観客意識して歴史に敬意を払うことが大切 MLB開幕に感じたプロスポーツの在り方【原田香里のゴルフ未来会議】

ゴルフを愛するみなさん、こんにちは。原田香里です。男子ツアーも開幕し、いよいよ春真っ盛りとなりました。
ゴルフに限らず、スポーツには自分自身がプレーする楽しみと、観る楽しみがあります。プレーするというなかには競技として真剣に結果を求めるひともいれば、結果はさておきプレーを楽しむというひともいます。観る楽しみについてもさまざまです。

“推し”のプレーヤーを応援し、コースに帯同して歩くファン、自分のプレーの参考にしようとプロやトップアマの技術をじっくりと見るひともいます。試合そのものの雰囲気に浸る場合もあるでしょう。足を運んで直接観ることもあれば、テレビやネットなどを通じて観るひとも多いのは言うまでもありません。

私たちプロのアスリートは、自分たちのプレーをみなさんに観ていただくことが一番大事な仕事です。どんなにいいプレーをしても、観ていただくひとがいなければ成り立ちません。それは、ゴルフも野球もサッカーもバスケットボールも同じです。

大谷翔平選手の活躍で、日本でもファンが飛躍的に増えたMLB(メジャーリーグベースボール)の開幕も興味深いものでしたね。大谷選手が所属するロサンゼルス・ドジャースは、今年韓国で初戦を行いました。相手はダルビッシュ有選手のいるサンディエゴ・パドレス。ニュースでもたくさん扱われていたので、ご覧になった方も多いと思いますが、私もテレビで見ました。

始球式は、韓国人初のメジャーリーガー・朴賛浩さんがドジャースとパドレス半分ずつのユニフォームを着用して行いました。開催国のレジェンドへのリスペクトと両チームに公平にエールを送るなかなかの企画に「なるほど」と、テレビの前でうなずいてしまいました。

ゴルフは選手たちが順番にスタートしていくという競技の特性上、あまり派手なイベントは多くないのですが、「マスターズ」の“オナラリースタート”はレジェンドへのリスペクトが詰まっています。調べてみたら1963年に始まったとありました。毎年、レジェンドたちが本戦前にスタートする始球式です。

そのままプレーを続ける場合もあれば、そうでない場合もあるようです。ここ2年はマスターズ6勝のジャック・ニクラウス(米国)さん、3勝のゲーリー・プレーヤー(南アフリカ)さん、2勝のトム・ワトソン(米国)さんの3人が務めた大役は、ゴルフの祭典の幕開けにふさわしい華やかなものです。

大会前日のパー3コンテストは、奥さんや子どもがキャディをしたりして、パトロンと呼ばれるギャラリーとともに選手も楽しむイベントです。ディフェンディングチャンピオンがメニューを決めて、歴代チャンピオンが一堂に会して食事をするチャンピオンズディナーも有名ですが、こちらは公開されてはいないそうです。

日本では、3オープンのチャンピオンズディナーが行われていますが、残念ながら出席者の数はあまり多くないようです。日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)が50周年のときには、「日本女子プロゴルフ選手権」に歴代会長をお呼びしたりしたこともあります。ただ、プロスポーツとしてもう少しレジェンドに敬意を表したり、イベントとしてファンにも楽しんでいただく機会をもう少し増やしてもいいのではいかな…とMLBの開幕を見ながら思いました。

そういうイベントがあればプレーヤーもファンのみなさんも歴史に興味を持ち、先人のしてきたことに触れるいい機会になるでしょう。プロスポーツの在り方はさまざまですが、常に観てくださるみなさんを意識し、楽しんでいただくことを考えるのは当然のことです。

■原田香里(はらだ・かおり)
1966年10月27日生まれ、山口県出身。名門・日大ゴルフ部で腕を磨き1989年のプロテストに合格。92年の「ミズノオープンレディスゴルフトーナメント」でツアー初優勝。93年には「日本女子プロゴルフ選手権大会」、「JLPGA明治乳業カップ年度最優秀女子プロ決定戦」勝利で公式戦2冠を達成。通算7勝。その後は日本女子プロゴルフ協会の運営に尽力し21年3月まで理事を務めた。

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