クラブを換えるときは必ずトレーナーに相談!? 天本ハルカの“体の使い方重視”な14本が面白い

前週の「パナソニックオープンレディス」でバーディ合戦を制して初優勝を遂げた25歳の天本ハルカ。2020年に地元福岡のゴルフ場で、ある人物と出会ったことが、その後の運命を変えることになる。
天本がプロテストに合格したのは21年。これで最後と覚悟を決めた5度目の挑戦だった。アスリートコンサルタントの鴻江寿治氏と出会ったのはその1年前。そこからクラブの大改革が始まった。

■体の使い方もクラブ選びも2種類に分かれる

鴻江氏はソフトボールの上野由岐子や野球の千賀滉大らに身体の使い方を指導してきた。1月に福岡県の八女市で行われる鴻江合宿には、プロ野球選手や上野らソフトボール選手に交じって、天本も毎年参加している。鴻江氏が提唱する『鴻江理論』は、猫背タイプの『うで体』と、反り腰タイプの『あし体』に分かれる。『うで体』が『あし体』の動きを入れるとアウト。体の中でエラーを起こしてケガを誘発することもある。

簡単に言ってしまうと、『うで体』は引く力が強いため、クラブを引きつけて上からボールを打つほうが高いパフォーマンスが出せる。一方の『あし体』は押す力が強いため、アッパー軌道でボールを押し込んで打ったほうが飛ばせる。
実は現在、市場にあるのは『あし体』に合うクラブが多く、『うで体』に合うものが少ない。フェースローテーションが多い『うで体』よりも、開閉が少ない『あし体』よりにスイング理論がシフトしているからだ。だから『うで体』の天本は、クラブ選びに苦労してきた。ちなみに、ゴルフでは左打ちの鴻江氏も『うで体』のスイングなのだ。

では、うで体とあし体でクラブ選びの何が変わるのか? 「しなり感が好きでゆったり振るタイプなので、全体的に軽めが好きですね。以前はアイアンのシャフトはスチールだったり、ドライバーは50グラム台のSを使っていたんですけど、試合が続くと体を痛めやすかった。息を吸うように長く生活リズムとしてゴルフをやるのが一番の目標だったので、このセッティングにたどり着きました」。

そんな天本のシャフトを見てみると、ドライバーのシャフトは『ディアマナZF』の40グラム台を使用。3番ウッドも同じく40グラム台の『TOUR AD UB』、アイアンは60グラム台のカーボンシャフトを挿す。「ツアーで一番軽い」と本人がいうのも納得の軽い仕様となっている。
■上から打ち込める“つかまり顔”を選ぶ

「顔と打感を意識している」と、ヘッドにもこだわりが詰まっている。「私は引きつけて打つタイプなので“つかまり顔”がけっこう好き。逃げている感じの顔だと、フェースが開いて押して打ってしまうので、自分のスイングが壊れてしまう。『うで体』はダウンブローが合うスイングなので、試合でそれが考えずにできる顔を選んでいます」と話す。

ドライバーは2023年モデルの『パラダイム ◆◆◆(トリプルダイヤ)』で、調整機能で10.5度のロフトを1度寝かせて11.5度にしている。そのつかまるヘッドでロフトを立てながらボールを潰して打つ。「ティアップはしているんですけど、しっかり上から打つのは全部変わりません。持ち球のドローが安定して出て、逆球が全然ないので安心感があります。他の飛び系のクラブだと滑るのもけっこうあるんです」。

上から潰して打つ意図が一番分かりやすいのはユーティリティだろう。2020年モデルの『マーベリック』はまさにアイアン顔で、トップラインで合わせるとフェースは閉じて見える。「ユーティリティはヘッドが重たいクラブなので、体に負担をかけないように選んでいったら、ここにたどり着きました。基本はアイアンと同じようにヘッドの歯のラインで構えています。最新モデルはストレートめの顔が多くて、これを超えるクラブがなかなか見つからないですね」。確かに、アイアン顔のユーティリティは少ないかもしれない。
■アイアンはミズノの名器と同じ構造

3番ウッドと並んで古いのがアイアンセットで2016年モデルの『TOUR B X-CB』をずっと使い続けている。ソールが広くキャビティ構造ながら小ぶりで、フェースの開閉がしやすくシャープに振り抜いていけるヘッドなのだ。鴻江氏が『うで体』の理想としているアイアンは、ミズノの名器『T-ZOID』で1996年に発売されたモデル。『T-ZOID』も『TOUR B X-CB』もバックフェースの真ん中が肉厚になっており、似たような形をしている。

「実際に鴻江さんから『T-ZOID』を借りて打っていました。その流れで『TOUR B X-CB』を使っています。これはけっこうフェースが減ってきているんですが、なかなか換えられない。ブリヂストンさんに同じヘッドがないので、中古で探したりもしています。ツアーで見てみると、これを好んで使っている人もいますね」。実は堀琴音や桑木志帆も同じヘッドを使っている。
パターはオデッセイの三角ネック『トライビーム』がエースだったが、優勝した週からクランクネックのマレット型、『Ai-ONE ROSSIE CH』にチェンジした。「三角ネックだと面のイメージがかなりあって、アッパー目に入っていた。それが唯一気になっていたんです。クランクネックのほうが上からヒットできる。アプローチとつながる感じで打てるんです」。優勝したパナソニックオープンレディースでは、3日間で22個のバーディパットを沈めた。

天本は気になったクラブがあると、鴻江氏に必ず相談している。鴻江氏はクラブの顔とワッグルしたときの重心位置を確認し、それを打ったときの天本の体の動きにエラーがないかを見る。問題がなければ試合で投入という段階を踏む。体の動き重視でデータを見ないところが、他の選手とは違う。1つのメーカーと契約してしまうと、どうしても何本かはクラブに合わせたスイングになるため、あえて契約をフリーにしている。
もしやこだわりはボールにも? 天本に聞いてみると当然のように「球離れが早い硬いボールは『あし体』。私はずっとくっついていてほしいので(打感が軟らかい)『PRO V1』を使っています」という答えが返ってきた。

最近のクラブはどうも合わないと思っている人は『うで体』かも。天本と鴻江氏のクラブ選びを参考にすると、運命の1本に出合えるかもしれない。

【天本ハルカのクラブセッティング】
1W:キャロウェイ パラダイム ◆◆◆ 2023年(11.5度に調整/ディアマナZF 40SR、45.5インチ)
3W:キャロウェイ XR 16 2016年(15度/TOUR AD UB-4S)
5,6U:キャロウェイ マーベリック 2020年(23,26度/TOUR AD U-55S)
5I~PW:ブリヂストン TOUR B X-CB 2016年(TOUR AD 65S)
50,54,58度:キャロウェイ JAWS FORGED(N.S.PRO 950GH S)
PT:オデッセイ Ai-ONE ROSSIE CH
BALL:タイトリスト PRO V1
◇ ◇ ◇

●アイアンセットの“普通の5番アイアン”は、打ちこなすのは難しい。だが、ロフト25度前後のクラブこそスコアメイクには重要という。関連記事【ロフト25度の番手が重要なんて知らなかった! 飛び系アイアンか? ユーティリティか? それが問題だ】を読めば、ロフト25度前後のベストギアが見つかる!

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