前観光です。これまでの半年間の試験運行での意見を反映し、10月31日のイベント「バステクin首都圏」で、新型座席「S-02」を初披露しました。

 高知駅前観光の担当者は「ソメイユ・プロフォン」について、「予想以上に多くのお客様に快適性を評価していただき、非常に高い乗車率でした」と話しますが、一方でスペースの狭さやコンセントがないことなど、夜行バスの車体サイズに起因する「快適性と定員の両立」に関する問題点も指摘されていました。

 今回初公開された「S-02」は、不評だった部分について最大限の改良を行ったとのこと。そこで“座席鉄”の筆者(安藤昌季:乗りものライター)が、レビューのために取材しました。

 新型バス「フラットン」の車内には、新型「ソメイユ・プロフォン」の寝台状態と座席状態のユニットが一つずつ置かれていました。

 隣に従来型「ソメイユ・プロフォン」を装備したバスも展示されていたため比較してみると、新型は明らかに上下空間が拡大されています。横幅も広く見えました。

 座席幅は従来型の48cmに対して、53cmに拡大。上下段の間隔(下段の高さ)も51cmが55cmに増やされています。寝台の長さも177cmから182cmに伸び、背の高い人にも対応。背が低い人は、頭上に物が置きやすくなっています。

 なお、横幅拡大はレーザースキャナーの活用で「構造上、指1本ほど余白が広げられることを発見して実現した」そうです。当初は増やせる幅を「通路幅」と「寝台幅」のどちらに振るか議論したそうですが、すべて寝台幅に振ったのは正解と感じました。

 さっそく許可を得て、寝てみました。

 従来型は、3回乗車した筆者にとっては、「決められた入り方以外では、寝台区画に入れない」イメージで、下段は身体が引っ掛かる感じがありました。

 しかし新型の下段はスムーズに出入りが可能。フレーム構造も見直したそうで、「たかが4cmですが、されど4cm」、従来型よりも出入りや、区画内での姿勢変更が格段に楽になっています。また、フレーム構造を見直たことで「構造からの発生音を大幅に減少できました」(高知駅前観光)といいます。居住性は全般的に大きく向上しています。

上段寝台は上半分が「角度付き」に…なぜ?

 上段は、上下空間は従来通り51~73cmですが、試験的に寝台の上半分に10度の角度を付けていました。これは、少し角度があった方が身体を起こしやすいことと、完全にフルフラットだと高速道路の坂道などで「頭が水平よりも沈んで怖い」現象の解消を狙ったものといいます。寝心地にはほぼ影響しないため、純粋に改良だと筆者は感じました。

 なお、機構上は「電動リクライニングで座面を持ち上げることも可能なので、今後の設計では考えたい」とのことでした。

 横幅は5cmも広くなっています。53cmの寝台幅は「広い」とは言えませんが、173cm、70kgという男性標準体型の筆者としては「横幅ぴったり」感のあった従来型よりも、姿勢の自由が格段に向上し、快適性に各段の違いを感じました。

 さらに大きな改良点は、区画内に小物入れとコンセントが追加されたことです。これにより狭い区画内でリュックなどから物を取り出す苦労が減ったほか、スマートフォンなどの電源切れの心配もなくなりました。

 今回の試験車両には装備されていませんでしたが、カーテンも「これまでは隙間からモノが落ちる構造だったが、(新型は)改善した」とのことでした。このほか、「ユニット全体をバス後部にずらして、バスの入口部分を靴置き場にする」とのこと。トイレ前のスペースに更衣室を付けることも検討中とのことでした。

他社様から問い合わせをいただいている

 なお、新型「ソメイユ・プロフォン」は、日野自動車のバスでも三菱ふそうのバスでも装備可能とのことで「他社様から問い合わせをいただいている」とのことでした。

 今後は「2026年1月上旬~1月下旬頃の本運行開始」を目指しているとのこと。当初は従来型と併用しつつ、将来は新型に統一して、週4回運行を目指すとのことでした。

「ソメイユ・プロフォン」を搭載した夜行高速バス「フラットン」は、東京~鳴門~高知間を走ります。なお、発表されている新ダイヤは徳島駅に寄りませんが、その理由は「距離が短い徳島は、従来型の『スマイルライナー』で対応したい」とのことでした。

 総合的に見て、「好みが合う人は気に入る」という従来型に対して、新型は「多くの人がこれなら利用して良い」というレベルの快適性に向上したと感じます。運行開始が今から楽しみです。

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