
2025年10月17日に韓国のソウル空軍基地(ソウル空港)において、「ソウル ADEX 2025」(通称ソウルエアショー)が開催され、そこで韓国国産戦闘機のKF-21「ポラメ」がデモフライトを行いました。
KF-21の真の実力?
2025年10月17日に韓国のソウル空軍基地(ソウル空港)において、「ソウル ADEX 2025」(通称ソウルエアショー)が開催され、そこで韓国国産戦闘機のKF-21「ポラメ」がデモフライトを行いました。
KF-21は韓国のKAIが開発している機体で、愛称の「ポラメ」とは若鷹のことを指す韓国語です。老朽化した同国空軍のF-5「タイガー」戦闘機やF-4「ファントムII」戦闘機の後継として2032年頃までに120機の配備を予定しています。
また、本機の開発にはインドネシアも共同開発国として名を連ねており、同国をはじめとして海外への輸出も当初より検討されていることから、今後の韓国防衛産業の中核を担う存在としても期待されています。
KF-21は2022年に初飛行し、2025年10月現在は試作機6機で各種試験が行われています。一般来場者の前で行うデモフライトは、2023年に開催された前回のソウルADEXで初披露されましたが、そのときは開発中の機体のためか戦闘機としては控えめな飛び方でした。しかし、それから2年経ち、今回のソウルADEXではその飛行内容も大きく変化し、その激しい飛行は会場の観客を沸き立たせました。
今回デモフライトを行ったのは単座仕様の5番機でしたが、離陸直後に急上昇を行ったのち、連続横転ループ、そして会場上空での360度旋回まで披露しています。さらに上空を高速で通過するハイスピードパスでは、機体の一部にベイパー(空気中の水分が圧縮されて衝撃波のように見える現象)も発生させていました。
前回(2023年)のソウルADEXでの飛行と比べても格段に積極的な内容となっており、F-16「ファイティングファルコン」やF-15「イーグル」といった現役戦闘機のデモ飛行と比べても見劣りしないレベルだったと言えます。機体の操縦性や推力性能の成熟が感じられ、KF-21の開発が順調に進んでいることを印象付けるものでした。
KF-21の今後と課題
エアショーや航空祭で披露される戦闘機のデモフライトは、その機体が持つ性能の一部分でしかありません。KF-21の場合も同様ですが、近年の戦闘機開発はスケジュール遅延が常態化しているため、そのようななかで、初飛行から約2年でここまで進歩するのは注目に値すると言えるでしょう。
しかし、KF-21の開発プロジェクトも問題がないわけではありません。共同開発国であるインドネシアとは、現在も開発費の分担や技術移転などの諸問題で合意に至っておらず、いまだ交渉中です。
なお、最初に配備される機体は「ブロックI」と呼ばれる空対空任務が主体になった限定的なモデルで、対地任務も可能な「ブロックII」については、2028年以降の配備を目指して開発が進められています。生産数については最終的には120機の製造と配備を予定していますが、現時点で韓国政府が契約した量産機は「ブロックI」の40機分のみで、生産・配備計画が変更される可能性をはらんでいます。
将来の発展型の計画としては、KF-21には連携型無人戦闘機と組み合わせた運用や、ステルス性を高めたKF-21EX(以前は「ブロックIII」と呼称)の開発などを予定していますが、その実現のためには継続した研究開発が必須です。
これらを鑑みると、KF-21はまだまだ発展途上のプロジェクトであり、今後の量産機配備と「ブロックII」以降の進化がカギになっている模様です。
KF-21が真に「使える戦闘機」となるのか、その答えは今後5年ほどで出るでしょう。同機に韓国だけでなく世界からの注目が集まっています。