よく見りゃ違う!「オスプレイ」とは似て非なるもの 米陸軍向けの「新ジャンル機」ドコが斬新? メリットは

陸上自衛隊も導入したV-22「オスプレイ」と似ているものの異なる新型機が、このたびアメリカ陸軍から正式な型式名の付与を受けました。ポイントは機体サイズと取得・運用コストのようです。

オスプレイとは似て非なる航空機

 1974年の初飛行以来、アメリカ陸軍の空中強襲能力の骨幹として運用されているUH-60「ブラックホーク」は、まさしく汎用ヘリコプターのベンチマークといえる存在です。約半世紀にわたってソマリア、アフガニスタン、イラクなど、あらゆる戦場で兵士と装備を運び、時には命を救い、戦局を支えてきました。しかし、どれほど堅牢な名機にも、世代交代の時は訪れます。

 2025年5月14日、UH-60の後継として開発中のV-280「バロー」に対し、MV-75という制式の型式が与えられました。MVとは多目的垂直離陸(Multi-Mission Vertical Takeoff)の略だそうです。

 MV-75は、陸上自衛隊も導入したV-22「オスプレイ」と同じティルトローター機であす。これは、機体両翼端に装備された大型ローターの向きを変えることで、垂直離着陸と高速飛行を両立させる機構を持つ飛行機になります。ローターが垂直位置にあるときはヘリコプターのように離着陸・ホバリングが可能で、水平すなわち前方に向いていれば飛行機のように高速かつ低燃費の巡航が行えます。

 とはいえ、MV-75とMV-22はエンジンこそ共通のものを搭載していますが、設計思想は大きく異なり、MV-22がエンジンユニットごとローターを回転させていたのに対し、MV-75ではエンジンは固定されローター部のみが角度を変える構造になっています。ちょうど中折れ式のエンジンポッドを備えているような形です。

 MV-75は、このような機構にすることで機械的な複雑さを軽減し、整備効率の向上が図られたと言います。

機体サイズ半分、コストは3分の2

 収容人員はMV-22の24名に対してMV-75は14名であり、輸送能力はおよそ半分強のといったところです。これは輸送機の延長線上にあるMV-22に対し、より小さな戦術単位での兵員・物資輸送や偵察を重視していると捉えることができるでしょう。なお、兵員の乗降場所もMV-22は胴体後部のハッチからでしたが、MV-75はそのようなものはなく、UH-60と同様、胴体側面のドアを開閉することで行います。

 具体的な性能は、巡航速度が約520km/h、航続距離が約3900kmだそう。これはUH-60の巡航速度約280km/h、航続距離約2220kmと比べ、速度・航続性能ともにほぼ2倍の数値です。単純計算では、地上部隊の投入時間が半分になり、また地上部隊の行動範囲が倍増することを意味し、同機を運用することでアメリカ陸軍は、これまでと同等の兵力でより広い範囲をカバーできるようになると言えるでしょう。

 MV-75の受領が予定されている最初の陸軍部隊は、ケンタッキー州フォートキャンベルに拠点を置く第101空挺師団です。この部隊は、ヘリコプターによる空中強襲に軸足を置いた編成を採っており、その点では適任と言えます。

 最初の納入は2028年末または2029年初頭に開始される予定で、これにより旧式化したUH-60ヘリコプターが段階的に更新される見込みです。

 よく誤解されやすいようですが、MV-75はMV-22の後継機ではありません。先述したとおりMV-75はUH-60の後継機であり、計画ではUH-60の大多数がMV-75に置き換えられる予定となっています。ただし一部のUH-60は近代化改修が施されて、今後も運用され続ける予定です。

 MV-22は高性能な反面、1機あたり7000万ドル(100億円)にも達し非常に高価という欠点を有していました。一方、MV-75は4300万ドル(60億円)程度に抑えることが計画されており、潜在的な対外輸出の可能性も考えられます。このコストの低減は、MV-22では失敗してしまったティルトローター機の世界的な普及という、新境地を開くことに繋がるかもしれません。

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