どんな船でもイチコロ!?「驚愕の威力を誇る対艦兵器」ステルス爆撃機でテスト! 誕生の理由は“おサイフ事情”でした

アメリカ軍とノルウェー軍は2025年9月、北大西洋において次世代の対艦船用兵器である「クイックシンク」のテストを実施し、B-2「スピリット」爆撃機から投下して標的となる艦艇を撃沈したと発表しました。

手軽に安く船舶を撃沈する対船舶兵器

 2025年9月3日、アメリカ軍とノルウェー軍は、北大西洋(ノルウェー海)において次世代の対艦船用兵器である「クイックシンク」のテストを実施し、B-2「スピリット」爆撃機から投下して標的となる艦艇を撃沈したと発表しました。

「クイックシンク」は2021年よりアメリカ空軍研究所(AFRL)とアメリカ空軍で開発していた兵器ですが、今回の試験ではその詳細な画像と、B-2爆撃機から投下される姿が初めて公開されています。

 ただ、「クイックシンク」は完全な新開発の兵器ではありません。航空機搭載爆弾にGPS・INS(慣性航法装置)誘導キットを組み合わせた精密誘導爆弾JDAM(ジェイダム)を改良したもので、艦艇に命中するとその真下の水中で爆発し、船体自体を分断して撃沈します。

 対艦・対水上兵器としては、より強力で高性能な魚雷や対艦ミサイルなども存在します。しかし、これらは1発あたりのコストが数億円以上もするため数に限りがあり、戦時であってもすべての水上目標の攻撃に使うことができません。「クイックシンク」はそういった高価な兵器に代わって、低コストで水上艦艇を撃破可能な兵器として開発されました。

 元になったJDAMは爆弾と誘導キットを組み合わせた安価な兵器で、1発あたりの単価は1000万円程度と言われています。この「クイックシンク」の導入コストは未定ですが、それでも従来の対艦兵器より安くなるでしょう。

 推進力を持たない滑空式の誘導爆弾のため、攻撃には目標から距離10km以下まで接近する必要があり、さまざまな防空兵器を搭載する軍艦に対しては用いるのが難しいものの、輸送船や軍に徴用された商船などに対しては大きな効果が期待できます。

新型兵器ってどんな感じ?

 今回、初公開された「クイックシンク」は、外見上は2000ポンド爆弾をベースにしたGBU-31 JDAMと非常によく似ていますが、先端のシーカー部分がレーザー誘導方式を組み合わせたLJDAM仕様になっているようです。

 これは目標となる水上艦艇に正確に命中させるためと、それが移動した場合でも対応するためと思われます。試験ではノルウェー空軍のF-35「ライトニングII」も参加しており、同機がレーザーポインターで目標を指示して、共同で攻撃を行った可能性もあります。

 また、爆弾の後部に付けられる誘導用のフィンには「クイックシンク・オンリー」という注意書きがあり、専用のモノが使われていると推察されます。

 爆弾本体には試験での識別用のためか通常とは異なる塗装がされており、公開された画像には黄色と黒色の警告色で塗られたものと、ピンク一色で塗られたものが写っていました。

 「クイックシンク」の試験は、今回のノルウェーに先んじて、2024年のリムパック(環太平洋合同演習)でもテストが行われており、兵器としては完成しつつあるようです。ベースとなったJDAMは、現在でも多くの戦闘機・爆撃機で運用できる定番兵器であり、この「クイックシンク」も実質的にはJDAMの派生モデルであるため、配備が始まれば世界各国で運用される定番の対艦船用兵器となるかもしれません。

 日本とその周辺国は海に面した海洋国家が多く、武力が伴った有事が起こった場合には艦艇を巻き込んだ戦闘が発生する可能性が高いでしょう。航空自衛隊ではF-35A戦闘機とF-2戦闘機で既にJDAMを運用しているため、近い将来「クイックシンク」を導入するかもしれません。

※誤字を修正しました(9月17日19時30分)。

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