
日本ツアー最強の双子が同時に、今年から新たな世界に飛び込んだ。姉・明愛と妹・千怜の岩井ツインズは、米国女子ツアーに主戦場を移しルーキーとして戦っている。そして、5月「リビエラマヤオープン」で千怜が、8月「スタンダード・ポートランドクラシック」で明愛が初優勝を飾り、ツアー史上初となる双子Vの快挙を達成。そんなふたりの“今”に迫る。全3回のうち1回目。(取材/構成・笠井あかり、取材協力・ロイヤル・ミッド・サリーGC)※取材日は7月中旬
――シーズンも折り返し地点です。ここまでの手応えはいかがですか
千怜「正直、あんなに早く勝てると思っていませんでした。タイミングも良かったなと、ホッとした気持ちが大きいです。でも、早めに優勝できた分、次のメジャー優勝という目標を立てられました。そこはプラスになったと思います」
明愛「ここまで、うまくいっているほうかなと思いますね。もう来年も戦えると思うので(シード確定圏内)、そこはいいんですけど、今年中に優勝したいっていう気持ちがどうしてもあります。最近はなかなかうまくいかないんですけど、焦らず自分のペースで、チャンスを増やしていつか勝ちたいです」
※後に勝利を飾る
――同時の米進出でしたが、話し合いはあったのでしょうか
明愛「話し合いはありましたね。もともと海外で戦いたいという志向はあったので、急にではないですけど。“行きたいなー。そろそろかな”ってなる前年から、チームで“来年行こうね”って話していました」
――誰かが『絶対に海外に行くぞ!』と熱心に音頭を取るわけでもなく
千怜「それはなかったですね。気づいたらみんなが同じ方向を向いて、みんなで動いていました」
明愛「いいチームですね。日本だけじゃなくて、違う世界を見てみたい、というのもありました。もっと上に行けるんじゃないかって。その世界を見てみたい。いつになるか分からないけれど、それまでチームで上がっていければいいな」
千怜「見たことない景色へ」
――米最終予選会はどういう心境でしたか
千怜「正直、エントリーはしていたけれど、本当に行くのかな…っていう感じでした。予選会近くにならないと(実感が湧かなかった)。海外メジャーに出て、初めて、いいなって思ったんです。そういうのを(チームに)直接は言っていないけれど、口にはしていたので、エントリーを進めてくれていました。でも自分の気持ちは、“本当に行くのかな、受かったらどうするのかな”って思っていましたね」
――自分が姉だったら、妹だったら良かったのに、と思った瞬間はありますか
明愛&千怜「おお~。ないかな~」
千怜「私は妹でよかったです」
――双子でも姉感、妹感はそれぞれあるのでしょうか
千怜「ちょっとあります。いまは取材インタビューも写真撮影も、必ず先に、明愛が行くようになっているんです。そういう順番がなんとなく生まれますね。良かった~って思うときがいっぱいあります」
明愛「そうそう。しょうがないけれど、立ち位置もインタビュアーさんに近い方で、先に聞かれる。でも、ちーちゃんからしたら話す内容がなくなるよね、って思っているよ」
千怜「そうだね。でもそういうときは同じことを言っちゃいます」
明愛「あとは、送られてきた服とかで、(千怜が)これ可愛い! って言うのが自分のに入っていたら、譲っちゃう。いいよ~って。(姉として)譲らないといけないのかなあ、っていうのはありますかね」
千怜 「可愛らしいものは譲ってくれますね。タイプが違うからこそ、ずっとこういうふうに成り立っていると思うんですよね」
明愛「なるほど」
千怜「みんなに『すごく仲がいいね~』って言われるんですけど、自分たちではそこまで仲がいいという感覚はなくて。ただ、ぶつかることがあまりない。口げんかはちょっとだけするけど、タイプが違うからこそ、マッチするのかな」
――例えば、物の取り合いがないとか
明愛「あまりないですね。ほぼ自分が譲っている気がする」
千怜「例えば、服をおそろいにしたいっていう提案が出たら、私の意見をいっつも聞いてくれます。ありがたいですよね。私、変なこだわりが多くて(笑)」
明愛「でも私は、それだけこだわりがあるのがいいなーって思っています」
■岩井明愛・岩井千怜のプロフィール
2002年7月5日生まれ、埼玉県出身。2021年6月のプロテストに姉妹で合格。同年の下部ステップ・アップ・ツアーでは姉妹で2試合連続優勝を達成。レギュラーツアーでは千怜が22年「NEC軽井沢72ゴルフ」、明愛が23年「KKT杯バンテリンレディス」でツアー初優勝。24年末に米最終予選会(Qシリーズ)に挑戦し、ともに突破。今年から米ツアーを主戦場に戦う。明愛は米1勝、日本6勝。千怜は米1勝、日本8勝。