“ナゾの小屋”から橋がにゅーーーんと延びる!? 全国ここだけの“珍工法”なぜ採用? 「中途半端なJCT」の“足りないランプ”建設中

NEXCO東日本北海道支社がマスコミ向けの視察会で「小樽JCTフル化事業」の現場を公開しました。「ランプが1つ足りない」という中途半端な状態のJCTが変わりつつあります。

JCTランプ工事の切り札「秘密の小屋」

 NEXCO東日本北海道支社は2025年9月11日、マスコミ向けの視察会を開催。小樽市で実施中の「小樽JCTフル化事業」の現場を公開しました。

 小樽JCTは札幌と小樽を結ぶ札樽道から、余市・ニセコ方面へ向かう「後志(しりべし)道」が分岐するところで、札樽道の終点である小樽ICより少し札幌寄りに位置しています。このJCTは「小樽方面→余市方面」のランプが無く、これを追加で建設しています。

 一行を乗せたバスは山の住宅街から、1速でやっと登れるほどの急斜面を上がって工事ヤードへ。そこは、山の上を通る札樽道の本線と、斜面の住宅に挟まれた、関係者曰く「ウナギの寝床」のような細長い場所です。すでに橋脚が立ち並び、その上に途中まで橋桁が架かっていました。

 下の方を見ると、この橋桁、なにやら「小屋」のような建物から延びています。実はこの小屋は橋桁の制作ヤードで、コンクリート製の橋桁を1ブロックずつ作り、それを小屋から押し出すのを繰り返して現在の状況があります。

 2019年度から事業がスタートし、橋桁の制作は2024年春から開始。1ブロックあたり13mの橋桁を2週間で作り、ジャッキで引っ張り上げて(小屋から押し出して)橋脚に架けているそうです。全29ブロック中、現在26ブロックが完了しているといいます。

「小屋はコンクリートの養生のための環境を作る目的もあります。ヤードが狭く(工場制作の)プレキャストの橋桁は運べませんし、住宅も近接しているため騒音防止も必要です。そこで採用した工法で、少なくとも現時点では日本でここだけのはず」(NEXCO東日本北海道支社 道路事業部長 池田 修さん)

 冬には小屋にカーテンを引き、室内を暖房しつつ、夏場と同様のコンクリートの養生環境をつくって作業しているのだとか。

 続いて、T字型をしているJCTの真ん中付近に移動しました。そこでは、カーブを描く巨大な鋼製の橋桁が地組されています。

 長さ約80m、重さ約300トンというこの橋桁は、札樽道の本線を横断する箇所のもの。10月1日に夜間通行止めを行い、一気に架設するといいます。

1ランプだけ欠落 そもそもなぜ中途半端なJCT?

 後志道の建設が国で決まった当初、このJCTは札幌方面⇔余市方面のランプだけで、小樽⇔余市のランプは計画されていなかったそうです。

 それでは不便ですし、外国人にも人気のニセコ方面を観光するうえで、小樽に立ち寄ってもらいにくくもなります。小樽市などが強く要望し、小樽⇔余市のランプも建設が決定。2018年に小樽JCT-余市IC間が後志道として最初に開通した際には、「余市→小樽」方向のランプも開通しました。

 この「余市→小樽」方向のランプは土工中心のため2018年の開通に合わせられたということですが、本線を横断する「小樽→余市」のランプについては橋梁構造のため、後で作ることとしたそうです。以来、この1ランプだけがない中途半端な状況が続いています。

 こうした不完全なJCT仕様は、建設が決まった2000年代、公共事業の経費削減が叫ばれた頃の名残だとか。現在、小樽から余市方面へ向かうには国道5号などを経由していますが、JCTのフル化で「20分くらい時間短縮になるのでは」(池田さん)のこと。

 なお、ランプ工事は2027年1月までの予定ですが、その後で舗装や施設工事を行うため、具体的な開通時期は示されていません。

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