
街中をクルマと並走する路面電車ですが、クルマと同様に最高速度制限が存在するのでしょうか。法律と運用の両面から考えます。
路面電車には「軌道法」が適用されるが…
クルマを運転する人は、その道路の最高速度を気にしながら走行することが多いはず。道路交通法が第22条で「車両は、道路標識等によりその最高速度が指定されている道路においてはその最高速度を、その他の道路においては政令で定める最高速度をこえる速度で進行してはならない」と定めているからです。
それでは、街中でクルマと並走することも多い路面電車について速度規制は存在するのでしょうか。法律、そして実際の運用面から考えます。
そもそも大部分の路面電車には「軌道法」という法律が適用されます。「鉄道事業法」が適用される、JRなど一般の鉄道とは法的な位置付けが異なるのです。
そして、路面電車の運転については、軌道法に基づいて定められた「軌道運転規則」に細かい規定があり、最高速度については第53条で「(略)……最高速度は毎時40キロメートル以下、平均速度は毎時30キロメートル以下……(略)」と決められています。
では路面電車はいつも最高速度の40km/hで走れるのでしょうか。答えは「ノー」です。道交法は第22条2項で「路面電車又はトロリーバスは……(略)……道路標識等によりその最高速度が指定されている道路においてはその最高速度を、その他の道路においては当該命令で定める最高速度をこえる速度で進行してはならない」としているからです。
つまり路面電車の最高速度は“原則”40km/h。ただし線路が敷かれた道路の最高速度が40km/h以下の場合は、道路の最高速度を順守する必要があります。
信号無視で取り締まり対象にも
路面電車を運用する現場はどうなっているのでしょうか。
大阪と堺を結ぶ阪堺電車によると、道路上を走る「併用軌道」という区間では基本的に、法令に基づいた速度で走行しているとのこと。ただしカーブやポイントなどでは、20km/h以下や15km/h以下といった、さらに安全な速度に抑えているといいます。なお速度は、機械やプログラムなどのシステムではなく、一般的なクルマと同様、運転士によって管理されています。
路面電車が多い広島市などを管轄する広島県警察本部によると、併用軌道を走る路面電車は法令上「車両」であるため、信号無視やスピード違反といった取り締まりの対象にもなるそう。「違反が認められれば、路面電車でも特に区別することなく取り締まります」(交通指導課)。
ただし実際には停留所間の距離が短いことから、違反に相当するだけの速度を出すことは「現実的に難しい」のだそうです。
ちなみに、併用軌道に対して「新設軌道」というものがあります。通常の線路のようにバラスト(砂利)を敷き詰め、その上に枕木を並べてレールを固定した軌道で、たとえば東京都内を走る都電荒川線や東急世田谷線の大部分の区間がこれに該当します。阪堺電車や広島電鉄も一部区間はこの新設軌道です。
新設軌道区間は、路線や区間にもよりますが、軌道法ではなく鉄道事業法で扱われることがあり、最高速度についても通常の電車と同様に規制されることが多いようです。