藤田寛之も出場していた米国男子シニアツアーの最終戦にて、トータル18アンダーで今季初優勝、米シニア47勝目を挙げたベルンハルト・ランガー(ドイツ)。現在67歳だが、衰えを見せない姿はまさに“鉄人”。しかし、今年7月には“レギュラーツアー”引退という決断も下していた。
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今年7月、DPワールド(欧州)ツアーの「BMWインターナショナルオープン」2日目。ベルンハルト・ランガーは18番グリーンにスタンディングオベーションで迎えられた。予選通過はできなかったが、この大会をもって“レギュラーツアー”から引退。プレーを終えると「人口800人のゴルフなど誰も知らない小さな村で育った。あれから50年、夢の中で過ごしてきた」と声を震わせた。
旧西ドイツでプロゴルファーという職業は「誰にも理解されなかった」と語る。80年に欧州ツアーで初優勝。85年にマスターズ初制覇を挙げドイツ人として初のメジャー勝利。一気に母国でゴルフが注目を集めた。93年に2度目の「マスターズ」制覇。80~90年代は故セベ・バレステロス、ニック・ファルドらと熾烈な戦いを見せゴルフ界を大いに盛り上げた。欧州ツアー通算42勝は現在も歴代2位の記録だが、米国男子ツアーは「マスターズ」2勝を含む3勝にとどまった。
「良いときも悪いときもあった」と振り返るランガーがイップスにかかりパッティングに苦しんだことは広く知られている。「1mから4パットをした。2度打ちもあった。何度もゴルフを辞めようと思った」と話すほどだった。
最初にイップスが発症したのは22歳の頃。計4度に渡り苦しんだが、クロスハンド、極太グリップ、右手と左手を離して握るスプリットグリップなどで乗り越え、96年に長尺パターを取り入れた。当初は胸を支点にストロークするアンカリングだったが、2016年にルール改正でアンカリング禁止に。それでも新たな打ち方を探り出した。
特筆すべきは07年に50歳以上のシニアツアーに参戦後も変わらずに強さを発揮していること。現在までに46勝、同ツアーの年間王者には6度輝いた。昨年は「全米シニアオープン」、そして今年は最終戦を制するなど衰えを見せない。
今年は“レギュラーツアー”からの引退を決意した。4月、歴代チャンピオンとして出場する「マスターズ」も今年を最後に“卒業”を決めていたが、2月のトレーニング中にアキレス腱を断裂したため来年へと持ち越された。来春、マスターズでは最後の雄姿となるが、鉄人レジェンドはシニアでの活躍がまだまだ終わりそうにない。(文・武川玲子=米国在住)
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