東急「ナゾの落書き電車」の顛末 沿線住民が騒然 「あのやり方は良くなかった」と幹部

高級なブランドイメージを持つ東急電鉄に、スプレーで落書きされたような電車が出現し話題に。しかも最新の車両に描かれた“落書き”、実はいたずらではなく、東急電鉄幹部が「あのやり方は良くなかった」と顛末を明かしました。

あか抜けた沿線を走る電車に“落書き”が

 東急電鉄の田園都市線梶が谷駅(川崎市)で2025年10月5日、各駅停車と回送列車の衝突事故が発生し、ほぼ24時間にわたり一部区間が不通となりました。信号システムの設定の不備が原因でしたが、東急は影響を鑑み、19日に予定されていた長津田車両工場の一般公開イベント「電車まつり」の中止も決めました。

 田園都市線のほか、直通運転をしている大井町線では、衝突事故の少し前の2025年9月上旬、あか抜けた沿線を走る路線だからこそのちょっとした“騒ぎ”がありました。車体の下半分に波線の模様がスプレーでいくつも描かれている“落書き電車”が目撃され、短文投稿サイト「X」(旧・ツイッター)で論議を呼んだのです。

「美しい時代へ」というスローガンを掲げ、先進的な電車を積極的に導入し、あか抜けたブランドイメージを構築してきたのが東急沿線です。しかし、その“落書き電車”は中高年層の間で、労使紛争が激しかった1970年代の旧国鉄電車に「スト権奪還」などの労働組合の主張を書き殴った「アジ電車」を思い出す向きもあったほど、派手に描かれたものでした。

 もちろん東急電鉄に「アジ電車」を走らせるような火種は全くなく、いたずら書きをされたわけでもありませんでした。いったい何が起きたのかを探ろうと、筆者(大塚圭一郎:共同通信社経済部次長)は9月30日の報道公開時に東急電鉄鉄道事業本部車両部の門田吉人統括部長へ取材しました。

幾何学模様のようだった“落書き電車”

その“落書き電車“は、東急電鉄が大井町線の各駅停車用として25年7月2日に営業運転を始めたばかりのステンレス製電車6020系の5両編成という真新しい電車でした。

 6020系は大井町線の急行に使われる7両編成が2018年に登場したのに続き、各駅停車に使われている9000系と9020系を置き換えるために5両編成が追加投入されました。5両編成は2027年ごろまでに計18編成、90両が順次投入されます。

 よりによって最新の車両にスプレーで模様が描かれており、せっかくのピカピカな車両が台無しになってしまったように映ります。しかしながら、「ピカピカ」な真新しい車体、それこそが模様を描く原因になったことが分かりました。

 門田統括部長は駅のプラットホームに電車が進入し、扉が開くのに合わせて可動式ホーム柵を開ける際に「車両検知センサーが横から画像解析認証をしている」と説明した上で、6020系の5両編成は「車体が少し“きれいすぎた”ため反射率が高く、(大井町線から乗り入れる)田園都市線の区間でセンサーが車体を認識できない問題がたまに起きた」と説明しました。

 対策として「現場の判断でスプレーをそこまで目立たない感じで塗ったものの、光に当たると(波線を描いた部分が)目立ってしまった」そうです。SNSなどで論議を呼んだことを受けて東急電鉄は「あのやり方は良くなかった」と受け止め、スプレーを落としたと解説しました。

 スプレーを落とした後で車体を認識できないトラブルの発生は「ゼロではない」ものの、センサー側が車両をより検知しやすくするような工夫もしているそうです。なお、大井町線の区間では「ホームドア(可動式ホーム柵)が扉と連動するので問題はない」と説明しました。

 なお、これら車両は田園都市線の長津田検車区に所属します。10月6日には前夜の衝突事故を受けて大井町線も列車本数を大幅に減らしての運行となりましたが、これは梶が谷駅が事故によってふさがったことで、多くの列車が車庫から出られなくなったためでした。

 大井町線の車両はこれまでは、東横線などからの転属が中心でした。真新しい新車を積極的に入れるようになった「美しい時代」の到来が、思わぬハプニングを生んでしまったと言えるのかもしれません。

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