トップ選手の海外進出で生み出された影? 国内女子ツアーの世界ランキングptに生じてる“異変”【現地記者コラム】

日本ツアーメンバーが海外メジャーの出場権を獲得するには、世界ランキングが重要になる。19日付の世界ランキングで「全米女子オープン」、「KPMG全米女子プロ選手権」の出場権獲得者がひとまず確定。全米女子は75位まで、全米女子プロは70位までに、資格が付与された。
先週行われた国内女子ツアー「Sky RKBレディスクラシック」は、全米切符獲得のラストチャンスの試合でもあった。開幕前にランク81位だった安田祐香、82位の佐久間朱莉、93位の菅楓華は、優勝すれば滑り込める見込みも。だが、佐久間は大会6位でランク81位、安田は38位でランク83位、菅は6位でランク90位となり、惜しくも叶わなかった。

とりわけ、佐久間は4月に行われた日本地区最終予選会を見送り、ランキングでの全米出場を目指していることを明言。3日間の戦いを終え、その目標が叶わないことが確実になると、「この大会にかける思いが強くて、うまくメンタルのコントロールができずにプレッシャーをかけてしまった」と話し、涙も見せていた。それほどの強い思いを持って過ごしていた数カ月だった。

ここで、世界ランキングの仕組みをおさらいしたい。正式名称は「ロレックス女子世界ゴルフランキング」で、過去2年間(104週)の大会で得たポイント(pt)を、出場大会数で(35に満たない場合は35で)割った平均ポイントで順位付けされる。直近の活躍をより評価するため、直近13週の獲得ポイントはそのまま、14週目からは1週ごとに1/92をかけた数値がポイントとして加算されていく。

メジャー大会の固定ポイントを除いて、各大会のレベルと獲得ポイントはフィールドの強さ(Strength of the field、略称:SOF)によって変動する。SOFは大会出場選手の世界ランキングとツアーランキングによって算出され、すなわち、「実力のある選手が多く参加するほどSOFが高くなりポイント獲得も多い」ということになる。

Sky RKBクラシックのSOFは128.75で、優勝は16.5pt。同週は米女子ツアーが空き週だったため、前週の「ミズホ・アメリカズオープン」と比較するならば、優勝は62ptだった。

世界ランキングを上げるためには、SOFが大きい大会で上位に入り、ビッグポイントを獲得する必要がある。だが、今年の日本ツアーでは、“昨年より獲得ポイントが少ない”という現象が起きている。

岩井千怜が制した、昨年の「RKB×三井松島レディス」は優勝19ptだった。2位タイだった藤田さいき、山下美夢有はそれぞれ9.5ptを獲得。だが今年は、優勝の神谷そらが16.5pt、2位タイの金澤志奈、小祝さくらは8.25ptと昨年を下回った。

今季ここまでを振り返ってみても、昨年を上回った試合は「富士フイルム・スタジオアリス女子オープン」の1試合のみ。ただこれは、米ツアーでルーキー優勝を挙げた竹田麗央が凱旋し、岩井ツインズもフィールドにいたから、といえる。さらに、4月には「フジサンケイレディス」の中止もあり、ポイント獲得の機会も減ってしまった。

この現象が起きている理由として考えられるのが、実力ある選手が日本ツアーに少なくなった=米ツアーへ進出していること。年間女王に輝いた竹田をはじめ、オリンピアンの山下、岩井明愛、千怜、原英莉花が主戦場を海外に移した。現在の世界ランクを見ると、上位8人が米ツアー組だ。これによって日本ツアー全体のSOFが小さくなったことが分かる。

直近13週のポイントはすべて加算されるが、それ以前は古くなるにつれてポイントの加算が減り、104週前のものは獲得ポイントの0.98%(91/92)しか付与されない。そのため、直近13週の活躍もとても重要になる。もし、今年が昨年と同等のフィールドで、フジサンケイが開催されていたら…。すべては“たら・れば”になってしまうのだが、計算すると、佐久間がフジサンケイでトップ5に入っていればランキング75位に入っていた可能性がある。

日本ツアー選手の海外進出が目覚ましく、さらに海外で活躍している姿には感心する。その一方で、日本ツアーでのポイント獲得減少は、それによって生み出されている小さな影なのかもしれない。(文・笠井あかり)

【今季ここまでの優勝pt(カッコ内は昨年大会)】
ダイキンオーキッドレディス 17.50(18.50)
Vポイント×SMBC 18.50(19.00)
アクサレディス 16.50(18.50)
ヤマハレディースオープン葛城 16.00(18.50)
富士フイルム・スタジオアリス 19.00(18.00)
KKT杯バンテリンレディス 16.5(19.00)
フジサンケイレディス 中止(16.50)
パナソニックオープン 17.00(17.00)
ワールドレディスサロンパスカップ 18.00(19.50)
Sky RKBレディス 16.50(19.00)

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