空の戦いが一変!?「ステルス空中給油機」米軍の次世代プロジェクト 睨むのは中国との将来戦か

現代戦において作戦遂行上、不可欠な存在となっている空中給油機。「空飛ぶガソリンスタンド」と揶揄される同機について、アメリカ空軍ではステルス性を取り入れた次世代機を構想しています。長所と短所の双方を見てみました。

後方空域すら危険になりつつある現代の航空戦

 戦闘機がいかに高性能であろうと、空中給油がなければ、現代戦において広域の作戦行動を行うことは難しいと言えるでしょう。そのため、現代の空軍において空中給油機の数と、そのノウハウがどれほどあるかはかなり重要な要素を占めます。

 ゆえに、空中給油機は、しばしば「空飛ぶガソリンスタンド」と揶揄されますが、その実、航空戦力の持続性を確保し、作戦行動半径を飛躍的に拡張するという意味で、空軍の戦略的中核に位置する存在であることは間違いありません。

 とりわけアメリカ空軍にとっては、空中給油能力は後方支援的な要素に留まらず、地球上のあらゆる地点に迅速に空中戦力を展開する、いうなれば国家戦略の根幹を成す要素であり、実際、その能力があるからこそ、アメリカは世界で唯一「真の遠征型空軍」を維持できているとも言えるでしょう。冷戦期から今日に至るまで、アメリカの戦略的プレゼンスの陰には常にKC-135やKC-46といった空中給油機の姿があります。

 ただ、その存在は決して盤石ではありません。最大の問題は、空中給油機が「無防備」な存在であるという点です。空中給油任務は基本的に戦闘空域の後方、すなわち比較的安全なエリアで行われる前提で成立してきました。

 しかし、21世紀の戦場環境は、この前提を根底から揺るがしつつあります。高度に発達した地対空ミサイルシステム、探知能力を向上させた敵レーダー網、長射程の空対空ミサイルを持った戦闘機などにより、今では「後方空域」すら安全とは言えなくなりつつあります。

 このような背景のもと、注目を集めているのがアメリカ空軍において検討中の「次世代空中給油機(Next Generation Air-refueling System)」構想です。略して「NGAS」と呼ばれる本プログラムは、従来の給油機とは一線を画す、新しい概念に基づいた機体として構想されています。その最大の特徴は、ステルス性を持つことです。

ステルス空中給油機があると戦い方も一変するか?

 NGASがレーダー反射断面積(RCS)を極小化し、敵のセンサー網に捕捉されにくい「ステルス性」を獲得することに成功すれば、空中給油機の生残性は劇的に変わるでしょう。F-22やF-35といったステルス戦闘機と同様に、より前線に近い位置まで進出しても安全に給油を行うことが可能になるため、これまで制限のあった長距離の侵攻作戦や深部打撃の柔軟性が格段に向上します。

 実際、中国人民解放軍のA2AD(接近阻止・領域拒否)戦略は、アメリカ軍の空中給油機を「可能な限り前方で止める」ことに重点を置いていると考えられます。これに対抗するには、給油機自体が被探知性を抑え、ステルス戦闘機の進出に「追随」できる能力を持たねばなりません。NGASは、まさにその「追随型給油機」の最有力として期待されています。

 とはいえ、NGASには課題も山積みです。最大のネックはそのコストです。現在のKC-46Aのように、民間機を改造するやり方では量産効果を得やすく、調達単価を抑えることが可能です。しかし、NGASのような専用設計、しかもステルス性を取り入れた機体構造となると、コストは天井知らずに跳ね上がる可能性があります。B-2爆撃機やF-22戦闘機がたどった「少数ゆえの高価格」の轍を踏まない保証はどこにもありません。

 現時点で、NGASはまだ構想段階のため仕様もいまだ不明瞭で、プロトタイプすら存在しません。ですが、21世紀の空中戦力が「分散・秘匿・即応」の方向へ進化していくとするならば、空中給油機にも同様の進化が求められるのは必然と言えるでしょう。

 ただ、もしNGASが実用化されればアメリカ空軍の将来が一変するのは確かです。それだけの可能性を秘めていることだけは間違いありません。

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