「リンクスは合うと思っていた」 山下美夢有を支えた名キャディが語る“全英制覇のワケ”

<AIG女子オープン 最終日◇3日◇ロイヤル・ポースコールGC(ウェールズ)◇6748ヤード・パー72>

山下美夢有が全英制覇を成し遂げた。今季から米国女子ツアーを主戦場に移し、ルーキーイヤーでの快挙。ここまで16試合すべてでバッグを担ぎ、サポートしてきたキャディのJBことジョン・ベネット氏も、メジャー制覇を喜んだ。
JBは男子ツアーのデービッド・スメイル(オーストラリア)や横峯さくらの専属キャディを長年勤め、経験も豊富。昨年12月の米最終予選会(Qシリーズ)に挑戦するにあたり、『キャディをしてくれないか?』と声がかかった。その前年には吉田優利の予選会突破をサポートした。

「僕は日本語が少し話せるし、英語も話せる。Qシリーズのコースも知っている。1位で通過して、『来年もキャディをお願いできないか?』と言ってもらった。“もちろん”と答えたよ」

山下は身長150センチと小柄で、飛距離が出るほうではない。メジャーセッティングは距離が長く、グリーンが硬くて短いクラブでないと止まりづらいことから、飛ばし屋が有利になりがちだが、「ここはシェブロンや全米女子プロよりも飛距離が必要ではなかった。ミユウはボールストライカ―。リンクスは合うと思っていた」とJBは話す。

「ミユウはゆったりとしたスイングの持ち主。スイングスピードがゆっくりだと、スピン量が少ない。スイングが速くてスピンが多くなったら、風の影響を受けてボールがすごく曲がる。ミユウのボールはアゲンストでも曲がらないんだ」

重い海風に負けない強い球だけでなく、「正確性」も強みだという。「このコースはリンクスだけど、ポイント、ポイントに打っていかないといけない。ミユウは195ヤードと言ったら、正確に195ヤードを打てるんだ。どれだけ長い距離でもね」。100ヤード以内はもちろんのこと、ウッドやユーティリティの長いクラブでもピンをデッドに狙っていける、その精度の高さを称賛する。

2日目に単独首位に立ち、1打のリードで最終日に入った。「ラウンドする前はちょっと緊張していたと思う。でも、その素振りを全く見せなかった。1番でパーを取って落ち着いたように見えた。ステディなスタートができたからね」。この日の最難関ホールで、ラフからのアプローチを1メートルに寄せてパー発進。前半だけで3バーディを奪い、リードをしたままサンデーバックナインに入った。

「ラウンド中はすごく落ち着いていた。きのう(3日目)は3パットを3回したけれど、パターもよかった」。13番では6メートルをカップのド真ん中から沈め、14番も2.5メートルオーバーした返しのパットを決めてパーセーブ。「この2ホールはキーポイントになった」。一度も後続に抜かれることなく逃げ切り。いつもは握手で済ませるホールアウト後のあいさつも、泣いている山下をハグで迎え、喜びを分かち合った。

山下は練習の虫でも知られている。朝8時から午後5時までコースにいて、打ち込むことも日常茶飯事の光景だ。その隣にはいつも、JBがいる。「練習もゴルフも大好き。ミユウがしたいことは何でも手伝う。僕のボスだからね(笑)」。

全英前哨戦で山下は風などでジャッジに悩んだ時は、「JBに聞くことは多い」と話していた。それだけではなく、最近では、練習場でもJBとスイングについて話し合い、ドリルをしたりする姿もしばしば。「お父さんがコーチで、テレビ電話をよくしているけれど、いつも一緒にいられるわけではない。毎週近くで見ていると、彼女のスイングやスタイルが、だんだんと分かるようになってきた」。あくまでも聞かれたことに答えるような形で、サポートに徹する。

山下の歴史的な米1勝目をサポートした。これから同じ歩幅で山下の隣を歩き、さらなる勝利を目指して支えていく。(文・笠井あかり)

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