
国内女子下部のステップ・アップ・ツアーで2010年からスポンサーを務めてきたBPカストロール株式会社。「カストロールレディース」は古参大会の一つとしてツアーの盛り上がりと共に歩いてきた。今年で16回目の開催だったが、ツアーへの思いを同社の小石孝之名誉会長に話を聞いた。(取材/構成・小池文子)
■改めてこの16年を振り返って
「長くやったな。始めた頃は山陽新聞社さんを入れて5試合だったんですよ。昔は若手選手のための登竜門だったけど、今はシード落ちした選手たちも含めて試合の場を提供できているかな」
当初はわずか5試合しかなかったツアーだが、今季は22試合を開催予定と、レギュラーツアーを目指す選手たちの戦力アップの場として機能している。BPカストロールとスポンサー契約を結ぶ選手は15名に及び、今季3勝を挙げている佐久間朱莉や、レギュラーツアーで活躍する小林夢果もその1人だ。
特に佐久間は、今季初優勝を挙げ、現在、メルセデス・ランキング1位につける女王候補にまで成長。「契約選手でしばらく勝ちがなかったので久々でうれしかった」と、小石氏も手放しでよろこんでいる。
また、「大東建託・いい部屋ネットレディス」を3位タイで終えた福山恵梨についても「勝ってくれるに越したことはないけども、次につながるゴルフをしてほしい」と話すなど、“カストロール”のロゴをつけてプレーする選手たちの活躍を、いつも期待している。
■スタートアナウンスの経緯と裏側
カストロールレディースでは、朝の1番スタートホールで行われる選手のスタートアナウンスを小石氏自ら行い、それが今では“風物詩”になっている。
「もともとはテレビ中継もなくて、QTランキング下位の選手たちにとっては数少ない試合の機会でした。うちは無観客でやってるので、少しでも“プロっぽい”雰囲気を味わってもらいたくて。最初は遊び感覚で始めたけど、(現在ステップ・アップ・ツアーを放送する)スカイAさんの中継が始まってからも『続けてほしい』とリクエストされ、今もやっています」
無観客試合として行われる同大会で選手だけでなく、中継を見るファンも楽しみにしている。特に、契約選手へは小石氏の熱いメッセージが込められる。
昨年大会を棄権した土肥功留美は、今年の大会の初日に、小石氏から「お子さんも大きくなり、ゴルフに割ける時間が増えました。復活を目指します」というコールが贈られた。
それに対しては「おっしゃる通り。そろそろまた上を目指してやりたいと思っていたところ。会長自らがスタートで送り出してくれるのは嬉しいですよね。契約プロとして頑張りたいと思えます」と素直にうなずける。その言葉は的確。マイクを通して語りかけられる言葉のひとつひとつが選手の背中を押していることは間違いがない。
そんなスタートアナウンスは、小石氏のアドリブだという。「組の表を見ながら『次はこの子か、じゃあこの話を軽く入れよう』みたいな感じでやっています。ちょっとした裏話を加えたりして、少しでもリラックスしてもらえるように」。さらに、外国人選手の名前は“英語っぽく”と一工夫を加えるなどこだわりも見せた。それもこれも、常日頃から選手とのコミュニケーションを欠かさないことが礎になっている。
契約プロ以外にも、小石氏の紹介文でティオフしたい選手も少なくない。現状、アナウンスがあるのは1番ホールの選手のみ。ただ、同じく大会を支える同社の阿部宏憲取締役副社長 兼 大会事務局長は10番ティでのアナウンスに意欲を見せてもいる。それには会長も「うーん。できるの?(笑)」と少し不安な表情だが、来年は両ホールからのアナウンスも期待できるかもしれない。
■“灼熱大会”へのこだわり
年々夏が暑く、長くなるが、灼熱の中で行われることが同大会のポリシーにもなっている。今年は例年よりも涼しく、3日目は時折強い雨と風にも見舞われた。選手たちも口を揃えて「涼しかった」と振り返ったほどだが、この時期にこだわるのは、以下のような理由がある。
「やっぱり我々、企業としてみれば、プロアマがとにかく大事な1つのコンテンツになる。その時に雨だとゴルフをやりたくなくなる。それを考えるとベストなタイミングは梅雨明けして天候が安定している今の時期。春先は芝が茶色いから綺麗な時期でやりたいと考えると5-9月。でも後半は台風が来る確率が高い。今も昔も暑いのは変わらないし、最近は暑さ対策グッズもあるし、なにより気候に対応できるかもプロには必要」
小石氏自身もシングルプレーヤーの腕前で、この大会が1年を通して1番楽しみにしているイベントでもあるが、ビジネスマンとしてはプロアマを成功させたい。そこに参加する企業へのおもてなしも込めて、真夏のこの時期に開催しているという。
■小石名誉会長が契約選手に求めることと大会の今後
「とにかく本戦に関しては選手たちがいろんな気象条件に対応できるだけの体力面と精神面を培ってほしい。活躍はプロとして当然なんだけど、それ以外にもプロアマがある。そこで一般の人たちと接する機会があるので、そういう時の礼節をしっかり学んでいってほしいなとは思いますね」
小石氏の求めることは選手個々の活躍と、大会の成功。プロアマや前夜祭では小石氏自らが参加者の席をまわる姿も見られた。同大会は、BPカストロールが単独で共催する試合で、会場にはためくのぼりも同社のものだけ。
だからこそ、選手だけでなく、そこに参加する人たちへの細やかな気遣いができる“アットホーム”な雰囲気が作り上げられる。小石氏と契約選手、そして同社とゲスト。そういった人々の密接なコミュニケーションが、老舗大会を作り上げる、大事な要素になっている。