
沖縄県にある在日米軍の嘉手納基地から固有の戦闘機がついになくなりました。長らく配備されていたのはF-15C「イーグル」戦闘機です。今後、アメリカ空軍はどうするのでしょうか。実はすでに新型機の配備が決まっているようです。
冷戦中の最盛期にはF-15「イーグル」が50機も
沖縄県にあるアメリカ空軍の嘉手納基地で2025年1月24日、ひとつの時代が幕を閉じました。同空軍の第18航空団に所属するF-15C「イーグル」戦闘機が、最後の飛行任務を終え45年の歴史に終止符を打ったのです。
1980年、嘉手納に最初のF-15が展開した当時、東アジアは米ソの睨み合いで緊張がみなぎっていました。F-15は、当時その圧倒的な空対空能力で、あらゆる脅威に対し「制空権を奪い、維持するための新戦力」として、キーポイントと言える沖縄に配置されたのです。その後、嘉手納のF-15は数を増やし、最盛期には常時50機が駐留し、その存在そのものが抑止力となっていました。
F-15Cの設計思想は、空対空戦闘における絶対的優位にあります。速度、上昇力、航続距離、高機能なレーダー、いずれも当時としては飛び抜けた性能を誇り「空の覇者」の名をほしいままにしていました。その後も、湾岸戦争や中東での各種紛争において、空戦で無敗の実績を重ね、その名声は揺るぎないものとなっていきます。
F-15は現在においても依然として強力な戦闘機の1つですが、老朽化は否めず、更新が避けられないものとなっていました。嘉手納からF-15Cが撤退した後、そのギャップを埋めるべく、アメリカ空軍はF-22「ラプター」、F-35A「ライトニングII」、そしてF-16「ファイティングファルコン」をローテーションで暫定配備します。
これらの機体は、いずれも最新鋭のセンサーとネットワーク能力を備え、多様な任務に柔軟に対応できますが、とはいえ、ローテーション配備はあくまで暫定的な措置であり、常設の戦闘航空団と比べて即応性や持続力に劣るのは否定できません。
その空白を埋め、次代の“空の盾”となるべく運用を開始するのが、F-15EX「イーグルII」です。嘉手納基地には合計36機が常駐する予定となっています。
日本駐留のアメリカ空軍の本命は三沢か?
F-15EXは、見た目こそ旧来のF-15「イーグル」とほぼ変わりませんが、内部はまったくの別物です。最新のミッション・コンピューター、先進的な電子戦システム、フライ・バイ・ワイヤを駆使した最新の操縦装置、高性能なデータリンク能力、拡張された燃料タンクなどなど。これらを融合することで、F-15EXは従来のF-15Cとは全くかけ離れた高性能マルチロールファイター(多用途戦闘機)として生まれ変わっています。
特筆すべきは、その搭載能力です。F-15EXは、空対空ミサイルとともに、精密誘導兵器や巡航ミサイルなど多様な空対地兵器を携行可能であることから、その能力は制空戦闘にとどまりません。戦場のあらゆる局面に対応できる、「空中の万能戦士」としての役割を期待でき、配備されれば第18航空団の作戦能力は大幅に拡張されることになるでしょう。
とはいえ、嘉手納基地には構造的な課題も残されています。その最たるものが、コンクリート製の堅牢なシェルター「掩体」の不足です。中国によるミサイル飽和攻撃などによって基地全体が壊滅的打撃を受けるリスクは無視できません。台湾周辺の緊張感が増す中で、それは問題点となり得ます。
滑走路や誘導路は比較的短時間で復旧できますが、失われた航空機の補充は困難な可能性が高いです。そのため、厳しい見方をすれば、F-15EXは有事の際の戦力としてはほとんど期待することができないかもしれません。実は在日アメリカ空軍の本命は、中国から攻撃を受けにくい青森県に存在し、かつ掩体で防護されている三沢基地のF-35(配備予定)であると言うこともできるでしょう。
F-15EXの嘉手納配備は、2026年3月からと見込まれています。F-15CからF-15EXへの交代は老兵の退場に続く、新たな歴史の始まりなのは間違いありませんが、突発的な有事における脆弱性を抱えたままというのはしばらく変わりそうにありません。そのような不安要素を残したまま、嘉手納基地の抑止力強化と再構築は行われることになりそうです。