心がハッピーなスコッティ・シェフラーの2週連続優勝 【舩越園子コラム】

PGAツアーの今季5つ目のシグネチャーイベント、「RBCヘリテージ」の最終日は悪天候による2時間以上の中断を経て日没サスペンデッドとなり、9名の選手がマンデー・フィニッシュを余儀なくされた
そのときリーダーボードのトップは、前週にマスターズ2勝目を挙げたばかりのスコッティ・シェフラー(米国)だった。

2位に5打差のトータル20アンダーで単独首位のシェフラーが、月曜日の早朝にコースに戻り、残り3ホールをプレーして、そのまま逃げ切り、2週連続優勝を達成する可能性は、きわめて高いと予想されていた。

そして、大方の予想通り、月曜の朝8時にハーバータウンに戻ってきたシェフラーは、最終ホールこそボギーとしたものの、2位に3打差のトータル19アンダーで堂々勝利した。

日曜日の夜、米国のTV中継のアナウンサー、ジム・ナンツ氏は「シェフラーの連勝をストップさせるものがあるとすれば、それは彼の愛妻メレディスの出産が早まることだけだろう」と語っていた。

愛妻に「もしも何かが起こったら、たとえ優勝争いの真っ只中にいても、僕は試合を棄権して彼女の元に駆けつける」とは、マスターズの開幕前からシェフラーが口にしていたフレーズだが、これは1999年の全米オープンの際にフィル・ミケルソン(米国)が初産を控えていた愛妻エイミーを想いながら語った名ゼリフとそっくりだった。

結局、マスターズウィークも今週も、シェフラーの愛妻に「もしも」は起こらず、その代わり、もうすぐパパになるシェフラーは、生まれてくる我が子と愛妻のために大いに働き、たっぷり稼いだ。

マスターズの優勝賞金は360万ドル(約5億5683万円)、シグネチャーイベントである今大会も優勝賞金は360万ドルだ。ここ5試合で「優勝―優勝―2位タイー優勝―優勝」という驚異的な成績を上げたシェフラーは、今季はこの4か月だけで、すでに27億円超を稼いだことになる。

マスターズ開幕前、「ゴルフより大事なものがある。早く試合を終えて帰りたい」と語ったシェフラーは、マスターズで勝ちたくなかったわけではもちろんなかったのだろうが、勝利への執着は、あまり見せてはいなかった。

マスターズ優勝後は速攻でテキサス州の自宅へ戻り、ぎりぎりまで愛妻に寄り添っていた。サウスカロライナ州のヘリテージ会場には火曜日入りし、練習ラウンドは水曜日の9ホールのみだった。

初日にはバンカーからシャンクしてダブルボギーを叩き、首位から6打差と出遅れて、「とても疲れている」と明かしていたが、日に日に調子と順位を上げ、3日目終了後には単独首位に立った。

日曜日の日没と同時に月曜日への持ち越しが決まると、「明日の3ホールは、18ホールのラウンドに臨むときと同じように、きっちり準備して挑む」と、このときばかりは勝利への強い意欲を言葉にしていた。

そして、その言葉通り、2週連続優勝と通算10勝目を達成。最初から優勝だけを意識しすぎていなかったからこその偉業達成だったと考えれば、「それがゴルフ」なのだろうと思える。

すでにマスターズを2度も制し、勝利を重ねてきたシェフラーだからこそ、4日間72ホールのメリハリの付け方を身に付けているのだろうとも思える。言い方を変えれば、「それが勝ち方」というものなのではないだろうか。

マスターズでグリーンジャケットを羽織った翌週に、この大会でタータンチェックの優勝ジャケットを羽織ったのは、1985年のベルンハルト・ランガー(ドイツ)以来39年ぶりの快挙だが、シェフラーの頭の中は、2着のジャケットの重みより、愛妻メレディスと我が子のことで、いっぱいのはずである。

そんなシェフラーを眺めるにつけ、心がハッピーであることこそが、勝利への道なのではないかと思えてくる。

文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

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