21か国でお邪魔!「ブラジルの航空機メーカー」への使節団に「日本」もなぜか入っていたワケ しかも割といい位置に

ブラジルのエンブラエルが21か国の外交使節団に製造施設を公開し、日本の外交使節も参加。見学したKC-390は航空自衛隊の老朽化したC-130Hの後継機候補として注目されている機体です。

エンブラエル見学21か国のなかに、なぜか日本が

 ブラジルの航空機メーカーであるエンブラエルは2025年8月30日、同社のガビアン・ベイショートの製造施設を21名の外交使節が見学したと、Facebookの公式ページで発表しました。

 ガビアン・ベイショートの施設では、KC-390空中給油・輸送機とA-29「スーパーツカノ」練習・軽攻撃機などの組み立てが行われています。見学した外交使節団は、既にKC-390の運用を開始しているポルトガルとハンガリー、発注を行っているスウェーデンやチェコなどに加えて、将来KC-390を購入する可能性がある国から構成されていましたが、その中に、日本の外交使節も含まれていました。

 エンブラエルは外交使節団の見学の模様の写真3点をFacebookで公開しており、その中にはKC-390の前で外交使節がその国の国旗と共に横1列で並んでいる写真があるのですが、日本の施設は真ん中付近の目立つ位置に立っています。

KC-130Hの後継に急浮上?

 日本がKC-390に注目する背景には、2018年12月に閣議了承された防衛計画の大綱と、2022年12月に閣議了承された国家防衛戦略に「機動展開能力」、すなわち輸送能力を強化するという文言が盛り込まれていることが挙げられます。

 航空自衛隊は2025年3月30日の時点で、C-2輸送機を17機、C-1輸送機を2機、C-130H輸送機を13機、ヘリコプターへの給油を主任務とするKC-130H空中給油・輸送機を3機、KC-767空中給油・輸送機を4機、KC-46A空中給油・輸送機を4機保有しています。

 このうちC-1輸送機は2025年3月11日に退役していますが、C-130HとC-130Hを改造したKC-130Hは最も新しい機体でも1998年度に導入されたため、老朽化が進んでいます。早晩、後継機の導入が必要だと考えられており、その候補としてKC-390が急浮上しているのです。

KC-390に白羽の矢が立つ、もっともな理由

 もっとも、KC-130Hの後継機としては、C-130の現行生産型C-130Jの空中給油・輸送機型KC-130Jの導入が有力視されていました。

 KC-130JはKC-130Hよりも給油用燃料の搭載量が増加しているだけでなく、アメリカ海兵隊用に開発された「ハーベストホーク」システムを搭載すれば、ISR(情報収集・監視・偵察)任務と対地攻撃任務も行えるという長所も備えています。

 ただし、KC-130Hと同様、空中給油任務の際には給油用燃料のタンクを貨物室に搭載して、機体の燃料システムと接続する必要があります。タンクの搭載に要する時間は、通常の貨物の搭載に要する時間と大差ありませんが、機体の燃料システムと給油用燃料タンクの接続と点検には時間がかかります。そのため給油用燃料タンクの頻繁な着脱は現実的ではありません。

 このため航空自衛隊のKC-130Hは名目こそ「空中給油・輸送機」ですが、ほぼ空中給油機として運用されているようです。

 アメリカ軍のように多数の輸送機と空中給油機を保有している組織であれば、あまり大きな問題ではないでしょう。しかし航空自衛隊のように輸送機と空中給油機が限られている組織にとっては、有事や大規模災害の際に、輸送機として運用するための作業に時間と手間を要するのは望ましいことではありません。この点は航空自衛隊がKC-130Jを導入する上でのネックの一つと目されています。

 これに対し、KC-390は機内に搭載した燃料を使用して空中給油を行います。このためKC-130のように、燃料タンクの着脱を必要とせず、空中給油機としても輸送機としても使用できます。

 スウェーデン空軍は航空自衛隊と同様、輸送機として導入したC-130HをKC-130Hに改造して空中給油機として運用しています。同空軍はC-130HとKC-130Hの後継機としてKC-390を発注していますが、KC-390を採用した理由の一つは、燃料タンクの着脱とそれに伴う作業を必要とせずに、輸送機としても空中給油機としても運用できる点にあると見られています。

 自衛隊はブラジル製の装備を導入したことはありませんが、エンブラエルが開発した短距離ジェット旅客機「Eシリーズ」は、日本の民間航空会社でも多用されています。KC-390にはEシリーズと同じV2500ターボファン・エンジンが使用されていますので、エンジン整備などで民間航空会社の協力を得られる可能性もあるのではないかと思われます。

外交使節の見学が意味するコト

 2023年4月、鈴木量博駐トルコ大使(当時)は、トルコのUAS(無人航空機システム)メーカーのバイカルの生産施設を見学し、同社からUASの最新情報を受領しています。この時点での鈴木大使の見学は、それほど大きく報じられていませんでした。

 しかしそれから2年が経過した現在、バイカルのUAS「バイラクタルTB2S」は、令和8(2026)年度の防衛費の概算要求に取得費が計上された陸上自衛隊のUAV(広域用)の最有力候補に躍り出ています。

 日本の外交使節団のガビアン・ベイショートの製造施設見学は、エンブラエル側の招きに応じただけなのかもしれません。しかしバイカルの例もあるように、単なる外交儀礼での参加以上の意味と目的があるのではないかと思われます。

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