取り戻したショットと変えたパターの握り方 稲見萌寧は1年3カ月ぶりV「このまま終わりたくないと思っていた」

<TOTOジャパンクラシック 最終日◇5日◇太平洋クラブ 美野里コース(茨城県)◇6598ヤード・パー72>

1打リードをもって迎えた18番パー4。グリーン右サイドの池越えにピンが切られている状況で、稲見の2打目はフェードの球筋を描いてピン方向へと飛んでいった。手前4メートルにつけ、続くパットこそ惜しくも外したもののパー。稲見らしい切れ味鋭いショットが戻ってきた。そう感じさせるような力強い一打だった。
畑岡奈紗、桑木志帆との最終日最終組。1打を追いかけてスタートしていくと、サンデーバックナインの12番パー5で2オンに成功。イーグル逃がしのバーディを決めて、初めて単独トップに立った。15番をボギーとして一時は首位に3人が並んだが、「なるべく早く抜けだしたい」という気持ちとともに、17番パー5でも3番ユーティリティのコントロールショットで2オン。楽々バーディとして、頭ひとつ抜け出したまま72ホールを戦い抜いた。

2位で今季開幕戦をスタートさせたが、それ以降はゴルフの調子も、体調も苦しい時期が続いた。途中棄権した試合も挟みながら、自身初の4試合連続予選落ちも経験した。「モヤモヤした状況でこのまま終わりたくないと思っていた」と、“練習の虫”は球を打ち込み続け、シーズン前半だけで4度のスイング改造をほどこした。

この時期について「練習しても意味がないんじゃないかと思ったり、練習しないとうまくならないし、葛藤があった。新しく取り入れるとかチェンジすることは、わたしにとっては練習したくなる要素。そこからまた、練習をが楽しくてどんどんやりたいと思った」と振り返る。いま師事している柳橋章徳コーチとの出会いは6月のこと。インパクトバックを使っての指導から始まり、徐々にアイアンの入り方や音が良くなっていった。「これならいけるな、と」。ここから調子も上向きになっていった。

調子を取り戻し始めたスイングに、2018年以来5年ぶりに“ふと”変えたパッティングの握り方がかみ合った。これまで左手を下にしたクロスハンドで握っていたが、前週のプロアマから右手が下の順手にスイッチ。「素振りしてみたらしっくりきた、嫌がっていたミスが出なくなった」と、左へいくミスが減ったという。

19年、そして9勝を挙げた20-21年はパーオン率1位。昨年はツアー2位という屈指のショットメーカーだが、代名詞でもあったパーオン率は前半戦終了時点で66.1376%の37位に沈んでいた。そこから73.0769%まで復活し、現在は9位にランクイン。今大会のパーオンは72ホール中68回で、94.44%。らしさが戻ってきたことは、数字にも表れている。

昨年8月の「ニトリレディス」以来となる、1年3カ月ぶりの勝利。通算13勝目、米ツアーとしては初優勝を飾った。優勝によって米ツアー挑戦の選択肢も生まれ、「すごくうれしい。新しい未来が切り開かれたという部分では大きいと思います。チームで相談して、これからどうするか話し合って決めたい」という。努力が実った秋。ここから新たな一歩を踏み出した。(文・笠井あかり)

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