
次期潜水艦は大きく変わりそう。
「水中発射型垂直発射装置」を研究試作へ
海上自衛隊の潜水艦に搭載することが可能な、垂直誘導弾発射システム(VLS)の開発が本格化します。防衛装備庁は2025年5月29日、「水中発射型垂直発射装置の研究試作」という業務の契約希望者を選定するため、企画競争の募集要項を公示しました。
日本政府は、2022年12月に発表した「防衛力整備計画」に、VLSを搭載した潜水艦を開発することを盛り込んでいます。VLSを搭載した潜水艦は、敵の脅威圏外にある離れた位置から攻撃が可能な「スタンド・オフ防衛能力」の一翼を担うことになります。
防衛省は今度予算に、「水中発射型垂直発射装置の研究」として297億円を計上しています。今年5月には、防衛装備庁が「水中発射型極超音速誘導弾」に関する情報提供企業の募集を開始しており、音速の5倍以上と言われる高速飛しょうが可能な「極超音速誘導弾」を潜水艦に搭載することも視野に研究が進むとみられます。
現在、アメリカ、中国、ロシア、北朝鮮、韓国などがVLSを搭載した潜水艦を保有していますが、日本には存在しません。VLSを備えた潜水艦は、ミサイルを多数搭載できたり、短時間で連続発射できるメリットがある一方、大型の船体が必要になります。
防衛装備庁は、今回公示した「水中発射型垂直発射装置の研究試作」の応募に必要な参加資格として、潜水艦の建造実績があることなどを求めており、応募可能な企業はかなり限られてきます。
日本にVLSを搭載した潜水艦が配備された場合、海上自衛隊の潜水艦の運用も大きく変化する可能性が高いでしょう。現在は研究段階ですが、次期潜水艦の船体形状は「そうりゅう」や「たいげい」といった従来の艦から変わる可能性があり、どのような姿になるか注目されます。
なお、次期潜水艦をめぐっては、船型開発検討作業を防衛省から受注している川崎重工が、2023年12月にコンセプト案を公表。防衛装備庁もVLSの搭載を視野に入れた船体の構造様式について研究を行っているほか、船体の大型化を抑制し、機動力を向上させる潜水艦用の高効率電力貯蔵・供給システムについても研究を進めています。