「俺のクルマ、いつか別の色にしてみたい」 憧れの“オールペン”知っておくべき“代償”とは?

自分のクルマを自分好みの色に塗装するカスタムが「オールペン」。しかし、そこには費用や塗装色の指定や仕上がりなどについて、さまざまな秘密や落とし穴があるといいます。そこで、プロの板金塗装業者さんにいろいろお話を伺いました。

オールペンの費用は「どこまでこだわるか」と「業者の環境」で大きく差が出る

「このクルマに一生乗る気でいる」「だからこそいつかは別の色に塗り替えてみたい」……こだわりを持って乗っているクルマであるからこそ思い描くオールベン。しかし、そこそこ熱心なクルマ好きな人でも、オールペンに至る板金塗装の意外な秘密や落とし穴までをよく知る人はそう多くないようにも思います。

 そこで、自身もクルマやバイクの外装やペインティングが好きで、自ら板金塗装業を営むようになったという都内の業者の代表に、オールペンにまつわるそんな意外な秘密や落とし穴を4つ教えてもらいました。

 代表によれば、一口にオールペンと言っても、「どこまでこだわって塗装するか」で費用はだいぶ変わってくると言います。

「たとえば、外観だけを塗る場合は最も安くて何十万円かで済みますが、この場合、クルマの内側の部分やエンジンルームは前の塗装が残る格好になります。これをどう捉えるかはオーダーする人のこだわり方によります」(板金塗装業者代表)

 いやいや、「内側もエンジンルームも全部新色にして欲しいんです」と思うかもしれません。しかし、「全パーツを外して、ボディをドンガラ(素っ裸)にした上でイチから塗装をし直すので、数百万円はかかります」とのこと。

「たとえばハイエースのオールペンの場合、10枚くらいあるガラスを外すのも専門のガラス屋さんにオーダーしなければダメで、こういった手間暇や費用を考えると、丸ごと塗り直すには相当な費用がかかるのです」(板金塗装業者代表)

「アースカラーにして車高上げた中古車」とかあるじゃないですか

 もっとも、1台数千万円もする超高級車をオールペンするのであれば、そこまでこだわってしたほうが良いとは思いますが、一般的なクルマではバラさずに何十万円かで済ませるケースが多いのではないかとも代表は言います。

「ちなみに、たまに旧車の中古車を『オールペンして売っています』といった販売業者さんがいますが、たいていは一番安いオールペンの方法でやっているはずです。こだわればこだわるほど、最終的な上代価格に乗ってきてしまいますからね」(板金塗装業者代表)

 また、その費用は、同じ工程のオールペンであったともしても業者の環境によって価格が変わってくる傾向があるとも。

「例えば、地方で自前の土地の広い工場があって、運営コストが都会ほどかからない業者であれば、その費用が安くなることはあるかもしれません。ただ、やはり大事なクルマのオールペンですから、“すぐに駆けつけられるような場所”でオーダーするのが一番だとも思います」(板金塗装業者代表)

新車をオールペンするのは「絶対おすすめしない」そのワケは?

 そして、顕著な「オールペンあるある」として挙げられるのが、「オーナーがイメージしていた色と違う感じに仕上がってしまう」というもの。

「人間の目ってやっぱり勝手なんですよ(笑)。例えば、自分のハイエースを『こんな色にして欲しい』と、あるセダン車のボディカラーを見本として持ってきたとします。でも、そのセダン車の色をそのままハイエースに塗っても、必ずそういうイメージに近づくとは限らないんです。

 クルマのカタチ、塗装面積、そして肝心の指定色によってイメージは大きく変わるものなので、この辺の事情や、指定色そのもののインクなどについても、受注前の打ち合わせで念入りに話をさせていただきます」(板金塗装業者代表)

 また、聞いて最も驚いたのがオールペンをすると「事故車扱い」になってしまうということ。高額な費用をかけて塗り直したとしても、リセールする際には、このオールペンが原因で「売りにくい」「値落ちしてしまう」ことが往々にあるようです。

「中古車オークションって、オールペン車の出品が少ないんです。この大きな理由は一度でもオールペンをしたクルマっていわゆる『修復歴アリ』、つまり『事故車扱い』になるからなんです。

 たまに、新車で買ったクルマをいきなり『オールペンしてください』とオーダーされることがいるんですけど、僕らからすると『せっかく新車なのに、良いんですか?』と一応説明をさせていただくようにしています。途中で作業中止になったり、トラブルになるのを避けるためにも。

 もちろん、旧車とか乗り続けたいクルマをオールペンして、さらにカッコ良くしたい、かわいくしたいっていう場合はわかるんですけど、新車はできればオールペンせず、しばらくそのまま乗り続けて、その色に飽きたところで、ようやく塗り替えるのが良いと思います」(板金塗装業者代表)

「どうしてその色に!」 塗装業者が気になる色指定も

 冒頭でも触れた通り、元々がクルマやバイクの外装ペインティングなどが好きだった
板金塗装業者の代表。オールペンのオーダーを受けた際、基本はその要望通りに仕上げるものの、中には「どうしてこの色に!」と正直思ってしまうことも、ままあるそうです。

「『僕のセンスが必ず正しい!』というわけではないですよ。でも、あまりに突飛な色をオーダーされる人もいて、『どうしてなんだろう』と素直に思ってしまうことはあります。でも、『オールペンはしたいけど、どんな色がこのクルマに合っているのか判断しかねる』といった場合には、もちろんアドバイスさせていただいています。僕はクルマやバイクの内側よりも外側が好きで(笑)、今もずっと国内外の塗装などを見続けているので知識やイメージは当然あると思っています。

 僕がアドバイスさせていただく場合は、そのクルマはもちろんですが、『乗るオーナーさん』のイメージにも合わせたカラーリングの提案をさせていただいています。やっぱり普段セカンドバッグ持っているようなイカツメのオーナーさんのクルマへ、急にかわいい色のオールペン、というのは変ですから(笑)。

 オールペンを意識されている人は、こういったところも含めて、改めてどこまでこだわるか、どんなに色にするかなどを熟考して塗装業者にオーダーすると良いと思いますよ」
(板金塗装業者代表)

 オールペンを視野に入れている人は、ここまでのプロの話を参考に、ぜひ自身にあった塗装業者に依頼してみてはいかがでしょうか。

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