
<ニトリレディス 3日目◇30日◇北海道カントリークラブ 大沼コース(北海道)◇6955ヤード・パー73>
今大会は国内女子ツアー史上最長の6955ヤード、規定パー73というセッティングとなっている。通常のパー72はパー3が4つ、パー4が10、パー5が4つの構成だが、今大会はパー4が9つ、パー5が5つと一つ多い。一見チャンスが増えたように見えるが、パー5はいずれも距離が長く、予選2日間で記録されたイーグルは永井花奈が3打目を入れた1つのみだった。
ところがこの日は、16番パー5で7人の選手がイーグルを奪った。同じ日に同一ホールで複数のイーグルが生まれたのは、1990年以降のツアーで6度目。最多は今年4月「富士フイルム・スタジオアリス」2日目の1番パー5での9人(同大会を含む3大会)だ。
“モンスターコース”でイーグルが量産された理由は、ティイングエリアが通常より約80ヤード前に設定されたためである。
16番は左ドッグレッグのパー5。グリーン手前に大きな池、グリーン周りにはバンカーが配置され、通常ならティショットをフェアウェイに置き、セカンドもレイアップして150ヤード以上を残す“3打目勝負”が定石だった。
だが、この日は545ヤードから465ヤードに短縮された上に、前方のティイングエリアから、林越えになるが左隣の15番ホールのフェアウェイを狙うことができた。そこにボールを置けば、再び林を越える形で、池を気にせずセカンドで直接16番グリーンを狙える“新ルート”が開かれたのだ。
首位と3打差、トータル7アンダー・13位タイで最終日を迎える木村彩子は「16番に打とうと思ったら木が邪魔で、左(15番ホール)が開けていて狙いやすかった。距離も短くなるので」と説明。このルートを選び、残り180ヤードを4Uで打って3メートル弱につけ、1パットでイーグルを奪った。
木村は「北海道meijiカップ」でも首位と3打差から逆転Vを狙った経験がある。「どんな形でもいいから勝ちたい。同級生の(柏原)明日架ちゃんが優勝したり、(永峰)咲希ちゃんも勝った。若い子たちも歳上の人たちも活躍している中で、私たちの世代ももっと頑張りたい。勝ちたいです」と力強く語った。
この日、最初にショートカットを実践したのは10番から第1組でスタートした葭葉ルミ。「普通に(16番で)3打目を残すよりも短くて、150ヤードぐらい。めちゃくちゃ楽だった」と話す。葭葉が15番ホールを使ってショートカットし、2オンを狙う姿をみた後続組も、その新ルートを活用した。
イーグルを奪ったのは笠りつ子、高橋彩華、藤田さいき、金澤志奈、川﨑春花、稲垣那奈子、そして木村の7人。笠は200ヤードの2打目を7番ウッドでバンカーに入れながらもチップイン。高橋は190ヤードを4Uで打ち、カラーからおよそ5メートルをパターで沈めてイーグルを奪った。
出場66人のうち48人がバーディ以上を記録するという、まさに異例づくめとなった16番の平均スコアは「4.1970」。これは2020年「TOTOジャパンクラシック」第2ラウンドの17番(470ヤード)で記録された「4.1818」に次ぎ、ツアー史上もっとも易しいパー5の記録として7番目に位置する数値となった。
なお、最も易しいパー5は2023年「楽天スーパーレディース」第3ラウンドの4番(519ヤード)で記録された「4.1053」である。(文・高木彩音)