原付免許で125ccバイク解禁へ「新基準原付」ついに始動! でも油断すると“無免許扱い” その落とし穴とは?

このたび、ホンダから業界初となる「新基準原付」適合モデルが発表されました。これらは同年11月20日に発売予定です。原付免許で乗れるのに排気量は125ccクラス。この新しい乗りものは、いったい何ができて、何に注意すべきなのでしょうか。

「新基準原付」って何? なぜ生まれたのか

 2025年10月16日、ホンダは「スーパーカブ110 Lite」や「クロスカブ110 Lite」など、計4モデルの新基準原付を発表しました。これは、2025年4月1日から施行された新しい車両区分に対応した、業界初のモデルとなります。

 そもそも新基準原付とは、排気量が50cc超125cc以下で、かつ最高出力が4.0kW(約5.4馬力)以下に制御されたバイクのことです。この2つの条件を同時に満たすことで、法律上は従来の50ccバイクと同じ「原付一種」として扱われます。

 ユーザーにとって最も重要な点は、運転に必要な免許が従来の原付免許または普通自動車免許で変わらないことでしょう。

 ただ、注意しなければならないのは、原付免許ですべての小型バイク(排気量50cc超125cc以下の原付2種)に乗れるわけではないという点です。

 あくまで出力が4.0kW以下に抑えられた新基準原付に限られ、これを超える原付二種バイクを運転した場合は無免許運転という扱いになります。

 交通ルールも、従来の50cc原付と全く同じです。法定最高速度は30km/h、指定交差点では二段階右折する義務があり、とうぜん2人乗りは禁止です。

 ナンバープレートも、これまで通り白色のものが交付されます。従来の小型バイク(原付2種)に付けられる黄色や桃色(ピンク)のナンバープレートではありません。

 このような新しい区分が生まれた背景には、日本の「国民の足」として親しまれてきた50cc原付の存亡の危機がありました。

日本独自の「ガラパゴス規格」残すためには

 直接の引き金となったのは、継続生産される現行の原付一種モデルに対して2025年11月から全面適用される「令和2年排出ガス規制」です。この厳しい規制を50ccの小排気量エンジンでクリアするのは、技術的にもコスト的にも極めて困難でした。

 加えて、50ccという排気量区分は、世界的に見れば、ほぼ日本特有ともいえる「ガラパゴス規格」でした。世界市場の主流は125ccクラスであり、日本専用の50ccモデルを開発・生産し続けることは、メーカーにとって大きな負担となっていたのです。

 事実、この規制対応の難しさから、スズキは「アドレスV50」といった50ccスクーターの生産終了を検討していると報じられており、市場からの撤退を選ぶメーカーも出てきています。

 とはいえ、このままでは50cc市場が消滅してしまうという危機感から、業界団体が政府に提案したのが、今回の新基準原付の構想でした。

 世界で大量生産されている125ccクラスの車体をベースに、出力を50cc並みに制御することで、排ガス規制とコストの問題を同時に解決しようと考えたのです。まさに苦肉の策と言えるでしょう。

 なお、「車体が大きくなっても安全なのか」という懸念もありましたが、警察庁の有識者検討会は、出力制御した125ccバイクと従来の50ccを比較検証した結果、「運転のしやすさは、現行の原付とおおむね同等」であり、「危険性は感じられない」と公式に結論づけています。

メリットだけではないのか 社会全体で向き合うべき課題

 新基準原付は、ユーザーに新たなメリットをもたらします。ベースとなる125ccクラスのエンジンの豊かなトルクにより、従来の50ccよりも走行性能が向上します。

 ただ、一方で新たな課題も生まれています。車両価格の上昇は避けられません。その結果、手頃な移動手段を求めるユーザーが、状態の良い中古の50ccモデルに流れる可能性があります。これは、将来的に50cc中古車の価格が高騰する一因となるかもしれません。

 社会的な問題としては、大きな車体が駐輪場の区画に収まらない「駐輪場問題」や、出力制限を解除する不正改造のリスク、警察官による識別の困難さなどが指摘されています。

 結局のところ、この制度は排ガス規制で消滅するかもしれなかった50cc市場を、世界標準の125ccクラスを活用して延命させるための、現実的な解決策と言えます。

 この新しい乗りものが社会に根付くためには、ユーザー1人ひとりの正しい理解とルールの遵守はもちろん、メーカーによる不正改造防止策、行政による駐輪場問題への対応など、社会全体で新しい原付の常識を育てていく必要があるでしょう。

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