「超ド級」の意味知ってますか? 世界の“技術革命”な軍艦3選「国家戦略」すら塗り替えた!?

歴史に名を残す軍艦は、武勲をあげた船だけではありません。技術的な見地から、大きな足跡を残したものも。そこで、20世紀に生まれた軍艦で、エポックメイキング的に世界から注目を集めた軍艦を3つ選んでみました。

軍艦史を語るうえで絶対に外せないイギリス戦艦

 歴史に名を残す軍艦には、武勲によるものと技術的な事柄によるもの、この2つがあります。前者でいえば旧日本海軍の戦艦「三笠」やアメリカ海軍の空母「エンタープライズ」が代表例でしょう。 では後者はどうでしょうか。いくつかあるでしょうが、20世紀の技術的な観点から軍艦史上にその名を刻んだといえるのが、戦艦「ドレッドノート」、原子力潜水艦「ノーチラス」、そしてミサイル駆逐艦「アーレイ・バーク」の3艦種ではないでしょうか。 そこで、改めてこの3艦が、どのような技術的理由で名を残したのか見てみます。

 イギリスは19世紀から20世紀にかけて、世界一の海軍力を誇っていました。そのイギリスで、従来の海戦の概念を一変させるほどの画期的な戦艦として1906年に登場したのが「ドレッドノート」です。 それまでの戦艦は、最大の主砲、それより小さな中間砲、もっと小さな副砲と、何種類もの大砲を備えていました。これは、1発あたりの威力では大きい砲が勝っているものの、発射速度で劣るため、数多く撃てる中間砲や副砲も備えて補完した方が、メリットがあると考えられていたからです。 そのため、敵艦と交戦する場合は、主砲から撃ち始めて、敵艦に接近しながら中間砲、副砲と、射程の長い順番で次々と撃ちだします。ただ、これだと各砲の性能が異なるため、それぞれの砲の担当者が独自に狙いをつける必要がありました。 しかし、「ドレッドノート」は中間砲と副砲を廃止します。これを可能にしたのが、主砲塔のレイアウトを工夫したことです。

「ドレッドノート」が画期的だったワケ

 当時の戦艦は、前述したような大中小様々な砲を数多く積むという設計のせいで、1隻に積まれた主砲のうち、自艦の進行方向によって敵艦に向けられる主砲の数が限られていました。しかし、「ドレッドノート」は主砲塔の装備位置を見直すことで、できるだけ多くの主砲を敵艦に向けられるようになりました。その結果、主砲以外の中間砲や副砲を省くことができたのです。 しかも装備する砲を単一化したことで、射撃指揮所ですべての主砲を照準できるようになりました。これは、砲弾が飛ぶスピードや届く距離が同じになることがメリットで、タイミングを合わせて別々の主砲の砲弾を発射し、同じ場所に当てられるようになりました。 加えてドレッドノートは従来の戦艦に比べて船足を速くしたことで、敵艦に接近したり離脱したりという「戦闘のイニシアチブ」を握る能力も与えられていました。

 なお、現代でも時折耳にする「ド級」や「超ド級」といった言葉は、この「ドレッドノート」の出来事に由来します。本来、ドレッドノートとは「抜きんでた」「秀でた」という意味の単語ですが、そこから派生した「ド級」や「超ド級」の言葉が今も使われているのは、それだけ世界に衝撃を与えたからです。まさに海軍史のみならず、一般社会にもその名を残した戦艦といえるでしょう。 そして、同じように海戦の概念を一変させる衝撃を世界の軍事関係者にもたらしたのが、1954年9月に就役した世界初の原子力潜水艦「ノーチラス」です。

ずっと潜っていられる原子力潜水艦「ノーチラス」

「ノーチラス」は、アメリカ海軍が設計・開発しました。それまでの潜水艦は、水上航行用のディーゼルなどの内燃機関と、水中航行用の蓄電池(バッテリー)で動かす電動モーター、この両方を搭載する構造でした。そして前者は吸排気が必要なため、浮上して航行するか、もしくは「シュノーケル」と呼ばれる筒を海面上に出す必要があります。つまり、長時間潜り続けていることはできません。 一方、電動モーターは吸排気の必要はないものの、蓄電池に充電されていないと稼働しません。蓄電池の充電が残り少なくなってきたら、内燃機関で発電機を回すため上述のように浮上航行しなければならず、やはり長時間潜り続けることは不可能でした。

 ところが核燃料を用いる原子炉なら、浮上して吸排気の必要がなく、半永久的に動かし続けることが可能です。そこで原子炉を小型化して潜水艦に搭載すれば、理論上は無限に潜航していられる潜水艦が誕生することになります。 実際は、乗組員のメンタル・ケアや食料補給を考慮しなければならないため、無限潜航は難しいのですが、それでも従来の潜水艦とは比べ物にならないほどの連続潜航が可能です。 このように、潜水艦史上において画期的な艦である「ノーチラス」が生まれたことで、のちに海中に潜ったままで弾道ミサイルを発射可能な「戦略ミサイル原潜」が開発されることにもつながりました。 いまでは、米ロ英仏中の核五大国だけでなく、インドやブラジル、オーストラリアまで保有に動いている原子力潜水艦。今後も保有国が増えるのは間違いないでしょう。

建造され続けて40年!? イージス駆逐艦「アーレイ・バーク」

 原子力潜水艦「ノーチラス」と同じく、アメリカ海軍が設計・開発し、その後世界中で同じような形の軍艦が建造されるきっかけを作ったといえるのが、1991年7月4日のアメリカ独立記念日に就役した同国海軍のアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦です。 同艦は1970年代後半に研究開発が始まり、1980年代後半より建造が開始された、当時のアメリカ海軍の次代を担う主力駆逐艦でした。それ以来、40年ほどたった2024年現在も最新の改良型が建造され続けており、現在の計画では92隻が就役する予定となっています。 軍艦の船体を「器」として考えれば、そこに搭載される電子機器や兵装は「料理」に例えられます。その場合、「料理」の種類を変えることにより、改良型を生み出すことは十分に可能ですが、これだけ長期間にわたって通用する「器(船体)」というのは、まさに画期的な設計だといえるでしょう。

 2000年代に入ると、アメリカ海軍は次世代の主力艦としてズムウォルト級ミサイル駆逐艦の開発をぶち上げます。しかし、そのコンセプトやコスト面、さらには運用上の問題などの難点が表面化して3隻で調達を中止しました。 代わりに、長年にわたり運用実績を積み重ねてプルーフィング(信頼性確認)が終わっている、アーレイ・バーク級という安心の「器」に、最新のシステムや兵器という新しい「料理」を盛り込む方向性が、互換性やコストパフォーマンス(費用対効果)の面でもっとも優れていると改めて判断されました。 これはつまり、1番艦の起工からすでに40年間造り続けられているアーレイ・バーク級という「器」が、近未来にも通用すると認められたわけで、同級の戦闘艦(の船体)としてのコンセプトがいかに優れているかということの証左といえるでしょう。 近代軍艦史上、あまりに画期的だった戦艦「ドレッドノート」。軍艦史上を超えて、人類の科学史上に大きな足跡を残した原子力潜水艦「ノーチラス」。軍艦はあくまで「器」であり、その観点ではきわめて優れた存在と評価されたミサイル駆逐艦のアーレイ・バーク級。 この3艦こそが、「革命艦」と呼ぶに相応しい軍艦なのではないでしょうか。

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