再現性の高いドローヒッター・渋野日向子 “うねりながらループ”がキーワード【石井忍のスイングチェック】

2024年の米国女子ツアーに挑戦している日本勢のドライバースイングをツアープロコーチの石井忍が解説。今回は渋野日向子のスイングを深掘りしていく。
日本ツアーで通算6勝を挙げている渋野は、2019年の「全英AIG女子オープン」で樋口久子以来となる日本人女子史上2人目の海外メジャー制覇を果たした。21年に受けた米国女子ツアーの最終予選会を20位で突破し、22年から米ツアーに主戦場を移している。

昨季のポイントランキングは83位に終わり、フルシードを逃すも準シードを獲得。出場優先順位は119番目で、リシャッフル突破を目指して、出場できる試合でポイントを積み上げていきたい。

石井はそんな渋野の特徴を「体全体でスイングをしています。体が先行してクラブがあとからついてきて、腕とかシャフトにも思いっきりトルク(ねじれ)がかかって力も出せるスイング」と話す。トルクの数値が大きいほど、ねじれが大きく、クラブの戻りも大きくなる。つまり、ヘッドがターンさせやすくなり、ボールがつかまりやすくなるのだ。「再現性の高いドローボールが打てている」と今季のスイングを分析する。

深く掘り下げてみよう。「アドレスのスタンスは広く、バックスイングの初動で骨盤が10センチほど右に動いていきます。クラブからではなく、しっかり下半身から動かせている。手先でクラブを上げずに、体で上げられていますね。そして、両ヒジのあいだの距離感が変わらない。胸の正面でずっとクラブを扱えています」。体と腕が連動しているという。

体の動きでバックスイングをするために、骨盤を右に動かし重心移動させてる。そこからアドレス時の腕と腕の感覚をキープし、体の回転でクラブをトップまで上げていく。そうすることでアドレスからインパクトまでクラブと体の距離感が変わらずにスイングする確率を高めているのだ。

さらに、トップの位置に到達する手前で「下半身を左に回転していく」と腰の回転で切り返しをし、ダウンスイングがすでに開始している。「しっかり体を先行させて下りてきて、ヒジから先の脱力感などがとてもいい。リラックスしているから、腕とクラブでしっかりトルクがかかってくる」と連動性がやはりポイントになっている。

そうすることで、シャフトのしなりを体と連動させられる“うねるようなスイング”が実現。「うねりながらループして、インサイドからアタックして再現性の高いドローボールを打っていく選手ですね」と体の動きでクラブの働きをかけるスイングは渋野の“最大の持ち味”と説明した。

ここで聞いてみたのは、ミスがでてしまうときの原因として考えられること。「(ダウンスイング時の)右倒れですかね。渋野さんは右サイドが強くなって、少し体が右に倒れてしまって、インサイドアタックが強くなり、左に球が飛んでしまう」と解説。ダウンスイングで上半身が右に傾いてしまうことで体の内側からクラブが下りてくるようになる。そうするとトルクがかかりすぎて球がつかまりすぎてしまうのだ。

だが、この動きを抑えられているのが足の動作。「右の足が“底屈”(足首を下に向かって動かす動き)している。足首の前側を伸ばしていかないと体が右に下がってしまう。それができているので、しっかり切り返したときからカカトが上がってくる」。この動作が“右残り”を防げている動作につながっている。

再現性の高いドローボールを武器に、米ツアー3年目のシーズンで5年ぶりの海外2勝目を飾りたい。

■石井忍(いしい・しのぶ)1974年生まれ、千葉県出身。東京学館浦安高等学校、日本大学のゴルフ部で腕を磨き、98年プロテスト合格。2010年にツアープロコーチとして活動を始め、多くの男女ツアープロを指導。また「エースゴルフクラブ」を主宰し、アマチュアへの指導にも力を入れている。

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