狭い・古い・危険 群馬~新潟「旧三国トンネル」がそれでも大型車に使われた理由とは 他でも進む「トンネルもう1本」

群馬・長野県境の「三国トンネル」は、2022年3月に「新三国トンネル」が開通したことにより、その役目を終えました。新トンネル建設の背景には老朽化もありましたが、それ以上に切実な理由もありました。

とにかく幅が狭い! その原因は?

 群馬・新潟県を結ぶ唯一の一般道である国道17号で、ちょうど県境にあたる標高約1300mの三国峠直下を貫く「新三国トンネル」が2022年3月に開通しました。1959年に開通した「三国トンネル」(旧三国トンネル)の真横に、代替ルートとして誕生したものです。

 三国峠は長らく、一般道としては唯一、越後山脈を抜けて両県を行き来するルートとして機能してきました。旧トンネルはもちろん老朽化もあり新三国トンネルに更新されたのですが、それ以上に切実な理由がありました、トンネルの幅です。 旧三国トンネルでは度々、山からの地下水に悩まされてきました。開通当初から湧き水や雪解け水などが、トンネル全体で壁を浸食することとなり、その漏水を防ぐ工事を実施してきました。合計4度、計30か所に渡る漏水工事を行った旧三国トンネルは、内壁をコンクリートで補強するなどの措置がとられました。 しかし、壁が補強により分厚くなった結果、今度はトンネルの内部が狭くなってしまいます。新三国トンネル開通前の旧三国トンネルの幅は5.5m、高さに関しても3.8mしかなく、大型車同士のすれ違いが難しくなっていました。実際、国土交通省関東地方整備局によると大型車がすれ違う際にトンネルの内壁を擦るなどの事態が生じていたそうです。 新三国トンネルは幅が8.5mとなっており、この問題が解消されています。

どうしても通らなきゃならない大型車も

 大型車の通行が困難ならば、高速道路である関越自動車道を使えばよいのではと思うかもしれません。三国トンネルと並行して、関越道も群馬・新潟の県境に関越トンネルが通っています。そもそも新潟側の苗場スキー場など、国道17号の山間部にある目的地にいかない限り、有料ではあるものの圧倒的に関越道の方が利便性は高いです。 それでも、一部の大型車は国道17号を通らざるを得ない事情もあります。実はタンクローリーなど、危険物を載せた車両は、法律で関越トンネルの通行が禁止されているためです。 道路交通法では、川や運河、海などの水域の底を走る水底(海底)トンネルや長さ5000m以上の長大トンネルでは、危険物積載車の通行が「トンネルの構造を保全し、又は交通の危険を防止するため」という理由で禁止されています。ガソリンなど引火性のある液体や、塩素酸ナトリウムなど熱、衝撃、摩擦によって分解し激しい燃焼を起こす物質を運ぶ、「危」のプレートを車体に付けた車両です。関越トンネルは1万m以上の長さがあり、危険物積載車が通れない長大トンネルに当たります。

 そのため、新三国トンネルの開通は、関越トンネルを通れない大型車同士でも、安全にすれ違いを行うために必要なトンネルだったのです。関東地方整備局は、国道17号について「関越自動車道が災害や事故により通行止めとなる際、代替経路となるなど物流や住民生活に不可欠な幹線道路です」と重要性を説明しています。 同様に、老朽化とトンネルの断面不足を解消する新トンネルの建設が進んでいるのは、国道20号「新笹子トンネル」(山梨県)、国道153号「伊勢神トンネル」(愛知県)など他にもあります。

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