3度目五輪は涙のラストシーン「ようやく終わった」 リディア・コが金で“メダルスラム”&最年少LPGA殿堂入り

<パリ五輪 最終日◇10日◇ル・ゴルフナショナル(フランス)◇6374ヤード・パー72>

大観衆に包まれた最終18番のグリーンを、「リディア!リディア!」の大合唱が包んだ。1打リードで迎えた最終ホールのプレーは「ティショットとセカンド、あの2つは私の人生で最も重要なショットだった」と振り返るほどだ。
フェアウェイウッドで打ったティショットは、しっかりとフェアウェイを捉えた。池に囲まれたグリーンを狙う第2打だが、「最悪でもパーは取れる」とレイアップを選択。残り76ヤードのフェアウェイにボールが落ちると「ほっとした」ともいう。

第3打がピン奥2メートルにつく。それでも最後まで「集中しよう。ボールがカップに沈むまで集中しよう」と自分に言い聞かせ続けた。緊張の中で打ったパットは、見事にカップに沈んでバーディフィニッシュ。「ようやく終わった」と思った瞬間、涙があふれてきた。

首位タイで迎えた最終日。前半で2打伸ばすと、2位以下に5打差の大量リードでバックナインに入った。しかし13番パー4で、2打目をグリーン前の池に入れてダブルボギーを叩いてしまう。「一瞬、先週後半に崩れてメダルを逃したジョン・ラームが脳裏をよぎった」ともいう。この一打を“悲劇”につなげないために、気持ちを切り替えた。

それだけに14番パー5をパーで終えると「少し落ち着いた。そこからはとにかくガマンのプレーだった」と、そこから難しい4ホールをパーで切り抜ける。結果的にエスター・ヘンセライト(ドイツ)の追い上げを振り切り、“金メダル”を手中に収めた。

2016年、リオデジャネイロ五輪で銀メダルを獲得。21年に開催された東京五輪では銅メダルを手にした。それもあって、パリ五輪では大会前から金メダル獲得への期待が大きくのしかかっていた。「もちろん達成したい、できればうれしいと思ったけれど、簡単ではないと分かっていた。だから自分のゴルフに集中したかった」。自身のインスタグラムも消去したのは、「他の人がどう思っているかは知りたくなかった。ファンの声援だけを楽しみたかった」というのも理由だった。

12年に15歳4カ月2日のアマチュアでLPGAツアーの「カナダ女子オープン」で勝利し最年少記録を樹立。さらに翌年には大会連覇も達成した。15年2月には17歳9カ月9日で世界ランキング1位にのぼりつめる。これは男女通じての最年少記録だ。同年9月には18歳4か月で「エビアン選手権」を制し、最年少メジャー制覇も達成した。

数々の“最年少記録”を樹立してきたコだが、この金メダルでLPGAツアーの殿堂入りも確定した。米国女子ツアーは、ツアー優勝で1pt、メジャー制覇で2ptなど決められているポイントを条件の27ptにすることで殿堂入りすることができる。今回、金メダル獲得で定められた1ポイントを追加。12年から積み上げて、到達した。27歳3カ月17日の殿堂入りは、史上最年少記録だ。

「この勝利はたくさんのジュニアゴルファーの夢と目標になる。本当にこの五輪3大会は素晴らしいプレーができた。中国、ドイツ…たくさんの国の人々に刺激をもたらしたと願いたい」。唯一欠けていて、最も手にするのが難しい金メダルを胸に、最後は晴々とした笑顔を浮かべた。(文・武川玲子=米国在住)

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