“ほぼ東京”の駅前に立つ「巨大な空き家」がついに復活! “バブル期のデパート”そのまま三井不が買ったワケ 鉄道ファン必食グルメも上陸

東京近郊の百貨店が閉鎖後、約4年ぶりに新たな商業施設として再開しました。首都圏では入手できる店舗が限られる関西の有名駅弁を販売する店舗も進出しました。

「待ってました」 百貨店跡を再整備

 JR京浜東北線の川口駅東口に2025年5月31日、三井不動産の大型商業施設「三井ショッピングパーク ららテラス川口」が開業しました。この施設は「旧・そごう川口店」を活用したものです。そごう時代に親しまれていた施設が復活し、関西の有名駅弁の埼玉県初となる店舗も進出しました。

 吉永小百合さんが主演した映画『キューポラのある街』(1962年公開)の舞台、埼玉県川口市。名産品の鋳物とともに「顔」となっていたのが、百貨店のそごう川口店です。近くを流れる荒川の対岸に東京都がある“ほぼ東京”の駅前という一等地ながら、そごうが2021年2月末で閉鎖後は約4年間にわたって「巨大な空き家」の状態が続いていました。店舗を運営していた「そごう・西武」から施設の所有権を買い取った三井不動産は、改装を進めました。

 三井不動産がコンセプトに掲げた「『在るもので、新しく』~川口のレガシーを継承した、新たな街のランドマーク~」の通り、既存建物を活用することで建て替えるよりも工事期間を短縮し、投資額も圧縮したのが大きな特色です。同社の肥田雅和執行役員は「建物を解体し、新築する場合は3―4年かかるが、今回のリニューアルは工事期間を約10か月に短縮できた」と強調します。

 また、1991年10月にそごうグループ30店目の百貨店としてオープンした建物はバブル期に建設されただけに「取り壊すにはもったいない立派な建物で、再利用して使う方が環境にも優しい」(肥田氏)という判断も働きました。建物内の大理石を用いた柱や、外の景色を眺められるシースルータイプの展望用エレベーターも残しました。

“スピード再開”を目指した背景には、京浜東北線や国際興業の路線バスの利用者らが多く行き来する好立地の商業施設を塩漬けにしておくのはビジネスチャンスの逸失になるとの事情もあります。駅前には東京への通勤・通学が便利な地域のため周辺には高層マンションが林立しており、川口市の人口は2025年5月時点で60万8518人と、中核市では千葉県船橋市(65万568人)に次いで2番目です。

 地元住民からはそごう閉鎖で「不便になった」「明かりが消えて寂しい」と嘆く声が相次いだといいます。三井不動産グループの担当者は「日常的に必要な物でも場合によっては池袋、浦和、大宮に行かないと購入できないなど困っていた顧客がたくさんいると聞いた」と指摘します。

 それだけに「ららテラス川口」が開業した2025年5月31日には、「再開を待っていた」という住民らが押し寄せました。

おおっ!バブル期のまま! さらに関西から「駅弁の刺客」が

 筆者(大塚圭一郎:共同通信社経済部次長)は学生時代に川口市の自動車教習所に通い、そごうに立ち寄ることもありました。当時の面影や、変わった点を探るべく足を運びました。

 川口駅とペデストリアンデッキ(歩行者専用通路)で直結した3階の入り口の外壁にある「大時計」は、決まった時刻に人形が姿を現す「からくり時計」の機能が復活。入り口の大理石の柱も健在でした。一方、エレベーター乗り場のフロア表示の数字を新たに鋳物製にするなど「温故知新」と呼ぶべき空間が広がっていました。

 94店が入居し、うち8店が埼玉県初出店。そごう時代の名物だった屋上のビアガーデン跡地に進出したバーベキュー「ワイルドビーチ」の埼玉県初の店舗は、約300席を設置。5トンの白砂を敷き詰めたビーチ風の空間があり、「海なし県」ながら海岸でバーベキューを楽しんでいるような感覚を味わえます。食材付きでバーベキューを2時間半楽しめるプランは1人当たりの料金が中学生は6028円から、小学生は一律1100円です。

 一方、地下1階の食品売り場には、壺型容器に入った関西の有名駅弁「ひっぱりだこ飯」を販売する淡路屋(神戸市)が埼玉県に初出店。首都圏ではラゾーナ川崎店(川崎市)に次いで2つ目の直営店です。

 店頭には約20品目を置いており、看板商品の「ひっぱりだこ飯」は通常版(1380円)のほか、ピンク色の壺を採用したサンリオの人気キャラクター「ハローキティ」とのコラボ商品(1580円)、新幹線の923形ドクターイエローの塗装をイメージした商品(1680円)、JR西日本の山陽新幹線500系のカラーリングを施した商品(1680円)、陸上自衛隊員の迷彩服の図柄を模した壺の自衛隊版(1480円)なども用意。

 一方、JR貨物のコンテナ風の容器に入れた弁当は4種類(1580~1780円)あり、食べる前に弁当を加熱できる「あっちっち神戸のすきやきとステーキ弁当」(1580円)なども置いています。

“裏メニュー”のたこ飯が買える!?

 淡路屋は弁当を神戸の本社のほかに東京工場(東京都足立区)でも調理しており、川口店やラゾーナ川崎店には東京工場で製造した商品が届きます。常温商品の消費期限は出荷日当日です。

 気になったのは、実際のショーケースに陳列されていない「ひっぱりだこ飯」の壺などが置かれていたことです。店員の方に「これはディスプレー用ですか?」と質問すると、想定外の答えが返ってきました。

「容器が置いてある商品は基本的に購入日の3日前までに注文していただければご用意できます」

 つまり事前注文すれば、店頭にはない“裏メニュー”の弁当も買えるのです。「ひっぱりだこ飯」の神戸税関版(1680円)や、アニメ「ルパンIII世」のスピンオフ作品「LUPIN ZERO」とのコラボ商品(1580円)などの一風変わった商品も手に入ります。ただし、「用意できる種類は関西の店舗と比べると少ない」そうです。

※ ※ ※

 旧・そごう川口店は新型コロナウイルス禍前の2019年度の売上高が約153億円だったのに対し、「ららテラス」は年間売上高約170億円を目指します。不動産開発会社幹部は「建設作業員の人手不足や建設費の高騰、さらに環境負荷や廃棄物を減らす動きも背景に、今後は物件を改修しながら長寿命化する動きが広がる」と予想します。

 物件を改修して再生させた「ららテラス川口」が、そごう閉鎖後に途絶えた客足も取り戻して商業施設としても「再生」できるのか真価が問われそうです。

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