
NEXCO中日本のETCシステム障害は応急復旧しましたが、同社は障害発生時の開放措置を“無料”とせず、後日の清算を改めて求めています。どんなに危険や混乱が生じても、“無料開放”とはならない理由があります。
ETCシステム障害は「払わなくていい場面」ではない
NEXCO中日本のETCシステムダウンは、発生から37時間30分ぶりに応急復旧し、運用を再開しました。その間、同社は料金所の開閉バーを開放し、ETC専用レーンでの通行を容認しました。影響を受けた利用車からすると、混乱を避けるために無料開放したようにも思えますが、手続きを怠ると“不正通行”とみなされかねません。
今回のシステム障害では、利用者に出口料金所のETC専用レーンの開閉バーを開放して、後日清算に切り替えましたが、NEXCO中日本によると、届出を行ったETC車は「約2万4000台(4月8日22時時点)」。トラブルのあった約38時間のETC利用台数は概算で約92万台。決済が成立しない車両の割合は不明ですが、届出は低調であることがわかります。
同社は2025年4月9日の定例会見を、ETCシステム障害に関する説明会見に切り替えて実施。中井俊雄保全企画本部長が、引き続き利用者への対応を求めています。
「弊社の不具合で後日課金をお願いしていることは、申し訳なく思っています。引き続きお申し出、お支払いをお願いしています」
さらに、こう話しました。
「一部報道で、届出の期限について少し短い数字(※2日以内)が出ていましたが、何らかの事情で決済できない通常の対応による書面をそのまま使っていました。特に期限によらず、お支払いをお願いします。銀行振込の手数料についても、弊社が負担いたします」
システムダウンは、2025年7月に予定する新しい深夜割引に対応するためのシステム改修の中で発生しました。運転者の責任でない通行障害による、いわゆる“払い戻し”は、高速道路各社でも供用約款で次のように定めています。
《(会社の責任)高速道路の設置又は管理に瑕疵があったために利用者に損害を生じたときは、会社は、これを賠償する》(第10条)
しかし、縄田 正社長は次のような解釈を示しました。
「供用約款の中には、払わなくていい場合が列挙されていますが、今回のようないわゆるシステムの不具合による時に払わなくていい、という規定にはなっていません」
確かに約款には「高速道路の設置又は管理に瑕疵がない場合」が列挙されていますが、システム障害について免責の文言はありません。
「約款に書かれているのは、道路の破損など物理的な現象だけ」という関係者の解説もありますが、都市部のETCの専用レーン化を今年度中に完成させる目標を立てながら、約款には規定しない、というのは今後の問題とされそうです。
「申し訳ございませんが、お支払いをお願いします」
高速道路会社の料金請求の仕組みは、ETC専用化を見据えて、運転者にもクルマの所有者にも請求できる万全の仕組みができています。
不正通行による料金の請求を容易にするため、道路整備特別措置法は、免れた通行料金と割増金(免れた通行料金の2倍に相当する額)を合わせた通常の3倍となる料金の徴収を規定しています。さらに、不正通行者には、30万円以下の罰金が科せられます。支払い義務は運転者だけでなく、車両の所有者にも及ぶことも明確化されています。この規定は放置駐車の行政制裁金に準ずる厳格な規定です。
届出をしないままで放置することは、通行料金不払いによる不正通行になるのでしょうか。佐々木拓次営業管理担当部長は話します。
「詳しい中身は申し上げられませんが、走行状態などを把握するように努力はしているところでございます。今回、私どもの原因でETC走行ができなくなっていますが、お申し出いただいて通行料金のお支払いをお願いいたします」
システム障害は不測の渋滞だけでなく、発生した料金所付近で、渋滞列に追突するなどの交通事故が「9件発生した」と、NEXCO中日本は話します。出口料金所の一時的な開閉バーの開放は、こうした混乱を収束させるためでしたが、それでも無料開放にはならないというのが同社の主張です。
システムダウンから復旧までの対応について当初、同社は利用車に対して、料金収受員のいる一般レーン(有人レーン)での通行を求めました。発生同日14時頃からは、渋滞緩和や渋滞による事故の発生を抑えるため、ETC専用レーンを通行することを正式に認めました。この判断について、縄田社長は次のように振り返ります。
「お客様に情報不足のまま大きな渋滞を引き起こしてしまった。そこを解消しつつ、料金徴収との兼ね合いをどのようにしていくかの問題だった」
さらに、混乱の責任については、次のように述べています。
「とるべきは原因究明、再発防止。広域的なシステム障害のマニュアルができてなかったことは大きな反省点。その構築が責任の取り方だと思う」