
<SkyレディスABC杯 2日目◇8日◇ABCゴルフ倶楽部(兵庫県)◇6675ヤード・パー72>
時間の経過とともに強くなった風が選手を悩ませた。初日『73.15』だった平均ストロークが『74.44』と激ムズになった2日目のラウンド。アンダーパーで回ったのは13人だけで、60台は「69」の2人しかいなかった。そのうちの一人が、トータル3アンダーで38位から5位にジャンプアップした澁澤莉絵留だ。
「きょうはゼロからのスタートだったので、3連続ボギーのときは『またゼロからやればいい』と切り替えた。いままでは気持ちがキレたり、引きずってしまって、自分を盛り上げることができなかったけど、きょうは大丈夫でした」
イーブンパーの38位から出て、前半のアウトで3バーディを奪った。折り返した10番パー4で最初のボギーが来て、そこから3連続ボギー。あっという間に貯金がなくなった。いつもならキレる場面。だが、この日は違った。「ここは難しいコースだし、距離も長い。ボギーを打つのは当たり前。たまたま、それが3つ続いただけ」。そう考えると心は落ち着いた。
13番パー4でピン右4.5メートルを沈めるバーディで“ボギー列車”から降りて、15番パー5からは2連続バーディ。貯金を取り戻して、ホールアウトした。「いままでなかなか、そういう気持ちになれなかった」。ゴルフはメンタルスポーツ、というのを実感した一日ともなった。
QTランク108位でスタートしたプロ6年目の今シーズンは、ここまでレギュラーは11試合で9度の予選落ちを喫した。ステップは10試合で3度の予選落ちはあるが、トップ10も3度。「開幕から調子は悪くないのに、結果につながらない。足りないものが多すぎる。でも、考えすぎてもダメ。『自分は調子がいいんだ』と思って、プレーしています」。そのポジティブシンキングをアレンジして、3連続ボギーからも脱出した。
「今年は1試合1試合に優勝する気持ちで出ている。QTは行きたくないんです」
メルセデス・ランキングは138位。シーズンも終盤に入り、来季の職場を確保するにはQTで上位を目指すのが現実路線だが、上を狙う気持ちにブレはない。この大会はステップ唯一の4日間大会で、賞金総額4000万円は国内開催では最高額。優勝賞金720万円を獲得すれば、獲得賞金で決まる明治安田ステップ・ランキング(賞金ランキング)は31位から一気に女王を狙える位置まで上がってくる。
同ランキング2位以内に入れば、QTを回避して来季は6月予定の第1回リランキングまでレギュラーに出場できる。オフは同じ2000年度生まれの親友、後藤未有と旅行に行く計画をしている。「まだどこに行くかは決めていないけど、このオフは行けなかったので、絶対に行きたいんです」。そのための資金も稼がなければならない。
首位を3打差で追いかける高額大会の決勝ラウンド。「チャンスがあれば決めて、ピンチがきたらしのぐ。頭を使うゴルフができれば、上位にいられると思う。そのときが来たら気合で頑張ります」。頭をフル回転させてスコアを伸ばせることができれば、豪華な旅も待っている。(文・臼杵孝志)