「勝つために」代名詞ドライバー“封印” 渡邉彩香がツアー史上7人目のホステスV

<大東建託・いい部屋ネットレディス最終日◇27日◇ザ・クイーンズヒルゴルフクラブ(福岡)◇6503ヤード・パー72>

実直な31歳は、まず感謝の言葉を口にした。2打差を追いかけ、最終組の2組前から出た最終日。自己ベストにあと1打に迫る「64」をマークした。
2オンに成功した17番パー5のバーディで単独首位に立ち、最終18番パー4はピン右上2メートルにつけてとどめのバーディ。後続の結果を待つ必要はなかった。所属先の大東建託が主催する節目の第10回大会で、3年ぶりの復活V。渡邉彩香は優勝会見で、苦しかった自分のことを後回しにして、頭を下げた。

「所属契約は10年目で、大会も10回目。いいとき、悪いときの波があっても、変わらず応援してくださる方々がすごく喜んでくれて、本当にうれしい。何度も言っているけど、感謝しかない。選手として幸せです」

最終日は覚悟を決めて臨んだ。「勝つための選択」と、代名詞のドライバーはほぼ封印した。4つのパー3を除く14ホールで、ドライバーを使ったのは3ホールだけ。6つのバーディを奪ったホールのティショットは、すべて3番ウッドを握った。10メートルのイーグルパットを決めた6番パー5もティショットは3番ウッド。飛ばし屋ゆえの「飛ぶけど、曲がる」ドライバーショットとはデビュー当時から付き合ってきたが、ここ数年の曲がり幅はときに制御不能に陥っていた。

「正直言って、こんなゴルフをしていたら勝てないと思っていた。ここ1カ月くらいはずっと悩んでいたけど、それでもきのうが終わった時点で首位とは2打差。こんな状態でも勝てるということを、自分に分からせてあげたかった。だから、きょうはスプーン(3番ウッド)にしました」

3日目までのフェアウェイキープ率は33.3%(14/42)。「勝つためにはドライバーはいらない」。こだわりは捨て、泥臭く勝負に徹した。9月で32歳になる。「周りを見渡したら若い子ばかり。もうベテランだと思わざるを得ないですよね」。ドライバーの不調がすべてのクラブに伝染した2023年はメルセデス・ランキング71位に沈み、自身2度目のシード喪失を経験。埼玉栄高時代の同級生、小林悠輔さんと結婚して3年目の年、今後の人生設計を立ち止まって考え、一時は第一線から退くことも頭をよぎった。

そんなときに尊敬するツアー通算17勝(米ツアーメンバーで出場した11年ミズノクラシック含む)の上田桃子に金言を授かった。「自分はもっとやれる、という気持ちはあるのか?」「その気持ちがあるうちは絶対に強くなれるよ」。迷いは消えた。「まだ“うまくなりたい、強くなりたい”という気持ちはもちろんあった。ダンナさんも『自分の好きなようにしたらいいよ』と言ってくれました」。

暴れるドライバーショットと付き合っているうちに、いやおうなしに小技は磨かれた。今大会でのボギーはわずか2個。初日と最終日はボギーなしで回った。

3年ぶりのツアー通算6勝目。「過去の優勝は自信満々で、不安はほとんどなかった。でも、今週は本当に自信がなかったし、勝てるとも思っていなかった。やれることを続けることが自信につながっていくのかな。この1勝は今後に生きてくると思います」

30代の優勝は今季5人目。所属先が主催大会のホステスVは21、22年「富士通レディース」を制した古江彩佳以来、ツアー7人目となった。上田は昨季限りで現役を退き、今季はよく「寂しい」とこぼしていたが、もう大丈夫。「これから自分がどこを目指していくのか、どんなプレーをしていくのかが楽しみです」。まだ復活劇は序章。今度はドライバーを豪快に振り回し、完全復活を高らかに宣言する。(文・臼杵孝志)

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