
「人とくるまのテクノロジー展2025」の会場で、事故などを想定した衝突テストなどでよく見かけるダミー人形が展示されていました。映像などで見かけることが多いですが、どのようなものなのでしょうか。
人知れず人間を安全を守っている人形たち
横浜市のパシフィコ横浜で2025年5月21日から23日まで行われた「人とくるまのテクノロジー展 2025」の会場で、かなり目立つ物が展示されていました。事故などを想定した衝突テストなどでよく見かけるダミー人形です。クルマメーカーなどのPR動画などには度々登場する人形ではありますが、人間の代わりをしているというだけで、そのこと以外はあまりよく知りません、どのような構造なのでしょうか。
ダミー人形を展示していたのはヒューマネティクス・イノベーティブ・ソリューションズ・ジャパンという会社で、日本国内のダミー人形のシェアでは約80%を誇る業界トップ企業です。親会社のヒューマネティクス・イノベーティブ・ソリューションズも欧米では有数のダミー人形製造企業になります。
ブースの目立つ位置に展示されていた「THOR 50th Male(次世代型 前突成人男性」は、約10年前から同社が販売している最新タイプです。10年というと古い印象を受けるかもしれませんが、ブースの担当者によると、ダミー人形は20~30年かけて置き換わるものとのことで、十分最新型にあたります。ちなみにダミー人形は性別もわかれており、「同じタイプの女性型に関しては現在開発中です」とのこと。
新型の特徴としては、センサーなどを増やし、肋骨の構造がより複雑になっているところだといいます。なぜ胸部に細かいセンサーが必要かというと、衝突の際は均等な圧力で物に当たるわけではないからです。また、「シートベルトが当たっている部分とそうでない部分のダメージの違いも分かるようになりました」と担当者は話します。
このように、ダミー人形には衝突時にダメージを計測するセンサーが詰まっており、人形であると同時に“測定機器”でもあるのです。そのため価格も、今回ブースで展示されていた男性型は約1億円。しかも最近は材料費の高騰などでさらに価格が高くなっているようです。
そして女性型は、男性型よりもさらに高く約2億円からとのこと。これは、体形的に測定する場所が男性型よりも多いことが理由とのことです。
ほかにも子ども用ダミー人形や、側突用、後突用といったぶつかる場所の用途別に各人形があるほか、航空用のモデルも存在しており、全部並べるとしたらブースに入り切らないような数になります。さらに、脚部だけの衝撃やダメージを調査する「脚部インパクター」なども作られています。
もちろん、衝突実験により壊れることもしばしばあるとのこと。その場合、製造元である同社が修理を無償で担当することも多いといいますが「たとえば時速200キロ以上でぶつけるといった“仕様にない”ぶつけ方をしなかった場合に限ります」と話していました。