
<リゾートトラスト レディス 2日目◇30日◇グランディ鳴門ゴルフクラブ36(徳島県)◇6585ヤード・パー72>
ティイングエリアを前に出し、通常の340ヤードから295ヤードに設定された池越えの14番。多くの選手がドライバーを握り、ワンオンに挑んだ短いパー4で、プロ12年目の山城奈々が手にしたクラブは8番アイアンだった。
「刻みました。距離的には届くけど、これまで無理をして、いいことがなかったので。刻んでバーディチャンスにつけるのが、一番いいかなと思いました」
残り105ヤードの2打目は52度のウェッジで打った。ボールはピン左手前6メートルにオン。長いバーディパットを沈め、思惑通りにスコアを伸ばした31歳は「いい感じでゴルフを組み立てられている。今はそこを一番に考えています。スコアにつながれば、自信もつくし、もっといいゴルフができると思う」と満足そうにうなずいた。
初日は4バーディを奪い、「68」で8位。ボギーなしラウンドは2022年8月の「NEC軽井沢72」最終日以来だった。2日目はティショットが左バンカーにつかまった15番をダブルボギーとしたが、スコアを落としたのはこのホールだけ。前半のアウトで3バーディ、後半はパープレーで耐えて、トータル7アンダーの2位タイまで浮上した。
TP単年登録(現在は制度廃止)した14年1月1日付でJLPGA(日本女子プロゴルフ協会)に入会し、プロとなった。同年7月にはプロテストに合格。その年は30試合に出て、「NEC軽井沢72」で4位、「ヨネックスレディス」で5位に入るなど、シードは逃したが、賞金ランキング54位と上々のルーキーイヤーだった。常にドライバーを振り回し、OB、ダボ、トリプルボギーもあるが、バーディも量産する。“フルスイング”が生み出す飛距離が最大の武器だった。
だが、プロ1年目の成績がここまでのキャリアハイになっている。イップス気味となったドライバーの不調から極度の不振に陥り、18、19年は1試合に出ただけ。統合シーズンとなった20-21年は46試合に出場し、3度のトップ10入りはあったが、16試合で予選落ち。メルセデス・ランキング(MR)は63位に終わった。出場機会が激減した23年と24年の獲得賞金は0円。下部のステップ・アップ・ツアーが主戦場になっていた。
「ドライバーは9年前くらいから悩み始めました。最初のころはそれでも振っていたけど、もっと曲がるようになった。フェアウェイウッドやユーティリティをティショットで使ったこともあるけど、それも怖くて振れなくなった。ステップでは全部アイアンで打ったこともあります。それで優勝争いをしたこともあったんですよ」
試行錯誤の末に“ブンブン丸”を卒業し、安全運転に徹することを心に決めた。昨年の最終QTは19位に入り、今季前半戦の出場権を獲得。5月の国内メジャー初戦「ワールドレディスサロンパスカップ」は初めて最終日最終組で回り、6位になった。MRは現在36位。長いトンネルの出口がようやく見えてきた。
「明日も変わらずにいきます。ティショットは気持ちよく打てているし、セカンドもいい感じ。攻めたい気持ちは抑えていきたい」
JLPGAの公式スタッツに初めてドライビングディスタンスが載った17年は252.45ヤードで5位だった。今週の2日間の平均は237ヤード。抑えた分は85.7%(24/28)というフェアウェイキープ率が十二分に補い、「最も重視している」というパーオン率を高め、チャンスをつくり出している。
プロデビューから164試合目での初Vがかかった決勝ラウンドの2日間。1988年のツアー制度施行後、入会&TP登録日から4169日で初優勝を果たせば、ツアー史上4番目のスロー達成となる。
3月の「アクサレディス」では32歳の工藤遥加がツアー史上2番目に遅い4981日で初優勝を飾った。「遥加さんも同じように苦しんでいた時期があった。すごく刺激になっています」。ステップでは16年に2勝、昨年も2勝をマークした。勝ち方は知っている31歳が、今週は歓喜の瞬間を迎える。(文・臼杵孝志)