
「二階建てトンネル」――あまり聞かない構造ですが、とある高規格道路にはもっと大規模な、「三つ目トンネル」が存在します。実は全国的にもかなり珍しい構造でした。
「二階建て」どころじゃない!「三つ目トンネル」って何だ!?
千葉の房総半島では、「二階建てトンネル」なるスポットが映えスポットとして話題になっていたりします。都市の地下はいざ知らず、地上でトンネルが上下2本並ぶような光景は珍しいのでしょう。
ところが、石川県の金沢市には、最初から「二階建て」どころか、「三つ目トンネル」と呼ばれる構造で作られた、しかも高規格道路のトンネルが存在します。
それは金沢市の山側を結ぶ、金沢外環状道路の通称「山側環状」に設けられたトンネルです。4車線道路の上下線別に設けられた“めがねトンネル”の直上に、もう一つトンネルがあることから、“三つ目トンネル”というわけです。
しかも、その上のトンネルには、本線から分岐・合流するランプ橋2本が吸い込まれるように接続しています。本線を走っていると、頭上に延びていくランプ橋の上にトンネルが見えてすぐ、その下で自身もトンネルに吸い込まれていきます。
「これ、ヘンだよね?珍しいよね…?」と同乗者も思わず漏らしましたが、調べてみると、やはり全国でも例のない構造でした。
トンネルの名称は、上のトンネルが「涌波(わくなみ)トンネル」、下のめがねトンネルが「崎浦涌波(わくなみ)トンネル」といいます。上の涌波トンネルは側道にアクセスする「涌波IC」の一部を構成するものです。
“側道”といっても、その場所は本線である崎浦涌波トンネルの“上”を走っています。そして、663mある崎浦涌波トンネルを西に抜けたところで、先ほどと同じように頭上から2本のランプ橋が本線へ合流してきます。
こちらもセットで、涌波ICはフルインターを構成しているのですが、この崎浦涌波トンネル西側の坑口上には、トンネルはありません。
なぜこのような構造なのでしょうか。
地形は「山 on 山」
この涌波ICは金沢の2大河川、浅野川と犀川を越えています。そのあいだは涌波台地と呼ばれる小高い丘になっており、その下を崎浦涌波トンネルが貫いているのです。台地の上には住宅街が広がり、下に自動車道のトンネルがあるとは思えない光景です。
ところが、この涌波台地の東側(浅野川側)にはさらに、南北方向に小立野(こだつの)台地が横たわっています。台地の東の縁にもう一つ山があるようなイメージです。その小立野台地を涌波トンネルが貫き、涌波台地と山側環状の本線をランプでつないでいます。
涌波ICの開通は2006年のこと。これによって、浅野川と犀川で隔てられた地域どうしがつながりました。そこを通過する本線だけでなく、側道でのアクセスも容易にしたのは、地域の地理概念を一変させたことでしょう。