サービス開始30年「GPS」 軍事技術を「民間に開放します!」米大統領に宣言させた“事件”とは?

今や地図のみならずケータイのあらゆるアプリになくてはならないGPS。実は最初は軍事技術として開発されたものでした。なぜ民間用にも開放されるようになったのでしょうか。

何かとお世話になるGPSは軍事技術だった

 今やカーナビやスマートフォンの位置情報になくてはならないGPSは、正式名称を(グローバル・ポジショニング・システム:Global Positioning System)と呼びます。このシステムは今から30年前の1993年12月8日から民間で運用が開始されました。

 GPSはアメリカが打ち上げた人工衛星からの信号を受信器が受け取り、自身の位置を知るシステムとなっていますが、もともとアメリカ軍が使う軍事技術として研究されており、機密扱いでした。なぜ、同システムが民間に提供されるようになったのでしょうか。 直接的に大きなきっかけとなったのが、1983年9月1日に発生した大韓航空機撃墜事件でした。この事件では、大韓航空のボーイング747が、ソビエト連邦の領空を侵犯したということで撃墜され、日本人28名を含む乗員・乗客269人全員の命が奪われました。 この事件では様々な不運がかさなりソ連軍機の警告が伝わらず、撃墜という結果になってしまいましたが、そもそもなぜ大韓航空の機体がソ連領空に侵入してしまったのかが調査の焦点となりました。結局、当時の位置情報システムの誤差が原因であることが明らかとなります。 当時は、基地局から無線の電波を受け、その距離を測ることで位置情報を把握する形式でしたが、最大5kmほどの誤差が生じるほど精度の低いものでした。同事件では、その誤差が致命的なものになってしまいました。

二度と同じ悲劇を繰り返さないために

 この事件の結果を受けアメリカのロナルド・レーガン大統領(当時)から、当時開発中だった、より正確に位置を割り出せる軍事衛星による航法システムを世界の民間利用に無料開放することが宣言されました、これがGPSでした。なお、開発当初から民間利用も考えられていたそうですが、明確にしたのはレーガン大統領の宣言でした。 アメリカ軍ではGPSを1970年代から研究しており、1978年に最初の試験衛星が打ち上げられていました。この位置情報を駆使し、アメリカ軍は不慣れな領域でも即座に目標を見つけ、部隊と補給の連携を円滑にしたり、弾道ミサイル、巡航ミサイル、精密誘導爆弾、精密誘導砲弾などに受信機を内蔵して攻撃精度を高めたりする目的に使用していました。その威力と精度は1991年1月に開戦した湾岸戦争で多用された、巡航ミサイルや誘導爆弾で発揮されることとなります。 民間用としては、運用に足る精度を満たしたと、1993年12月8日にアメリカ国防総省から初期運用宣言が出され、その後、1995年7月には完全運用段階になったことが発表されました。

 なお日本では、GPSの機能を補う独自の衛星測位サービスである準天頂衛星「みちびき」の位置情報が2018年11月1日から提供されており、位置測定の精度は数センチの単位までの高精度になっています。

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