堀琴音が9年前の悪夢を消し去るメジャー初V「正直すごく苦しかった」 激動の20代ラストイヤーで手にした日本一

<日本女子オープン 最終日◇5日◇チェリーヒルズゴルフクラブ(兵庫県)◇6616ヤード・パー72>

9年前に流した悔し涙は、日本一を決める同じ大舞台でうれし涙に変わった。あのときの自分にこう言える。「まだ勝っちゃいけないということ。下手くそなんだから練習しなさい。きっといいことが待っているから」。
2打のリードを持って上がってきた18番グリーン。短いウィニングパットを沈め、とびっきりの笑顔で両手を突き上げた。そして、涙。堀琴音が過去の呪縛からようやく解放された瞬間だった。

「ツアーのプロアマ大会とかで、いまだにお客さんに『あのときは惜しかったね』と言われます。あの試合で堀琴音という名前を知ってもらったことには感謝しているけど、正直すごく苦しかった。調子が悪いときも、言われてきたし、たくさん苦しいことがありました」

プロ3年目だった2016年の「日本女子オープン」。2打差の2位から出た最終日に終盤で単独首位に立った。だが、17番パー4でボギーを叩き、3組前で回っていた当時アマチュアの畑岡奈紗に並ばれた。畑岡は最終18番パー4で単独首位に立ち、入れればプレーオフという堀の18番のバーディパットは、カップの横を無情にもすり抜けた。

「心の中にはずっとモヤモヤしたものがありました。あれからずっと、この大会で勝ちたいと思ってきた。勝つために頑張ってきた。あの経験があるから、今、この場所に立っていると思います」

9年前と同じく、アマチュアと優勝を争った。最終組でともに回ったのは、15歳の廣吉優梨菜(ひろよし・ゆりな)。出だしの1番パー4では廣吉がバーディを決めて首位に並ばれたが、堀は慌てなかった。

ボギーは5番パー4の1つだけ。16番パー4でピン横5メートルを沈める5つ目のバーディを決めて、優勝を大きくたぐり寄せた。パッティングに悩み、2年前からは長尺パターに変更。ボールを見ずにカップに視線を合わせる独特の“ノールック”パットも冴えた。表情は最後までこわばっていたが、最後は笑顔でゴールに飛び込んだ。

「きのうの夜からすごく緊張していました。あまり眠れなかったし、朝も早く目が覚めた。食欲もなかったけど、無理矢理に食べた。こんな経験は初めてでした」。それでも、「地に足をつけてを意識した」というセルフコントロールでプレッシャーをはねのけ、9年前とは違う結果に自分を導いた。

小学生のときには徳島市の自宅から週末に神戸市内のゴルフアカデミーに通い、高校時代もこの兵庫で過ごした。「兵庫は第二の故郷。そこで勝つことができて本当にうれしい」。柔和になった表情に晴れやかな笑みがあふれた。

昨年12月のクリスマス婚から10カ月でミセス初Vも達成した。22年3月の「Tポイント×ENEOS」以来となる通算3勝目。生涯獲得賞金は309試合で4億円を突破した。「9年前から本当に山あり谷ありだった。優勝できたし、2勝目もできたけど、シードは落として、ドライバーショットは45度くらい曲がっていたときもある。絶望的なときもあったけど、そこから頑張ってきたから、きょうの18ホールを乗り越えられたと思います」。

来年3月に30歳になる。激動の20代を過ごしてきたが、そのラストイヤーで因縁に終止符を打った。「やっぱりメジャーっていいなと思いました。また勝ちたい。今回優勝して出場できるようになったし、次はリコーで勝ちたいです」。次のターゲットは最終戦の「JLPGAツアー選手権リコーカップ」。欲張りなメジャー覇者のシーズンはまだ終わらない。(文・臼杵孝志)

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