
<全米女子オープン 2日目◇30日◇エリン・ヒルズGC(ウィスコンシン州)◇6829ヤード・パー72>
今年の世界最高峰の舞台には日本勢21人が出場。その中には、アマチュアの17歳・長澤愛羅(ルネサンス高)と22歳の木村葉月の姿もあった。これからプロテストも控える2人。長澤にとっては初挑戦、木村は5度目の挑戦となる。今大会は、結果はともに予選落ちに終わったが、ここで得た確かな「手応え」と「課題」。その2人の目に、“全米女子オープン”という舞台はどのように映ったのだろうか?
■プロ一家に育つ長澤が感じた“現在地”
山梨県身延町出身の長澤は、7歳からゴルフを始めた。叔父にプロゴルファーの長澤稔、奨という2人を持つ“プロ一家”に育った。昨年にはナショナルチーム入りも果たし、今年3月にはベトナムで開催された「アジアパシフィック女子アマチュア選手権」に出場、33位という成績を収めている。
千葉県の房総CCで行われた最終予選会にて、最後の1枠を争うプレーオフを制した。ナショナルチームということもあり、海外でのゴルフ経験も豊富であるが、「今までプレーしたことのない難しさ」とリンクスのような性格を持ち合わせるコース、そしてメジャーならではの距離のあるセッティングに頭を悩ませた。
第1ラウンドは「76」、第2ラウンドは「78」と、ともにバーディもあるがそれ以上にボギーを叩く苦しい展開に。「調子がよくないというのもありますが、スコアが全然まとまらず、技術が足りないと思いました」と、この結果に悔しさをにじませた。
この大会を終えると、すぐにナショナルチームの合宿に参加。さらに6月には日本ツアー「宮里藍 サントリーレディス」のマンデートーナメント、そして「日本女子アマチュアゴルフ選手権競技」に出場と、毎週のように試合が続くハードなスケジュールをこなす。
「自分のレベルが分かります」。今大会に出場したからこそ分かった今の“現在地”。プロテスト合格に向けて「一発合格したいとずっと思っています」と、強い意志を見せる。全米女子オープンは、新たな課題が明確になったことこそ、大きな収穫になったはずだ。
■突然のチャンスを手にした木村は、“楽しむ”気持ちで臨んだメジャー
そして、予選会でプレーオフを戦った末に補欠となっていたが、思いがけず“繰り上げ出場”の連絡が舞い込んできたのが木村だった。
その知らせはメールで届いたという。「びっくりしました。和訳(機能)すると、ちょっと変な日本語になるじゃないですか。だから本当に出られるのかな」と、半信半疑で画面を見つめていたという。想像を超えた舞台に立てると知ったとき、緊張よりも「楽しみ」が勝った。そして「スポンサーさんだったり、スポットでサポートしてくれた方もいて、その方たちのおかげで来られた」と感謝を胸にアメリカの地を踏んだ。
大会前の練習ラウンドでは、「写真をいっぱい撮って」と、初めての大舞台に心躍らせ、思い出も残した。そして迎えた本戦初日。ティグラウンドに立つと、不安が胸をよぎる。「一日どうなるのかな」と。
初日のスコアはバーディなしの「80」。「距離も長いし、グリーンもスピードが合わずに慣れなくて。(傾斜から)落ち過ぎちゃうこともあった」と、長く厳しいコース設定とグリーンに苦しめられた。「バーディが欲しいです」と、切実な思いもい口にしていた。
午後スタートとなった第2ラウンドもボギーが続き、さらに悪天候により途中で中断。プレーは3日目へ持ち越された。長い第2ラウンドとなったが、16番ホールのショートでようやく念願の初バーディも来た。現地キャディの仲間も応援に駆け付けたようで、「バーディを取った時は、歓声をくれてうれしかった」と、異国の地での温かな声援に心がほぐれた。
第2ラウンドは「76」。トータル12オーバーで予選通過とはならなかったが、得たものは大きかった。「全然慣れなかった。対応力が無かった」と、特にアンジュレーションの強いグリーンに課題を残したこの2日間。同時に、「ここに来ないとできないこと。すごくプラスになった」と、収穫も多かったことを実感する。
「今回、アメリカに来て視野が広がりました。アプローチがすごく良かったので、そこは収穫です」。海外メジャーで戦った経験は、プロテスト合格へ大きな足掛かりになったはずだ。(文・齊藤啓介)