象の鼻みたいな顔! 異形の「空飛ぶ軽トラ」なぜその形に? 実は成功機のエッセンスを合体

人が乗ることを前提としないUAV(無人機)は、機体サイズや設計の自由度も高く、ユニークな形状のものもあります。その一つが象の鼻のような機首をもつ「エアトラック」。なぜこのようになったのでしょうか。

ローターも変わってる!

 操縦席がいらないUAV(無人機)は、機体サイズや設計の自由度も高く、一見すると「これ、本当に飛ぶのか?」といいたくなるようなSFチックな形状なものも出現しています。また、その自由度ゆえ、有人機でさほど広まらなかった技術に再挑戦する機体も考えられています。 UAE(アラブ首長国連邦)の防衛産業エッジ(EDGE)による、無人ヘリコプター「エアトラック」もその1つ。ここでは1960年代のSF人形劇に出てきたコンセプトも用い、積載量は日本の軽トラックの1.4倍ほどで、「空の軽トラ」を目指します。

「エアトラック」は軍用や民間を問わず、有人機では危険な地域への物資輸送を目的としたもの。その機首は、まるでオオアリクイか象の鼻のようなユニークな姿をしています。 この機は、物資を収めたコンテナをお腹に抱えて吊り下げるために胴体がなく、機体サイズのわりに、長い前脚と主脚を持つことで、地上からの離隔を確保しています。そして、操縦室がないことが、このユニークな形状につながっています。 こうした胴体を無くしたヘリコプターは、1960年代の米国のシコルスキーS-64(CH-54)「スカイクレーン」などが知られています。しかし、実際に飛んだモデルはそれほど多くなく、少数派のデザインといえるでしょう。 また、「エアトラック」では、上下に重なって反転しながら回転する主ローターが採用されています。これもかなりマイナーな設計で、運用されているモデルはロシアのカモフ程度です。「エアトラック」が二重反転式ローターを採用したのは、動力を主ローターに集めて吊り下げ性能を上げようとしたため。胴体を無くしたのもサイズに縛られず貨物を運べるようにしたためと見られています。

「エアトラック」のスペック…結構良さげ!

「エアトラック」の貨物積載量は約500kgで、日本の軽トラックの積載量(350kg)の1.4倍ほどです。胴体の長さは7.7m、高さは4m。有人なら小型ヘリ程度の大きさのうえ、高度3000mを時速140kmで飛行できます。このため、小型ドローンより風に強く、小型ヘリが離着陸できる場所も活用できるのがメリットになるでしょう。 2023年11月のドバイ航空ショーで、「エアトラック」の実物大模型と思しき機体が展示されていましたが、脇で流れるPR用のビデオは、戦場の前線へ救急医薬品を届ける設定のようでした。兵士の見送りを受けて離陸するイメージビデオの姿は力強さを感じるものでした。 また、険しい崖や森の上を飛ぶ「エアトラック」のイメージは、どことなく昭和時代の「ファイト一発!」でおなじみの日本の栄養ドリンク剤のテレビCMのような演出でした。連想を重ねれば、コンテナは交換式と考えられるコンセプトも、やはり昭和時代に海外と日本で人気を博した、テレビのSF人形劇に出てくる、コンテナ交換式の前進翼航空機を思い出しました。

 カモフヘリで採用され、今回のエッジが「エアトラック」で“再活用”した設計、すなわち胴体をなくし貨物吊り下げ式と二重反転式ローターを採用したものは、一般的なテイルローター式のヘリと比べてもレアなものです。しかし、先輩機であるカモフは今も需要があります。 また、「エアトラック」と胴体設計が良く似た“先輩機”であるS-64「スカイクレーン」は約9tを吊り下げることができる重量級の機体でしたが、胴体の長さも約21mと大型でした。一方、「エアトラック」はそれと比べると小回りの利く大きさで、無人機故に危険な地域へのミッションも可能でしょう。 有人ヘリではさほど広まらなかった技術が無人ヘリで広まるか――「エアトラック」は今後、「空の軽トラ」になれるのでしょうか。※一部修正しました(1/23 10:44)

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