今どこ走ってるの…?新幹線「はやて」に乗った “斬新でスピード感ある“もと最速列車の不遇な半生

東北・北海道新幹線の「はやて」は、2002(平成14)年の東北新幹線八戸開業時に速達列車の名前として採用されましたが、2011(平成23)年の「はやぶさ」運行開始以降、運行本数を減らしています。そのレア列車に乗りました。

早朝・深夜の2往復だけ

 東北新幹線の速達列車として華々しく登場した「はやて」も、現在は早朝と深夜に東北・北海道新幹線を2往復するだけに減っています。今回、そのレア列車に乗りました。

「はやて」は、やや不遇な列車名です。1964(昭和39)年の東海道新幹線開業前に行われた列車名の公募でも、「ひかり」「はやぶさ」「いなづま」に次ぐ4位の人気でした。東海道本線の特急名「つばめ」「こだま」を上回る人気がありましたが、列車名としては長く採用されませんでした。

 わずかに、1960(昭和35)年からのコンテナ取扱貨物列車に命名されただけでした。スピード感がある「疾風」でありながら国鉄時代に採用されなかったのは、疾風が農作物に被害をもたらす風であったり、赤痢などの疫病の意味も持っているからのようです。

 しかし時代は下り、2002(平成14)年の東北新幹線八戸開業時に「斬新でスピード感がある」として、初めて「はやて」が採用されます。

 この時の「はやて」は人気投票19位でしたが、東北本線の特急・急行に使われてきた上位の「はつかり」「みちのく」などを抑えて採用されたことは、物議を呼びました。

 運行開始時の「はやて」は、それまで最速だった「やまびこ」の速達列車、通称「スーパーやまびこ」を改名する形で誕生しました。新鋭E2系が投入された「はやて」は、東北新幹線を代表する列車名として君臨したのです。

 しかし、栄光の期間はわずか9年でした。2011(平成23)年、E5系による「はやぶさ」が登場したからです。JR東日本は最高300km/h以上の列車を「はやぶさ」、275km/hの列車を「はやて」と定義したため、E5系の増備が進むごとに「はやて」は運行本数を減らしていきます。

 現在は最高速度が260km/hに制限されている盛岡~新函館北斗間の区間列車のみが「はやて」とされています。定期列車は、盛岡~新函館北斗間1往復(93・98号)と、新青森~新函館北斗間1往復(91・100号)のみのため、「絶滅寸前の列車名」とも言えるわけです。東北・北海道新幹線は最高速度の引き上げが発表されており、「はやて」の定義が変わらないのであれば、そう遠くはない未来に消滅することになります。

 そのようなレア列車「はやて」に今回、乗車します。筆者(安藤昌季:乗りものライター)は早朝3時に津軽海峡フェリーで青森港に到着し、「はやて91号」に乗るため新青森駅へ。5時10分の駅開場にはほっとします。

「はやて91号」は新青森6時33分発、新函館北斗行きの列車です。早朝ですが、駅弁屋は営業しており、待合室にはE5系新幹線を模したマッサージ椅子も置かれています。6時12分にE5系が入線しました。外見もサービスも「はやぶさ」と変わりありませんが、行先表示には「はやて」とあります。

早朝「はやて」は何人乗ってた?

 ほどなく側扉が開放されたので、利用状況を確認します。列車は10両編成で全車指定席。外から見て、10号車グランクラスと、9号車グリーン車は乗客ゼロ。8号車4人、7号車3人、6号車8人、5号車7人、4号車ゼロ、3号車1人、2号車2人、1号車ゼロで、合計25人でした。利用の多い号車は「えきねっと」での割引で指定されていると思われます。

 予想はしていましたが、さすがにこの時間に北海道へ渡る人は多くないのでしょう。

「はやて91号」は定刻に新青森を出発しました。最高260km/hで疾風のように走る……わけではなく、220km/h程度で流して走ります。6時46分頃、速度がさらに落ちます。窓の外を見ると、線路のレールが3本に。新中小国信号場で在来線が合流したからです。三線軌条区間は地上部だと140km/hに制限されるため、在来線特急のようです。

 6時49分、奥津軽いまべつに停車します。新幹線で最も利用が少ない駅といわれることもありますが、5人が乗車します。

 6時51分、「青函トンネルに入りました」との案内表示が客室扉上の情報表示機に流れます。全長53.85km、海面下240mを通過するなど、トンネルの基本的な情報が流れました。

 かつて青函トンネルの途中に海底駅も設置されていたので窓の外を見ますが、見つけられないまま「はやて」はトンネルを出て、北海道に上陸します。外の植生が変わったように感じられ、海峡を渡ったことを実感しました。

 7時23分、木古内に到着し、1人が乗車します。ここまで降車はゼロ人で、全員が新函館北斗を目指すようです。

 木古内を出ると、少しの区間ですが函館湾が見えたり、函館新幹線総合車両所が見えたり……としているうちに、たちまち新函館北斗です。7時35分の定刻に到着。乗客の半数程度は改札の外へ、もう半数程度は函館行き連絡列車の在来線「はこだてライナー」に乗り換えました。

「はやて91号」の1時間2分の旅は、あっという間に終わりました。新青森~新函館北斗間は148.8kmですから、停車時間を含む列車の平均速度である表定速度は144km/h。新幹線としては「のんびり」した旅でした。

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