兵器めちゃ売れ「韓国」輸出に全力投球する“切実な理由”とは? 日本も“対岸の火事”ではない事情

今や世界でも有数の兵器輸出大国となりつつある韓国。自走りゅう弾砲や戦車、戦闘機、軍艦、さらには無人装備まで幅広い兵器の輸出に取り組んでいます。じつは、こうした積極的な兵器輸出の背景には、韓国のある事情が関係しているといいます。

隙間を縫って成長した韓国の防衛産業

 2025年3月10日付のカナダの新聞オタワシチズンは、同月5日と6日に韓国政府と同国防衛産業の代表団がカナダを訪問し、K9自走砲をはじめとする各種防衛装備品をカナダ政府に提案したと報じました。

 K9自走砲は陸上自衛隊が運用している99式自走155mmりゅう弾砲と同じ1999(平成11)年に、韓国陸軍への配備が開始された装軌式自走砲です。履帯(キャタピラ)で走行する自走砲はタイヤで走行する装輪式自走砲に比べて戦場への展開に時間がかかることなどから、対テロ戦などの非正規戦が盛んだった2000年代初頭には、やや時代遅れな兵器と見なされていました。

 このため欧米の主要企業は装軌式自走砲の新規生産を行っておらず、NATO(北大西洋条約機構)標準の155mm砲弾が発射できる装軌式自走砲を新品で入手したい国は、事実上、K9以外の選択肢が無くなっていました。

 そこで、韓国はこの状況を巧みに利用してK9の販路を拡大し、さらに韓国陸軍とメーカーが絶え間なく能力向上に取り組みました。そこへ、2022年にロシアのウクライナ侵攻(ウクライナ戦争)が始まり、装軌式自走砲の有用性が実証されたことなどもあって、2022年6月にはポーランドから大量受注を獲得。アメリカやベトナムなども導入を検討するほどのヒット商品となっています。

 韓国はK9だけでなく、K2戦車やFA-50戦闘機、水上戦闘艦などの輸出にも成功しており、スウェーデンのストックホルム平和研究所が2025年3月10日に発表した「国際武器取引状況2024」は、韓国が世界で10番目に多く兵器を輸出した国になったとしています。

 有人兵器の輸出大国となった韓国は、無人兵器、とりわけ無人車両(UGV)のシェア獲得にも注力していくようです。UGVは輸送、偵察、戦闘など様々な用途で使用されることが期待されており、ウクライナ戦争でもその有用性が実証されています。

 市場調査会社グローバルインフォメーションによると、世界のUGV市場の規模が2024年の24億6000万ドルから、2029年には39億3000万ドルに成長すると予想されています。こうした状況を受けて、韓国のUGVトップメーカーであるハンファ・エアロスペースは2025年3月7日、用途に応じた小型・中型・大型のAI(人工知能)によって制御されるUGVを2028年までに開発し、グローバル市場を先導するという目標を明らかにしています。

韓国「積極的な兵器輸出」のワケとは?

 陸上自衛隊も複数の外国製UGVを導入して試験を行っていくようですが、韓国陸軍と韓国の防衛産業は、日本よりもはるかに早い2000年代後半からUGVの自主開発に取り組んでいました。

 筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は2011(平成23)年10月にソウル郊外で開催された防衛装備展示会「ADEX2011」で、初めて韓国の国産UGVを目にしました。この時のUGVは、現在のモノに比べれば単純な国境警備用の偵察車両でしたが、韓国で兵器開発を主導する防衛事業庁とメーカー関係者が「少子化が進む韓国の国防にとって切り札となり得る装備品だ」と述べていたことが強く印象に残っています。

 有人・無人を問わず、韓国が官民一体となって兵器の輸出に積極的に取り組んでいる理由の一つは、まさに少子化にあります。筆者は2019(令和元)年10月に開催されたADEXで、ある韓国の防衛企業の方に、その企業を含めた韓国企業や韓国政府が、何故兵器の輸出に積極的に取り組んでいるのかを質問したところ、その回答は次のようなものでした。

「韓国の合計特殊出生率(女性1人が生涯で出産する人数)が低いのはご存知の通りです。出生率の低さの改善は早急には見込めないため、いずれ韓国軍の人的規模は今より小さくなります。そうなれば、韓国軍の国内防衛産業に対する需要は減少するでしょうし、弊社の業績も悪化します。この状況の中で防衛企業が生き残り、韓国軍の需要に応えていくためには、韓国軍の需要減を輸出で補っていくほかないのです」

 韓国の2024年の出生率は若干改善して0.78人となりましたが、依然として世界的に見れば低い水準にあります。韓国の置かれた状況を“対岸の火事”として笑うのは簡単なことですが、日本も2024年の合計特殊出産率は1.20人と低く、韓国とは異なり改善の兆しは見えていません。

 乱暴な言い方をすると、国家財政のことを気にしなければ兵器はいくらでも増やすことはできますが、それを操る人間の数は簡単に増やせません。その現実を受け止めて、それでも国家の安全保障を成立させるために韓国軍が使用する兵器の無人化や省人化を進める一方で、国家の安全保障の重要な柱である防衛産業を維持するため積極的に輸出に取り組んでいる姿勢には、日本も学ぶべきところがあると筆者は思います。

externallink関連リンク

【たしかにめっちゃシンプル…!】韓国が開発した極初期のUGV(画像)性能は韓国の方が上!? 近代化改修されたF-15「イーグル」空自機と差が出るワケは?「韓国海軍の巨艦」に日本の防衛大臣が乗った!? 防衛省が画像を公開 横須賀基地に寄航
externallinkコメント一覧

コメントを残す

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)