「イノベーション疲れ」を表現した車の色って!? 自動車カラーのトレンド“攻めた色”から“暖かみ”へ

ドイツの化学メーカーBASFが毎年恒例の「自動車カラートレンド予測」を発表。「イノベーション疲れ」がテーマとなった今回のトレンドカラー、どのような色なのでしょうか。

クルマの色は「人の温もり」重視になっていく?

 ドイツの化学メーカーBASFが2025年10月、毎年恒例となっている「自動車カラートレンド予測」の2025-26年版を発表。横浜市にあるBASFコーティングスジャパンの工場で15日に記者向け説明会が行われました。

 カラートレンド予測は、今後3~5年ほどの間に起こる社会の変化や技術の進展などを予想し、これらがクルマのボディカラーの流行に及ぼす影響を分析しています。BASFはこれを基に複数のカラーサンプルを製作し、全世界の自動車メーカーへ、新車のカラー展開のたたき台として提案しています。

 BASFではボディカラーのトレンドをアジア太平洋、EMEA(ヨーロッパ・中東・アフリカ)、米州(アメリカ周辺)の3地域に分けて予測しています。国や地域によって異なるユーザーの価値観を反映するため、各エリアには代表的な「キーカラー」を設定して、地域で異なるニーズに対応しています。

 BASFコーティングスジャパンでアジア パシフィック統括デザイナーを務める松原千春氏は、昨今のトレンドは全体的に“暖かみ”がキーワードとなっていると分析します。

「例えばブルーのようなクールな色でさえ、どこか柔らかさや温もりを感じるような表現になっています。シャープで冷たいイメージよりも、人が中心にいて、感情が豊かになるような色が主流になっていくと予測しています」(松原氏)

アジア地域の鍵は「イノベーション疲れ」

 世界全体のトレンドは“暖かさ”を感じる色へとシフトしているそうですが、その方向性は、各地域の社会環境や情勢によってもさまざまです。

 例えばアジア太平洋地域のキーカラーは、淡いシャンパンゴールドのような「フィジタル マグネター」という色です。「フィジタル」とは、物理的な世界(=フィジカル)と、デジタルの世界を融合させた造語で、わずかに緑がかった柔らかい色調でありつつ、滑らかな金属感を持った落ち着いた質感のカラーとなっています。

 このキーカラーのテーマとなったのは、アジアの人々が感じている「イノベーション疲れ」だと松原氏は説明します。

「アジア地域では技術革新の加速が続いていますが、その急激なスピードに社会全体が疲れを感じているのではないか」と松原氏は話します。「イノベーションに対する疲労感のなか、人々は穏やかで心地よい暮らしを求めていると考え、カラーを設計していきました」と明かしました。

 一方、EMEA地域のキーカラーは、見る角度によっては緑や紫っぽくも見える「テッセラクト ブルー」という青色。松原氏は「政情不安や社会構造の急変が、ヨーロッパ周辺でさまざまな問題や分断を生んでいます。“対立間の空白を埋める”ことが、いま欠けているものを明らかにし、未来を再構築していく起点になると考えました」と説明しており、こうした分析が豊かな表情を持つキーカラーの設定につながったとしています。

 そして米州のキーカラーに設定されたのが、「オーセチック ニュートラル」という深い茶色です。松原氏によると、この地域の人々は自動車に対して保守的な考えを持つ人が多い模様で、「新しいものが増えるなか、『普通』や『中立』であることを、逆に個性として支持する新しい価値観を提案したい」というコンセプトが込められています。

 このように、クルマのボディカラーには世界情勢や人々の思想の変化と大きな関わりを持っています。松原氏は「ボディカラーのトレンドは単なる好みだけで作られるものではなく、これからの社会がどうなっていくか、人々が何を考えていくかが、常に鏡のように反映されているのです」と強調しました。

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