5つの交代枠を最大限に利用しているのは? プレミアリーグの交代カードを深掘り

 正式に交代枠が「3」から「5」に拡大されて2年目を迎えたプレミアリーグ。果たして選手交代はどんな影響をもたらしているのだろうか?

 どのクラブも豊富な戦力を活かすため、5つの交代枠を最大限に利用している…というわけではない。中にはほとんど5枚のカードを使わないチームもあるという。データ分析サイト『The Analyst』によると、7位のウェストハムは今季ここまで29試合を戦って5枚のカードを切った試合が1つだけ。交代枠を使い切った割合が「3.4%」というのはリーグで最も低い。その5枚のカードを切ったのが12月10日のフルアム戦。ウェストハムは前半から失点を繰り返し、最終的にプレミアリーグのアウェイゲームでは12年ぶりとなる「0-5」の大敗を喫することに。今季ヨーロッパリーグに出場しているウェストハムはシーズン前半戦から過密日程を強いられており、ミッドウィークのトッテナム戦から中2日でのフルアム戦だった。さらに、当時のウェストハムはチーム内に風邪が蔓延。体調不良を訴えた選手をハーフタイムに交代させるなど、苦肉の策の末の5人交代だった。

 そのウェストハムに次いで交代枠を使い切っていないのはエヴァートンとクリスタル・パレスで、それぞれ3試合しか5つの枠を使い切っていない。そして4番目に5枚のカードを切っていないのが前人未到のプレミア4連覇を目指しているマンチェスター・シティだ。豪華な戦力を誇るマンチェスター・シティだが、ジョゼップ・グアルディオラ監督は少数精鋭を好む。疲労対策のローテーションも、試合中にカードを切って休ませるのではなく、先発メンバーを入れ替えてやりくりしている。そのためスタメンの選手にはフル出場を求めることが多く、今季ここまで28試合で交代枠を全て使い切ったのは4試合だけ。それどころか、1回も交代を行わなかったのが2試合もある! 他のチームは必ず毎試合1枚のカードは切っているため、マンチェスター・シティの異様さがうかがえる。その結果、今季マンチェスター・シティは28試合で全140の交代枠うち約半分の「77」しか使っておらず、使用率55%はリーグで最も低い。それでも優勝争いを演じているのだから、交代回数はそれほど成績とは関係ないようだ。

 一方で、交代回数が最も多いのは日本代表MF三笘薫(26歳)が所属するブライトンだ。戦術家で知られるロベルト・デ・ゼルビ監督は、28試合のうち23試合で5枚のカードを使い切っており、その割合は「82.1%」。2番目に多いフルアム(62.1%)を抑えて断トツで1位となっている。さらにブライトンは全ての試合で3枚以上のカードを切っており、全140の交代枠のうち133も使っており、使用率は驚異の「95%」。緻密な戦略を練るデ・ゼルビ監督は、持てる駒を全て使うのが好きなようだ。

 選手交代の時間を見ると、最初の交代カードが最も遅いのは、そもそもの交代が少ないウェストハム。1枚目のカードを切るまでに平均で66分もかかっているそうだ。これは明らかに5枚の交代枠を使い切る意識がないからだ。大半のクラブは、サッカーの常套手段となっている「60分」で動き出すことが多いようで、アーセナルとマンチェスター・シティは1枚目のカードが平均60分。チェルシー、マンチェスター・ユナイテッドは59分、リヴァプールは58分となっている。一方で、異様に“初手”が早いのは最下位に沈むシェフィールド・ユナイテッド。ここまで28試合で最多74失点を喫しているため、早めのテコ入れが必要なようで平均「48分」に1枚目のカードを切っている。

 前半のうち、もしくはハーフタイムでの交代が最も多いのはブライトン。28試合で26回も後半が始まるまでにカードを切っており、デ・ゼルビ監督はピッチ上の選手たちに立て直しを任せるよりも、自らの采配で打開を図っているようだ。

 結局、どのチームの交代選手がゴールを決めているかというと、やはりブライトンなのだ。最も多くの交代カードを切っているので当然かもしれないが、シーズン序盤にスーパーサブ的な使われ方をしていたFWジョアン・ペドロ(22歳)が途中出場から4ゴールを奪うなど、交代出場選手が計12ゴールも決めている。もちろん、三笘薫も結果を残している。腰のケガで長期離脱を強いられている日本人ウィンガーだが、今季プレミアで3ゴールを決めている。そのうち2点が、途中出場した9月のボーンマス戦。ハーフタイムに投入されると、後半開始16秒でネットを揺らすと、30分後にはヘディングを叩き込んでチームを3-1の逆転勝利に導いた。

 ブライトンの12ゴールに次いで途中出場選手のゴールが多いのは熾烈な優勝争いを繰り広げているアーセナルとリヴァプールで11ゴール。アーセナルはFWレアンドロ・トロサールとFWガブリエウ・マルティネッリがそれぞれ3ゴールを決めており、リヴァプールでは日本代表MF遠藤航が12月3日のフルアム戦で途中出場から記念すべきプレミア初ゴールをマークした!

 この得点にアシストを加えると、最も途中出場選手が結果を出しているのはリヴァプールとなる。前線のタレントが豊富なリヴァプールはベンチからも強力なアタッカーを投入することができ、交代出場の選手が22点に直接関与(11ゴール・11アシスト)。FWダルウィン・ヌニェス(3ゴール・2アシスト)、FWコーディ・ガクポ(2ゴール・2アシスト)、FWディオゴ・ジョッタ(2ゴール・1アシスト)、MFハーヴェイ・エリオット(1ゴール・2アシスト)などが結果を出しており、厚い選手層で4年ぶりのリーグ制覇を目指している。

 果たして、今季のプレミアリーグはどんなクライマックスが待っているのか? 交代カードに注目しながら世界最高峰の戦いを見守りたい。

(記事/Footmedia)

externallink関連リンク

●プレミア注目の大一番での判定に議論も…審判協会会長「VARは正しかった」●マンUの18歳MFメイヌー、イングランド代表に初招集! U-21代表から繰り上がり●ベルギー1部ヘンク、神村学園DF吉永夢希の加入を正式発表! 4年半契約を締結●FAカップの歴史に残る名勝負が誕生…マンU対リヴァプールの死闘を総括●ケインの初タイトルはどうなる? 歴史に残る“無冠の帝王”たちを紹介
externallinkコメント一覧

コメントを残す

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)