
<全米女子オープン 3日目◇31日◇エリン・ヒルズGC(ウィスコンシン州)◇6829ヤード・パー72>
最終組でスタートした渋野日向子の第3ラウンドは、世界ランキング1位のネリー・コルダ(米国)、そして今季メジャー初戦「シェブロン選手権」を制した西郷真央とのホットなグルーピングで実現した。
「ネリーとも回れるし、こんなことはめったにない。楽しみたいと思っていました」。ネリー目当てのギャラリーが大挙して集まり、ロープの外は観客で埋め尽くされた。スタートホールでネリーの名前が呼ばれると、割れんばかりの歓声と拍手が沸き起こる。ややアウェーとも言える雰囲気の中、メジャーで、世界ランカーとの最終組は「緊張感がありました」と明かす。
スコアは2バーディ・2ボギーのイーブンパー。シビアなピン位置が設定されたこの日、アンダーパーを記録したのはわずか9人だった。フェアウェイにはアップダウンがあり、ブラインドホールも点在。加えて、アンジュレーションの強いグリーンと難しいピンポジションが、選手たちを苦しめた。
そうともなれば組の進行も遅れ、スタート直後の2番ホールから早くも“待ち”の時間が発生。現地時間午前11時40分のスタートからホールアウトは午後5時50分ごろ。およそ6時間の長丁場となった。
「長かったですよね」と苦笑いを浮かべつつも、「ピンポジションがすごく難しかったので、それくらいかかるし、自分も(時間が)かかると思うくらいの難しさだった」と想定の範囲内だった。「待ちの間は、“ぽけー”っとしていた」と冗談めかし、試合のリズムに大きな影響はなかったという。
終盤の16番パー3ではティショットをダフり、つま先下がりのラフへ。「“おダフり”しました。私は今週おダフりがお友達という感じなので」。だが、そこから奥の傾斜を利用した2打目で4メートルに寄せ、見事にパーセーブ。初日も5番パー4でティショットをダフるなどミスもありつつ、粘り強く耐えるゴルフを展開している。
昨年大会では単独2位に入った。再び優勝争いの渦中にいる渋野は、「楽しみにしないと」と笑顔を見せつつも、内心はやはり高ぶっている。「最後も緊張しちゃって」と明かしたのは、最終ホールでの約1メートルのパット。最終日に向けて大事な一打と分かっているだけに、自然と力も入った。
19年「AIG女子オープン」(全英)以来のメジャー2勝目へ。高まる鼓動を抱えながらも、「食べて、寝て、食べます」と、“シブコ節”は健在。最後は「(外からも応援)お願いします(笑)」と報道陣にも笑顔を見せて、会場を後にした。(文・齊藤啓介)